表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

698/933

698話 怖爺




 アスタリアの愚痴チャットを見たモンティートの動きは早く、魔王掲示板と投票システムの対応を、ゴーブルとルノーブルに任せ……


 <水城のダンジョン>で執事仕事に精を出している、スティーブの元へ向かった。



「うわっ、モンティート先輩!? 急にどうなさったんですか?」


 多少驚いたものの、<農民><小鬼>同盟の下っ端であり、規格外過ぎるメンバー達に振り回されているスティーブは、すぐ冷静さを取り戻し……


 眷属付きで飛んできたモンティートを出迎え、入荷したばかりの新茶を淹れて彼に差し出した。



<−−− ズズーッ −−−>


「ありがとう♪ あっ、スティーブ君。要件ね〜。諸事情あって、僕が君を鍛えあげることにしたから」


「えっ!!!?」



<−−− バシャッ! ゴトッ。パリーンッ! −−−>


「熱うぅっ!!!!」



 残念。


 努めて冷静に対処したスティーブだったが、モンティートの口から出た想定外過ぎる発言に、執事の仮面がヒビ割れてしまい……


 セットで購入したばかりのティーセットと、熱湯入りのティーポットを落として、熱々のお茶を被りリアクションをとるハメに。



「あらら。スティーブ君、大丈夫? お爺が治してあげようか?」


「大丈夫です! ご心配をおかけしてスミマセン」



<−−− ズルッ! −−−>


 そして火傷の治療そっちのけで、割れたティーセットとポットを片付けようとして、革靴でビショビショに濡れた床を踏み……


 尊敬する大先輩の前で滑って転び、二次被害をくらう"失敗芸"を披露。



 スティーブがそうなってしまうのも、無理はない。


 彼は、カルマのように才能があるわけでも、メグミ&マサルのように伸び代があるわけでもなく、サーシャみたいな華もない。



 <小鬼>同盟に入れてもらったはいいものの、「戦力としては計算されていない」と自覚せざるを得ない状態だったため……


 まさか自分が、魔王ランキング1位のモンティートから直接指導してもらえるなんて、夢にも思わなかったのだ。






「えっ、ええと……っ、そのぉ〜〜…………」


「うん。まず火傷を治そう。そして正気に戻ろうね」



 スティーブの気持ちを理解しつつも、のんびりスベリ芸を眺める暇などないモンティートは、回復魔法で強引に彼の火傷を癒やし……


 バリバリに割れたティーセット&ポットを、土精霊に"新品同様の状態"まで修理させ、服とズボンに吸われた茶を風魔法で乾かす。


 そしてスティーブと相性の良い水精霊に、彼の緊張を取り除くよう指示して、精霊魔法で無理やり落ち着かせた。



「……………………」


「おかえり〜」



 根本的な原因(=モンティートの存在と発言)が消えていない以上、表面的に落ち着かせても、またすぐ再燃するのだが……


 スティーブがリラックスした状態で話せる魔王など、<農民><小鬼>の中には絶賛シゴかれ中のカルマしかいないので、仕方ない。


 モンティート的には、耳と脳さえ正常に稼働していて話を聞いてもらえる状態であれば、それでいいのだ。






「ゴホン! じゃあ、改めて話すね〜。諸事情あって、君が持つ<水の職人>ギフトを極めてもらう必要が出てきた。ここまでOK?」


「はい。心は全然受け入れてないけど、脳で意味は理解しました」



「素直でよろしい。あくまでも可能性の話なんだけど、今よりも事態が悪化する可能性があって……そうなった時、君にはメグミ君達の力になってほしいんだ」


「なるほど」



「水属性は、勇者でもある彼等が好んで使う聖属性と相性が良いし、君のギフトは汎用性が高いからね」


「分かりました。現場へは出られずとも、御二人の希望に添ったオーダーメイドのアイテムを提供することで、協力できる……という事ですね」



「うん。現時点ではまだBランクだから、ギフトで生み出せるアイテムもショボいけど、Sランクまで上げれば多分役に立つ」


「Sランク……。分かりました! 僕には<はい>か<Yes>の選択肢しかないですし、皆様のお役に立つためなら何だってやらせていただきます!!」



「良かった〜。そう言ってくれると嬉しいよ! スティーブ君、期待しているから!」


「はい。どんな事でも遠慮なくお命じください!」



 もしカルマがこの場にいたら、「スティーブ! その発言は、処刑同意書に自らサインするのと同じだ。今すぐ撤回しろ!」と忠告しただろう。


 しかし……絶賛シゴかれ中で、限界突破できずゾンビ化しているカルマはこの場におらず、スティーブが自らの危機に気付くことはなかった。



「(スティーブ君も迂闊なことを。"何でも"とか"どんな事でも"って言葉を吐くと、大概ロクなことにならないのに。まぁ僕にとっては好都合だからいいけど)」


 現時点でそれに気付いているのは、三途の川が見えるくらい追い込まれているカルマ以上に、スティーブを追いこみ……


 鬼畜レベリングで限界突破させようとしている、モンティートただ一人である。

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!

作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
1日1個→1日10個くらいにかわるかな?
師匠(親方)になりそうな者が<農民>にいなかった? ゴーブルのスパルタ指導が始まるのか。
大丈夫、スティーブは強い子だから(鬼)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ