697話 怖いけどあり得る話
〜モンティートside〜
ダンジョンマスターとしての日常業務をこなしつつ、サーシャちゃんと二人で「メグミ君達の獲物」を吟味しているアスタリアから、愚痴が届いた。
<農民>および<小鬼>内での業務連絡は、カルマ君との格差に悩んでいたスティーブ君に仕事を与えるため、一旦彼を通すことになっているので……
今彼女から直接届いた愚痴チャットは、表だって言うにはセンシティブ過ぎる内容であり、"プライベート扱い"にする必要があったのだろう。
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ねぇ先輩、聞いてよ!
闇神の仕事が、さらに荒っぽくなっているの〜( ; ; )
このままじゃ、下僕狩り初日に起きたような天災が頻発するかもしれない。
それに……ウグリス騒動のとき露骨に闇神を裏切った下級神だけじゃなく、本当に忙しくて協力できなかっただけの"無実の神"まで、堕とされ始めた。
もしかすると、闇神は「気がふれたフリ」をしているだけで、すでにある程度冷静になっていて、この機会に邪魔な奴を"掃除"するつもりなのかも。
それで自分のお気に入りを後釜に据えまくって、よりガッチリ首輪をはめ、粛正後に派閥の結束を高める……という体の、独裁化コース狙い。
最初の方は怒りに任せてポイ捨てしていたんだろうけど、昨日あたりから妙に"意図的なミス"が増えたのよね〜。
まるで闇神の様子を監視している第三者に、「自分は怒りで気が狂い、派閥の小物を粛正しているだけだ」と、アピールしている節があるというか。
あくまでも私の勘だけど、もしこの仮説が正しくて「粛正&気狂いアピール」が続くとなると、そのうち奴は"意図的な暴発"も引き起こすと思う。
闇神が、<サルトー区・ポルカト界>をゴミ箱としか思っていないのは、疑いようのない事実だから……
もしコッチの世界で惨劇が起きても、「ゴミが燃えて容量が減った。片付いてラッキー」とか考えそうだし。
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「なるほど。元巫女で、女の直感を極めたアスタリアの"勘"は、スキル持ちの占い師に診てもらうより遥かに高性能。となると、すでに闇神は……」
理性を取り戻し、怒りではなく打算的にポイ捨てしており、これまでの功罪に関わらず、自分にとって不都合な部下を総入れ替えするつもりなのだろう。
だとすると、粛正は下級神だけじゃ終わらない。
現在、粛正対象を捕らえて闇神に献上している、堕ちた被害者から嫌われまくりの中級神達も、下級神の入れ替えが済んだら"処される側"に回される。
そして元下級神でも厄介なのに、元中級神が<サルトー区・ポルカト界>にポイ捨てされるようになり……
「より高性能なサンドバッグ」を殺すのは難しく、メグミ君&マサル君が苦労することになるだろう。
「それまでに、下級神を食ってステータスを強化中の彼等が、元中級神を殺せるだけの攻撃力を手に入れてくれるといいんだけど」
というか……さすがに、闇神と同じ上級神はポイ捨てされないよね?
もしされたら、徹底的に能力を剥ぎ取ったペラペラ状態でもない限り、「<サルトー区・ポルカト界>滅亡の危機」だぞ!
「ハァ〜。気狂いのフリをしているのは、目立つ動きを始めた闇神を監視している、他派閥のボス神に対するアピールだろう」
言うことを聞かない部下をイエスマンに取り替えて、派閥の結束を高めつつ、権力を自分に集中させます!
…………だなんて、他派閥のボス神からしたら「許容できない暴挙」だし……正直に話すと、改革中の不安定な時期を突かれて計画が頓挫しちゃうもん。
それなら「最大派閥のボスが狂って、ヘイト爆買いで自滅コースを歩んでいる」と見せかける方が、「自ら滅びてくれるなら待っておくか」となるので楽だ。
多少恥はかくけど、恥なんか「ウグリスの件で派閥の神に断られまくった」時点で、派閥長としてはこれ以上ないほどかいているので、今更なのかもしれない。
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アスタリア、この話は黙っておいてくれ。
僕に考えがある。
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カルマ君の<コマンダー>ギフトを開花させるために、ナーティーを急かしてレベリングの精度を上げるのは、当然として……
これまで裏方で、<水城のダンジョン>をコツコツ増築したり自主練していたスティーブ君も、本腰を入れて鍛えよう。
規格外のメンバーに囲まれてしまったせいで、本人は自信を失っているけど、スティーブ君のギフトも、とらえ方によっては便利なんだよ。
だって、「水属性のアイテム」なら臨機応変に生産できるわけで……聖水と絡めたバフアイテムとか、使い捨ての一撃必殺アイテムとか……。
後方支援型の「製造職」に特化すれば、メグミ君達が帰宅後にやっている残業を代替したり、彼等の攻撃力を高めるキーマンになれそうだもん。
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〜水の職人(B)〜
HPを半分捧げる代わりに、1日1つ水属性のアイテムを生み出すことができる能力。
アイテムのレア度はギフトランクによって変わり、ギフトランクは能力者の職業ランクと相関する。
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読んでくださり、ありがとうございます!
この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)