664話 食い道楽を極めし者達
ちょっとした恋心や嫉妬はあったものの、敵殺しを強要されるわけでもないミッション期間は、おおむね平和にすぎていき……
ホイッスネルとガブリの死亡のみで、幕を閉じた。
ゴマすり目的でこのミッションを提案した魔王達は、「裏切りをかましたルチルッカ&ハラスメントはいいの?」と疑問に思ったが……
彼等はケジメとして聖剣で利き手の指を切らされており、その執行映像もモンティートに抑えられ、実質<農民>同盟の下僕に堕ちたため構わないのだ。
というか……すぐに滅ぼしてしまうと、癒えることのない手の傷に苦しむ期間が減るし、来世への影響も少ないため……
モンティートは、最低でも指の情報が魂からほぼ消え、「メチャクチャ不器用な生物に生まれ変わる」までは、生かしておくつもりでいる。
「爺も、怒ると怖いんだよ〜」
「ん? 先輩、どうなさったんですか?」
「ううん。何でもない」
素直に自分を慕ってくれる<小鬼>同盟の若者達には、デレデレの甘い爺化したモンティートだが、魔王らしく冷酷な一面も持ちあわせているのだ。
なお……その話を聞いたメグミが開口一番に言った、「ついでに頭髪の情報も魂から消しません?」という鬼畜発言は、さすがに採用されなかった。
ナチュラルに鬼畜なメグミと違って、養殖鬼畜のモンティートには、「情のカケラ」くらいは残っている。
そしてミッション期間が終わり、各自のダンジョンにこもって配下のモンスターにマナを使わせる必要がなくなった、<農民><小鬼>のメンバーは……
久しぶりに<水城のダンジョン>に集まり、無事誰一人欠けることなくミッション期間を終えられたことを讃え、慰労会を開いていた。
ミッションの順位については、カタログギフト目当てに途中でリセットをかけまくった<小鬼>同盟のメンバーは、30〜50位とそこそこ。
序盤の"お試し"以外はリセットをかけることなく、圧倒的な地力を武器に数字を積みあげた<農民>同盟の5名は……
順位も1〜5位を独占し、良くも悪くも「いつもと大差ない結果」となった。
今回のミッションで損した魔王は、殺されたホイッスネルとガブリ以外にはいないため、魔王掲示板で妬みスレが立つこともなく……
彼等も和やかな雰囲気で、慰労会を楽しめている。
そしてこの慰労会には、あまり付き合いの良くないゴーブルとルノーブルも、モニター越しに参加していた。
彼等はギフトの関係でダンジョン外に出られなかったり、そもそも根っからの引きこもりだったりと……
飲み会ハラスメントに弱い気質なのだが、仲間と話すこと自体は好きなので、オンライン飲み会ならとモニターを繋げ、自分のダンジョンで宅飲みしている。
「じゃあ、お待ちかね……ミッション期間中に、皆が頑張って育てた時短食材の試食会といきますか!」
「「「「「「「「「おぉ〜!!」」」」」」」」」
この慰労会は、「若手ながらも頑張ってカタログギフトを複数個得た、スティーブとカルマを労る」主目的の他に……
マナと時短アイテムで生産業を極めたメンバー達の、発表会を兼ねているのだ。
「では、まず僕からいきます! 見てください、この綺麗なマンゴーとドライマンゴーを! 日本で買った高級品より、甘くて種の小さいものができました!」
<<<−−− パクッ −−−>>>
「うわっ、これすごく甘いね! それでいてクドさがない。マンゴーの食感を損ねる筋みたいな線も入ってないし、売ったら誰もが欲しがりそう」
「何気にいいのが、このドライマンゴーよね。たぶん形崩れしたマンゴーを材料にしたんでしょうけど、紅茶のお供にピッタリだわ」
「むしろ、砂糖の代わりに紅茶に直接入れてもいいんじゃない? これだけ上品な甘みなら、きっと合うと思うよ」
美味いものを食べなれてきた、エリート魔王のナーティー・アスタリア・モンティートも、メグミのマンゴーは一発で気に入ったようで……
ミッション期間前におこなわれた試食会よりも、高評価を得られている。
なお……若さゆえに上品に盛られた一皿では足りず、お代わりが欲しくなったサーシャとマサルは、笑顔で手を出してメグミからブツを受け取り……
執事癖のせいで、渡された果物を全て完璧に剥いてしまうスティーブに、ポイポイッとブツを渡して、皿いっぱいに剥いてもらい食いしん坊していた。
そしてメグミと組んでおり、マンゴーの売価を知っているカルマは、その様子をガクブル状態で見つめ……
サーシャとマサルが果実をパクパク食べるたびに、「銀貨1枚……2枚……3枚が口の中に……」と庶民的なことを考え、目を白黒させている。
心配しなくても、何個お代わりしたところでメグミが彼等に代金を請求することなんてないが、それでも気になってしまうのだ。
悲しき元庶民の性である。
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






