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711話 闇神にとっては




 メグミの願いとは裏腹に、闇神は一呼吸ついたら中級神の粛正も始めようと、己の神殿で準備を始めていた。


 マサルの読みどおり、下級神の粛正はほぼ終わったものの、これで手を止める気など更々なく……


 下級神より大きなチカラを持ちながらも、<サルトー区・ポルカト界>の件で指示に従わず、自分をコケにした中級神も総入れ替えするつもりなのである。



 だが現状、「派閥主である闇神の頼みをスルーした下級神」は全滅したものの、彼等の仕事を引き継ぐ後任者が足りないうえ、マニュアルも全然できていない。


 引き継ぐ前任者を殺してしまい、情報を持つ者が「彼等を拷問したとき担当区域のデータも奪取した闇神」しかいないのだから、当然だ。



 どの世界にも通じる運営理論を共有しつつ各自で学び、自力で作業を進めるよう、後任の下級神達には指示しているものの……


 ダンジョン経営よりもはるかに複雑な世界の運営なんて、未経験者が最初から軽やかにこなせるはずもなく、闇神の元には毎日"質問の波"が押し寄せた。



 だが質問に答えて、その場で作ったマニュアルを渡せば、頑張って自力で進めてくれる後任者はまだいい。


 彼等は基本的に「闇神の子飼い」だった神候補であり、今回の粛正の悲惨さも間近で見ているため、完全な"Yesマン"で逆らわないから。



 しかし問題は、子飼いでは駒が足りず後継者を置けなかった世界であり……


 他派閥に奪われると困るので、名目上「闇神の直轄世界」となっており、彼が直で管理しているものの、実態は管理者不在でスラム化している。






 この状況を打破するために、闇神は新米下級神を競わせて、「優秀な者には新たな世界の管理権も与え、スピード出世を約束する」と餌を垂らしたものの……


 子飼い達は「下級神になれただけで満足」なタイプばかりであり、「闇神の不興を買って粛正されなければ、昇進する必要などない」と考えている者も多い。



 そもそも、慣れない「神としての業務」で四苦八苦しているところへ昇進をチラつかされても、「今はそれどころじゃない!」としか思えないのだ。


 出世欲が顔を覗かせるのは、昇格後の業務にも慣れて自信がつき、「もう一段階上のポジションでもやれる!」と、本人が考えだす時期に入ってからである。



 だが、長きにわたり強者として上級神生活を満喫してきた闇神は、子飼い達の本音を察することができない。


 同じ神であっても、ヒエラルキーの最上位と下位では、見えている世界も価値観も……何もかもが違うから。



 もっとも……表立って「出世する気がないから、競争にも参加しません」などと言おうものなら、吹けば飛ぶような新米下級神など闇神に秒で消される。


 子飼い達は皆それを自覚しているので、周りのライバルと足並みを揃えて目立たぬよう立ち回りつつ、闇神へのゴマ擦りだけは徹底している状態だ。






 ここまで足元がグラついているのに、なぜ闇神は中級神の粛正も急ぐのか?


 それは中級神が下級神より遥かに強く、結託されると闇神でも押し負ける可能性があり、彼等が自分の事しか考えていないうちに仕留めなきゃならないから。



 現状……闇神派閥の中級神は、保身のために下級神狩りに協力し、「自分は貴方の役に立てる神です。だから今後も仕えさせて!」と従順な態度を示している。


 しかし状況が沈静化して他派閥からの介入が始まり、甘い言葉で引き抜きの誘いをかけられた中級神が、同じように釣られた者達と同盟を組んだら……。


 そして外部のチカラも合わさり、上級神まで介入してきて本格的な戦争にでもなれば、新米下級神しか囲っていない闇神は押し負けてしまうのだ。



 それは中級神を粛正して、「後任者不在」や「名ばかり後任者が連なる惨状」が拡大しても同じ事じゃん?


 と思うかもしれないが……闇神は、コスパのいい縄張りをもつ中級神の支配領域を粛正ついでに分捕り、彼個人の勢力も強化しようと考えているので……


 中級神の粛正さえ無事終われば、「身中の虫」がおらず個としても飛び抜けた実力者(=闇神)がいる闇神派閥が、結局最強……となる可能性は高い。






 ゆえに闇神にとって、何よりも優先するべきはスピード感であり、中級神が「粛正完了!」と勘違いして落ち着き、疲弊した心身を休めている間に……


 大急ぎで準備をととのえ中級神狩りを始めるべき、と考えている。


 「自分達も粛正ターゲットに入っている」と中級神が気付けば、彼等は生き残りを賭けてライバルとも結託するので、そうなる前にカタをつけたいのだ。



 だが下級神狩りのときと違って、「自分の命令に従ってくれるのは、実力皆無な新米下級神だけ」という状況になるうえ……


 中級神の支配領域は広く、神殿も離れた場所に点在しているため、彼等に気付かれる前に素早く狩り切るのも難しい状況。



 だからこそ闇神にとってはここが正念場であり、"ご機嫌伺い"という名の"偵察目的"で届いた、他派閥からの手紙を気合いで処理して立ち上がった。


 当然、彼の意識は「中級神&他派閥」のみに向けられており、自動殺処分機能がついたゴミ箱内で稼働する、メグミ達のことなど眼中にない。

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!

作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

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中級神も粛正…いつぞやに恵さんとマサルさんに(悪魔と勘違いして)紹介状置いといた中級神を仲間に(その場のみか利害の一致で)引き込めば有利になるのでは?
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