683話 寄生樹植え植え
〜マサルside〜
覚悟していたとはいえ、調査のつもりで乗りこんだ先が、格上の存在である神々が住まう神界だったなんて!
理解した瞬間、サァーッと背筋が凍り……全身から嫌な汗が噴きでた。
「(大丈夫だ、落ち着け! 俺の探知圏に生体反応がなく、ここに入ってから暫く経つのに捕縛もされていない。つまり、俺の存在は誰にも気付かれていない)」
つい数日前までこの場に闇神がいた以上、長居するのは悪手だが、必要以上に恐れていてはチャンスも取り逃がしてしまう!
「(どうする? せっかく闇神に繋がるルートを得られたんだ。このまま攻勢をかけて、奴にもウグリスみたいな楔を撃ちこむか?)」
いやダメだ、現実を見ろ!
たしかに闇神はミスをおかす残念な部分もあるけど、あれだけ下級神の神格を剥がして魔王界に堕としても、力尽きないほどの実力をほこる上級神だ。
そして此処は奴等が暮らしている世界であり、人間の俺より奴等にとって住みよい環境なのだから、こんな所で戦っても負けるに決まっている。
よくあるヒーロー物語のように、「幾度となく負けてはリベンジし……ついには宿敵を倒して〜」云々は、フィクションだから成立するのであって……
もし今俺がこの世界で闇神と戦い負けたら、問答無用で捕えられてリベンジするための手足をもがれ、なぶり殺しにされるのがオチだろう。
「(ここで見切り発車して、単独特攻を仕掛けるのはナシだ! 今回の目的はあくまでも調査。すでに情報集めは終わったし、大人しく帰ったほうがいい)」
というか……早くポルカト界に戻って、神界へ繋がる扉を生み出してしまった、二つのダンジョンの歪みを解消しないと……
より歪みが大きくなり、存在感が増して神々に気づかれ、更なる厄災が地上に降り注ぐ可能性だってある。
「(大丈夫! どうせミスを連発する闇神のことだ。また座標でミスって歪みを生じさせ、<サルトー区・ポルカト界>と神界を繋いでくれるはず)」
そのとき準備万端の状態で向かえばいいし、それが無理でも魔王界と神界を繋ぐ手がかりさえ掴めれば、俺達が攻める際の足がかりにできるのだから。
「(だけど、100%大人しく帰るというのもどうなのだろう? 最低でも、俺が今いる場所に楔を打っておくべきじゃないか?)」
幅広い能力を操れる<スキル図鑑>持ちの俺でも、異界を渡れるワープ能力なんて手札はないけど、楔を打つのにピッタリなギフトは持っている。
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〜寄生樹〜
供物を種とし血の水を撒くことで、任意の場所に「寄生樹」という特殊な樹木を生やすことができる。
この樹木は、生えた場所のエネルギーをさり気なく吸い取って大きくなり、供物として捧げたモノに応じた効果を発揮する、美しい花を咲かせる。
花が咲く頃には、エネルギーを吸い取られた近隣の大地は荒れ果て、何もない荒野に変わってしまうため、その美しい花を眺められる者はいないが。
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今回俺が供物として注いだのは、汚い話だが、昨晩出しまくった<ピー>の瓶詰めだ。
久しぶりだった事もあり、中々に凝縮されているし量もたっぷり。
もし花が咲くまでこの樹木が育てば、花の後に実がなり種が飛んで、近隣にも同じような樹木が生えて、周囲のエネルギーを奪い尽くす……
という、寄生の連鎖を起こしてくれる。
そんな樹木を育てたからといって、俺がこの世界にワープできるようになる訳じゃないのだが……少なくとも探知用の目印にはなるだろう。
上手くすると、大繁殖した寄生樹から主人権限でエネルギーを吸い取ることで、闇神攻撃時のアシストになるかもしれない。
「どうせ、この一帯は闇神所有になっているんだろ? もし後任の神がいるなら、俺がこんなに好き勝手できる訳ねぇからな」
だとすると、一時的とはいえ闇神の財布にダメージを与える形にもなる訳で……すぐ植えよう・悩まず植えよう・供物も盛ろう!
元は、やり過ぎて命を狙われさすらいの身となった"とある復讐屋"から、生活費の工面と引き換えに買い取った能力だが……
その男が寄生樹を生やしまくった貴族屋敷とは違い、この周辺はエネルギー密度が濃いため、きっとキレイな寄生花が咲き乱れる。
そして実がなり種が飛んで、「10年間、人間の女性と<ピー>をしない」という誓いを立てたことで、用無しになった俺のアレを供養するかのように……
勇者クラスの繁殖力で生い茂り、闇神の財布に寄生して、新たな頭痛の種を生み出してくれるかもしれない。
「さてと……植えたし、供物も十分過ぎるくらい供えた。あとは寄生樹の逆探知で俺が犯人だとバレぬよう、情報操作を加えて……トンズラだ!」
あれ、俺が来た扉の方から生体反応?
「この感じは、メグミか? マジかよ。アイツ、増援に来やがった!」
俺のために危険をおかして、こんなヤバイ空間に潜りこんでくれたのは嬉しいが……蛮勇もいいところだ。
早く合流して止めないと、適当にフラフラ移動した挙句、どこかの神の探知範囲に入りこんで殺されかねない。
「それでも嬉しさの方が勝ってしまうのは、ダメだよなぁ。でも仕方ねぇ。メグミの気配をとらえたことで、指先の震えが止まったのは事実だ」
どれだけ心身を鍛えても、所詮人は孤独には勝てない。
読んでくださり、ありがとうございます!
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)