688話 カルマ出動!
〜カルマside〜
ダンジョンコアに少しでも多くのポイントを貯めようと、日課になっているMP注入をしていたところ、モンティート先輩から呼び出しがかかった。
そして<水城のダンジョン>に着くなり告げられた、ヤバイ現場への派遣要請。
「もちろん、<やる><やらない>はカルマ君の自由だから。嫌なら断ってくれていいからね」
「はい。ぜひ同行させていただきます。(先輩、それ……答えが<はい>か<Yes>しかない、実質強制案件っス!)」
メグミ先輩とマサルさんにはお世話になっているし、<農民>の先輩方もザコの僕を可愛がってくれているので、僕に「要請を断る」なんて選択肢はない。
あのエリート二人でも音信不通になるような、命がいくらあっても足りなさそうな危険地帯に、凡人の僕が行くのは恐怖の極みだけど……
モンティート先輩がそんな僕を指名したって事は、僕……というより<コマンダー>ギフトが役立つかもしれない場面なんだよね?
だったら日頃の恩を返すためにも、覚悟を決めてやり抜くしかないんだ!!
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〜コマンダー(Bランク)〜
自分の配下を、開拓済みのポイントへ転送できる。
また彼等と思考を共有することで、離れた場所にいながらリアルタイムで指示を伝えることも可能。
特定の配下を"代理"として立てることで、自分の代わりに配下の指揮を任せ、自分は休むこともできる。
一日に転送できる配下の上限は、ランクによって異なり、Bランクの場合は10000が上限となる。
それに加えて、対価のマナを通常時の10倍取られるものの、自分の配下以外も一回につき3名までなら輸送可。
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覚悟を決めた僕はスピード特化の援軍部隊に同行して、メグミ先輩とマサルさんのGPS情報がある場所へと向かった。
凡人の僕では、回復魔法の達人であるメグミ先輩みたいに、ロックドラゴン便で生きたまま現地にたどり着くことも……
マサルさんのように、空気抵抗を結界で防ぎながら空の旅を楽しむこともできないので、死龍の口の中に入れてもらい(物理的に)風から身を守ったよ。
その代償として、全身が唾液でベトベトかつ死臭に包まれた、「汚すぎて近付きたくない奴」になってしまったが……
汚臭たれ流し時代のマサルさんでも元気に生きていたし、覚悟さえ決めれば人間どうにでもなるものだ!
「いや、どうにもならねぇから! シュゴーマンの相手だけでも疲れたのに、お前までツッコミ待ちの汚姿で現れるの……何でなの!?」
と思ったが、汚姿のパイオニアであるマサル先輩の目から見ても、ゾンビ龍の唾液でベットベトになった僕は汚く見えるみたい。
でも大丈夫!
「一刻でも早く先輩方の元へたどり着き、お役に立ちたいと足掻いたもので。嗅覚こそ麻痺しましたが、五体満足で現場に到着できて満足です!」
僕は、今回も指名をもらえず執事業務継続となり、心が折れて男子トイレに引きこもりキノコを培養し始めた、スティーブ君の分まで現場で働き……
先輩方の役に立って、「<小鬼>同盟内の79期の存在感を示す」という、重要任務を背負っているのだから!!
「うわ臭っ! どうしたの、カルマ。マサル2号になっているじゃん! もしかして、誰かにイジメられた!?」
「おぃお前、俺にも被弾するツッコミ止めろ! あと俺のことは全然心配しねぇくせに、カルマ相手になった途端態度を変えるな!」
経緯は不明だが、何故か無数のタンコブをこさえて頭が変形しているメグミ先輩に、存在感で勝てる自信はないけど。
<−−− ズルルルゥ〜〜〜。ズルズルズルルゥ〜〜〜ッ −−−>
「若人に染みつきし死の香りよ。不釣り合いな場所にとどまらず、其方に相応しき者の所へ行け! フレーバーパージ!!」
結局、召喚魔法でクリーナースライムを喚べるマサル先輩によって、全身くまなくスライムに舐められたうえ……
身体に染みついたゾンビ臭も聖属性魔法で消してもらえた僕は、現場到着後わずか5分で元の「特徴皆無なザコ魔王」に戻った。
僕を害するつもりで放たれたわけじゃないので、聖属性魔法を浴びても何ともなかったけど……
元勇者のマサルさんがその気になれば、僕なんか聖魔法一発で簡単に滅ぼせる訳だし、内心ガクブルだったのはここだけの秘密だ。
未だ珍妙な頭部を晒しているメグミ先輩と違って、存在感ゼロになってしまった感があるけど、悪臭で目立ってもそれはそれで困るので……
マサル先輩に感謝しつつ、「いつか僕も魔法を極めて、自力で先輩みたいに動きたい」と、心の中で願うに留める。
「それで先輩。僕が呼ばれたのは、<コマンダー>ギフトのポイント開拓が必要だったから……ですよね? それって、もしかして……」
「あぁ。もしかしなくても、あの悍ましい扉の奥だよ。さっきまで俺達も入っていて、メグミが"シュゴーマン"に成り果てた場所だ。気をつけろ!」
いや、「気をつけろ」と言われましても……メグミ先輩でさえ無事じゃ済まない場所に、凡庸を極めた僕なんかが行ったら……
一瞬でミンチ肉になって、<コマンダー>ギフトのポイントを設置する前に死んじゃいますよ!
っていうか、「シュゴーマン」って何ですか!?
読んでくださり、ありがとうございます!
この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)