710話 メグミがトリップしている間に
〜メグミside〜
SSランクに昇格したことで、僕の<自販機作製>ギフトは、自販機大国で暮らしていたマサルに、「もはや自販機じゃねぇ」と言われるほど機能拡張した。
僕の「自販機」の認識は、「お金を入れると物を買える不思議箱」なので、そこまでイメージから逸脱した変化はないと思うけど……
マサルの持つ概念の方が"元祖"に近いに決まっているし、きっと日本人の感覚だと、僕の自販機はぶっ飛んで見えるのだろう。
「ところで、マサルの<スキル図鑑>はどれくらい成長したの? あと、スティーブとカルマは? あの二人、まだちゃんと生きているよね?」
「すでにルノーブル先輩の眷属に肉体を乗っ取られて、寝ている間も修行フィーバーさせられている状態だが、一応生きているぞ。時々目覚めて絶望している」
「あっ、うん……何となく察した。ご愁傷様デス」
スティーブとカルマは、先にノルマトリップして自己修行の沼に嵌った僕を見て、中途半端に冷静になってしまい……
だけどマサルほど実力も伴っていないため、トリップ出来ないうちに体力・精神力の限界がきて、「肉体乗っ取られモード」に移行させられたのだろう。
「(目覚めるたびに現状に絶望するって事は、まだ精神トリップには程遠い……と。お気の毒に。何事も吹っ切れないと損をするね)」
「(吹っ切れすぎて、顎カタカタ・ヨダレ垂らしまくりで白目トリップしていたお前よりは、絶望できるだけマシだぞ。あれは、俺でもドン引きの黒歴史だ)」
何故かマサルが憐れみの目を向けてきて、不愉快きわまりないけど……スティーブとカルマは(ギリギリ?)生きていると判明したし、それで良しとする。
この重要局面で味方に死者が出て、しかもその原因が「先輩がパワハラの加減を間違えて殺っちゃいました」じゃ、シャレにならないもん。
現在の状態がどうあれ、廃人化せず生きているなら、そのうち目標の「ギフト覚醒」を果たして修行地獄からも解放されるでしょう。
「俺のギフトの成長は、お前のファンタジー自販機と違って"文字にすると地味"なんだよ。だけど、シンプルだからこそ強い。ほれ、見てみろ」
「へぇ〜、なるほど……そういうパターンか。たしかにこのランクアップで、<スキル図鑑>の欠点が著しく緩和されたね。さすがマサル!」
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〜スキル図鑑〜
相手の許可を得ることで、スキルおよびギフトが図鑑に登録され、登録された任意の能力を一時的に模倣できる、特殊な<能力玉>を生みだせるようになる。
ただし<能力玉>をつくる際は、己の血とHPを対価として捧げる必要があり、事前準備ナシでは役に立たない。
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*S→SSランクへの昇格に伴い*
・<能力玉>をつくるとき捧げる血の量が減った
・<能力玉>をつくるとき捧げるHPの量が減った
・<能力玉>を食べたときのギフト模倣可能時間が伸びた
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マサルの言うとおり"地味"だけど、事前準備に相当なリソースを割かれていた<スキル図鑑>を、より手軽に長時間利用できるようになった。
そしてこのギフトは、「<能力玉>を食べたマサル以外の者」にも同等の効果をもたらしてくれる、バフ系能力なので……
<能力玉>1個あたりの作製コストが下がり効果時間が伸びると、共に戦う仲間にもバフが行き渡りやすくなり、チームの総合力アップにも繋がるのだ。
「成長してギフト・神力の練度が上がれば、相対的に重要度が減って、いずれお蔵入りになると覚悟していたんだが……思わぬ形で生きながらえたぜ」
「普通のギフト・神力は、他者に"同じ能力を使わせること"なんて出来ないもんね。多少"質"が劣るとはいえ十分凄いよ。差別化成功おめでとう!」
僕の<自販機作製>は、SSのさらに上を目指した場合、「そのうち自販機に人工知能が搭載される〜」みたいな話になっていたけど……
<スキル図鑑>は仮にSSSランクになっても、準備とか効果時間がより改善されて、「シンプルTUEEE」を極めそうな気がする。
「それと、ようやく下僕魔王のポイ捨てが止まった。これで終わりと断定するのは危険だが、お前のボロ雑巾化した肉体を回復させる時間くらいはあるぞ」
「へぇ〜、遂に終わったんだね! ノルマ完遂〜〜〜〜!!!!」
「おぃ、"ノルマ"発言すんな! 俺もサーシャちゃんも、トラウマを植え付けられたんだよ!!」
「うげっ!? ゴメン、ゴメン。つい油断しちゃった。気をつけます〜」
マサルいわく、未だ中級神クラスの神が廃されてポイ捨てされた事例はないので、粛正が完了したと楽観的に構えるのは危険らしい。
だが……堕ちた神々による下僕配信で、闇神派閥の総数はおおよそ把握できたため、その数から考えると「下級神の粛正」は終了したと見ていいそうだ。
「たぶん闇神は、派閥の下級神……9割以上入れ替えたぞ。断捨離し過ぎて、"最大派閥から陥落するんじゃねぇの?"って疑惑まで出ている」
「ざまぁ〜。自分が囲い込んでいた"Yesマン"の下級神候補を昇格させて、粛正した神々の後釜に据えるにしても、掃除の規模がデカ過ぎて統率とれなそう」
「あぁ。後悔して再雇用を試みようにも、ポイ捨て組は150体を除いて俺等に狩られちまったし、そもそも恨みを買いすぎだ。元のポジションに戻せるわけがねぇ」
自業自得でしかないしけど、闇神はこのピンチをどう切り抜けるつもりなのだろう?
自滅して"狩られる側"に回ろうが、下剋上されてサンドバッグになろうが、奴の未来なんてどうでもいい。
でも頼むから、「やっぱり中級神も総入れ替えしなきゃダメだわ。俺頑張る!」とか言い出して、コチラの地獄を再開させないでくれよ。
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






