71話 そして二人は結ばれる
〜サーシャside〜
シャワールームの前で待っていると、顔を真っ赤にしたメグミ君がドアを開けてくれたので、遠慮なく突入し”色仕掛け”を続行。
“水場”というムード満点のスポットで、彼を絡めとりにかかった。
「ねぇ……背中の筋肉、引き締まっていてカッコイイね。ちょっと触っていい?」
「ぅ、ぅん……」
私が「男をおとすテクニック」を使うたびに、メグミ君は身体を震わせ、初々しい反応を見せてくれる。
彼は大人びていて素敵な男性だから、「高等学舎に入る前はさぞモテただろう」と思っていたけど……この様子を見ると、私が初めてだったのかもしれない。
自分から仕掛けるのは恥ずかしかったが、彼の一番をゲットできたのなら、頑張った甲斐はあったと思う。
「さ、サーシャ……。僕もうあがるから、ゆっくりシャワー浴びなよ。いっ、一応覚悟は決まったから……ちゃんと部屋で待ってるんで…………」
「ダメ。もうちょっとだけ、貴方と一緒にいたいの。メグミ君、お願い……」
「はっ、ハイ」
人間だった頃……私は、年の近い皇族・貴族を落とすために、男爵家で数々のテクニックを(座学だけど)教わってきた。
男を”自分のモノ”にするときは、まずムードをつくって身を捧げ、冷静さを欠いた状態で決断させるべし。
メグミ君と”権力者のお坊ちゃん”じゃ、オスとしての魅力が全然違うけど……同じ男である以上、学んだテクニックは活かせるはずだ。
私だって実践したの初めてだし、こんな”はしたない真似”するの恥ずかしいよ!
だけど……今日を逃したらまた忙しくなって、チャットだけの日々に戻っちゃうかもしれないから……頑張るもん!
大丈夫、あとちょっと……。
もしかしたら、「身体はOK。でも心はダメ」とか言われるかもしれないけど、メグミ君が結論を出すまでは本気で攻める!
「あのさぁ……サーシャ。僕、その……顔も性格も良くないし、お金だって大して持ってないけど……それでも、自惚れていいの? 本気になっちゃうよ」
「うん、もちろん! 私はメグミ君のこと愛しているの。クールで打算的な性格も、昔見せてくれた”弾けるような笑顔”も……全部好き」
「そっか、ありがとね……。うん、サーシャ! 後出しで、情けないけどさ……僕からも言わせてください。貴女のことが好きです。付き合ってください!」
「…………!! はい。メグミ君ありがとう!」
震えながらだけど……メグミ君は私の方を向き、まっすぐ目を見て”告白”の言葉をくれた。
私たち、恋人になったんだ!!
嬉しい、嬉しいよぉ……
自分から仕掛けておいて、なんだけど……私、こんなに幸せになっていいのかな?
「メグミ君、大好き! 後悔させないように頑張るから、私のこと好きでいてね」
「うん。サーシャ……」
「メグミ君……」
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しばらくしてお風呂から出た私たちは、各々のダンジョンに異常がないか確認してから、ゆっくりと話すことに。
メグミ君は私の来歴を知り、「他の男には絶対やっちゃダメだよ!」と慌てていたが……
素性も知れぬ孤児と分かった上で、「どんな事があっても貴女を愛し続けます」と、再度私に告白してくれた。
今は温めたミルクティーを飲みながら、二人がけに造り替えたテーブルで、雑談しているところだ。
「ねぇサーシャ。欲しい物とかある? もう12時回っちゃったけど……せっかくの記念日だし、”プレゼントを贈りたい”と思ってね」
「ふふっ。その気持ちだけで嬉しいし、無理する必要はないよ」
「ううん。告白とかさ……あまりにカッコ悪すぎたから、こういう所くらい男らしくしたくって。自分本位で悪いけど、僕に見栄……張らせてよ」
ゴメンナサイ。
それを言われると、”肉食でガツガツいった”私は反論できないかも。
「ありがとう。ちょっと考えてみるね」
「うん」
好きな人から貰う、初めてのプレゼント……何がいいかな?
もし同じ言葉を、ロミオット殿下に吐かれていたら、私は間違いなく「華美な装飾品」と答えたと思う。
歳とともに容姿がおとろえ、殿下……そして男爵家に捨てられたときの為に……家やパンを買えるだけの、”資産”を欲しただろうから。
魔王界で例えるなら、「身の安全」云々言って、手持ちのポイントを毟るようなものか。
自分でも”酷い奴”だと思うけど、養父の事情で狙わされた相手に愛など無いし……
殿下だって「美しく若い女」を、アクセサリー代わりにするつもりだったから、似たようなものだ。
だけど、メグミ君からは愛が……私の事を考え、私のために使ってくれる時間が欲しい。
彼の負担にならない範囲で、私が求める物。
「決めた! 今から、このハンカチに刺繍して欲しい。どんなデザインでもいいから」
一人の女として、「花束をもらうシチュエーション」にも憧れるけど……摘みたてのお花を砂漠で買うと、ポイントを無駄に消費しちゃうからね。
ハンカチに刺繍してもらうだけなら、シルクスパイダーの糸でできるし……思い出として、ずっと持っておけるからコレがいい。
「分かった! あまり上手くないけど、頑張ってみるよ」
「えへへっ、ありがとう♪」
いるか分からないけど、天の神様……今私、例えようがないほど幸せです。
読んでくださり、ありがとうございます!
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






