672話 最初のターゲット
〜メグミside〜
「堕ちた神」の定員オーバーを受けて、取り急ぎマサルを、モンティート先輩のダンジョンに呼びつけた僕は……
闇神から事務的に開示された情報をもとに、堕ちた連中のダンジョンの所在地を割り出し、最も早く狙えるターゲットを屠るべく二人で目的地へ向かった。
「いいかメグミ。今回は初めてだし、下僕魔王の総数も151だから、二人揃って行動するが……次からは別行動だからな。気を抜いて死ぬんじゃねぇぞ」
「うん。毎日3体以上堕ちてくるから、二人でのんびり討伐巡りしていたら間に合わないし、僕とマサル両方がいても恩恵は片方しか得られないもんね」
僕とマサルは共に<勇者>という職業をもっているが、これの恩恵で魔王からギフトやスキルを奪い取れるのは、魔王に直接トドメを刺した者のみ。
つまり二人一緒に行動しても、下僕魔王殺害一回につきオイシイ思いをできるのは一人であり、双方にとって不都合なのだ。
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〜職業:勇者〜
異世界の血を引く「選ばれし者」がなれる職業。
聖職者としてのチカラを得るだけでなく、<才能の器>が拡張される事によりステータスの伸びが良くなる。
またその手で魔王を倒すと、相手のギフトおよびスキルの一部を貰い受ける事ができるため、魔王討伐経験のある勇者は隔絶した強さを持つ。
勇者の子孫が魔人族を倒すことにより、後天的に覚醒する場合アリ。
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また下僕魔王には、「自分のダンジョンから出られない」という制限がかかっているため、何方か一人は必ず現地へおもむきターゲットを殺す必要がある。
つまり僕とマサルにとっての最適解は、各々が配下のモンスターを率いてターゲットのダンジョンに攻めこみ、魔王狩りを決行!
ターゲットを餌化している寄生虫魔王が強いとか、闇神の消し忘れでターゲットが特殊能力を持っている場合のみ、二人で挑み……
あずかれそうな恩恵と受取人の相性を考慮して、適性がある方がトドメを刺す、という戦い方なのだ。
魔王狩りを始めたばかりで成長度合いが少ないうちは、(特に地力が劣る僕の場合、)単独行動すると逆襲されるリスクもあるので……
あくまでも命を最優先に行動して、本当にヤバイときはプライドなんか気にせず、先輩や仲間達に助けを求めるつもりだけど。
「ふぅ〜、ここが目的地か。今回は、ロックドラゴンに頼らずに済む近場でよかったな」
「ねぇマサル、嫌味を言わないでよ。僕は……明日からまた、お尻の痛みと戦う日々をおくるんだからさ〜。あぁ、また下半身崩壊地獄を味わうのかぁ〜」
マサルは勇者として世界各地を巡っていたうえ、召喚魔法の心得もあるから、移動に苦労することはない。
だけどダンジョンに引きこもっていた僕は、先輩からロックドラゴンを借りて足代わりにするか、好奇心旺盛な砂龍に乗るしか選択肢がなく……
もし幼い砂龍を選んだ場合、どこで遭難するか分かったもんじゃないので、(乗り手のケア以外)全て心得たロックドラゴンに運んでもらうしかないのだ。
「くくくっ。真面目な話をすると、戦争中ってわけじゃねぇんだし、サーシャちゃんから風龍を借りればいいじゃん。それで、風精霊も借りて道案内役にする」
「あっ、なるほど!」
たしかにサーシャの所の風龍は、砂龍よりお姉ちゃんっぽくて大人しいから、お目付役の風精霊をつければ迷子リスクなく乗れるかもしれない。
サーシャにはまた迷惑をかけてしまうけど、僕等のダンジョンは何方とも簡単には落とされない造りゆえ、守備も砂龍一体で足りるし……
僕のワガママで風龍を借りても、彼女の身を危険にさらすことはないだろう。
「マサル、本当にありがとう! 君は、僕の(下半身の)恩人だよ! お礼に、後で僕とサーシャのイチャラブ写真集を見せてあげる♪」
「オエッ。なんか妙に含みのある礼でキモイ。ゴホン! それはそれとして……ターゲットは目の前なんだから、気合いを入れろ!」
「イェッサー!」
僕とマサルが最初に狙うことにしたターゲットは、<サンドバッグ名:粗大ゴミ7号>と名付けられた、元下級神の下僕魔王。
なんでも神時代はイケメンだったらしく、それを鼻にかけていたせいで、内心不愉快に思っていた闇神が、粛正ついでに顔面と<ピー>を徹底的に潰し……
そのせいで時間が足りなくなったのか、スペック面の処理がテキトーになり、ギフト2つ持ちのまま魔王界へ堕とされた。
もしコイツが搾取されることなくゼロからやり直せたら、残ったスペックだけでも、数年で"食う側"に回れたんじゃないかな?
堕とされた初日の今日……僕とマサルに殺されて、魂を丸ごと食われる予定なので、その巻き返しストーリーは一生見られないのだけど。
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)