674話 回復魔法師の攻撃手段
〜メグミside〜
マサルと「下僕魔王のステータスを狩る」話をして以降、どうやったらサンドバッグ仕様になっている奴等を殺せるのか、僕なりに考えてきた。
個としての戦闘力が飛び抜けているマサルは、能力ゴリ押しでもTUEEEできるからいいんだよ。
だけど引きこもってばかりで肉弾戦が苦手な僕が、"攻める側"として他者のダンジョンに乗りこむとなったとき……
そこにいるターゲットに自らの手でトドメを刺し、僕等を邪魔する寄生虫魔王の妨害もかい潜って、マサルと同じ成果を手にするのは難しい。
つまり能力ゴリ押し以外の"何か"が要るわけで……色々考えた結果、僕は「自分にとって最も使い慣れたスキルである回復魔法」を応用することを決めた。
回復魔法って聞くと、傷を癒したり疲れをとるイメージが先行して、攻撃には向かないと思われがちだけど、高ランクの回復魔法には攻撃向けの技もある。
その名も<デスヒール>……回復魔法の応用で細胞の分裂を促すことで、細胞分裂回数の限界点まで誘い……
狙った細胞を「お爺ちゃんレベル」まで一気に老化させる、攻撃系回復魔法の奥義だ!
無限の再生力をもつ<不老>持ちや神様には、細胞分裂回数とか関係ないかもしれないけど、下僕魔王に割かれたリソースを考えると……ねぇ。
サンドバッグとして傷ついた肉体を数秒で癒すことはできても、無理やり細胞分裂させられ続けて、癒しの源である己のリソースも尽きたら……
ただの頑丈な木偶の坊となり、なされるがまま回復魔法で肉体を破壊されて、意外とアッサリ死ぬ……と思ったんだよ。
「実際に試してみるまで確証が持てなかったけど、この結果を見た感じ、他の下僕魔王にも使えそうだね。明日から切り札として使うことにする」
口で言うのは簡単だが、普通の人間を相手しているのとは違って、サンドバッグ特性を持つゾンビみたいな奴の細胞を、強さなきゃいけないので……
当然、魔法の行使にかかるエネルギーも桁違いとなり、僕のマナは<粗大ゴミ7号>の内臓を露出させるだけで減り、マナポーション漬けになってしまった。
「(それでも、短時間でサンドバッグ魔王を殺せる必殺技が一つできた事に変わりはない。十分満足だ)」
下僕魔王狩りで重要になるのは、1日2件回れるくらいのスピードと、それを毎日継続するためのコンディション維持能力だもん。
このやり方だとマナを使いすぎるし、そもそも繊細なマナコントロールを要する高難度魔法なので、多用すると消耗は避けられないが……
それでもチンタラ狩りをして、地力で勝るマサルだけ「下僕魔王のステータス狩り放題でウハウハ」からの、奴の方がモテ男になる展開よりはマシだろう。
「聖魔法も混ぜると、よりマナを消耗しちゃうね。しかもコイツ相手じゃ、闇属性相手にどれだけ効果を上乗せできるか分からないし……困ったもんだ」
なぜイケメンを鼻にかけてナチュラルに疎まれるタイプの奴が、聖属性系統のステータスをぶら下げているんだか。
どうせ何処ぞの面食い女神でも誑かして、情けをもらって派閥移動した後、調子に乗ってその女神を怒らせ、ノシつけて闇神に返品されたんだろうけど……
返品されたなら、下僕堕ちする前に聖属性ステータスも剥ぎ取られてほしかったよ。
なぜ特にモメた訳でもない末端の僕等が、神界の色恋沙汰の尻拭いをさせられるのか、意味が分からない。
「メグミ、ここからは俺がやっていいか? トドメはお前に譲るけど、明日からのために俺も幾つか検証してぇ」
「勿論どうぞ。欲しければトドメも譲るけど、僕でいいの?」
「あぁ。俺は下位互換のギフトを<スキル図鑑>に収載済みだから、コイツからステータスを奪う必要性が薄いんだ。だから、トドメはお前が刺してくれ」
「了解! ありがたく、モグモグさせていただきます!」
軽い口調で僕と話しながらも、戦闘モードに入ったマサルは、内臓むき出しになった<粗大ゴミ7号>の臓器を抜き取り……
辛うじて奴を生かしたまま、心臓部にある魔核を引っぺがした。
そして枯渇してはいるものの、残り僅かなリソースを搾り出して、自動修復し始める魔核部分に「手作りの核」を繋げて、奴から距離をとる。
「マサル、その核は……?」
「これか? これは、核と誤認させてリソースを無限バキュームする装置だよ。そうは言っても吸わせすぎると壊れるから、まだまだ改良が必要だが」
えっ、そんな便利な物があるの!?
羨ましい!
僕も使いたいから、後で入手法を教えてほしいでございます!!!!
「メグミ、興奮して言葉がおかしくなる……のはいいとして、ヨダレを垂らすな。汚ねぇぞ」
「仕方ないじゃん! 戦闘力ゼロの僕にとって、そういう小細工アイテムは、今後の明暗を分ける鍵になるかもしれない物なんだから!」
「分かった。分かったから、目をハートにして抱きつくんじゃねぇ! あと唾を飛ばすな、汚ねぇっつーの!」
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)