表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

657/932

657話 最後の仲間(笑)


〜ホイッスネルside〜




 最奥にある管理室まで敵の水がしみてきた以上、俺に残された時間は僅かなのだと認めるしかない。


 それを認めず騒いだところで、安全な自分のダンジョンに篭って手下に俺を攻撃させている、クソ爺婆を殺す見込みは立たないし……


 水の勢いも弱まる可能性は低いので、何も成せずただ死んでしまうことになるからだ。



「だが、この状況から俺がとれる打開策なんて……。いや待てよ。さっき、露骨なゴマ擦りミッションが投票で可決された。あれを利用すれば……」


 <農民>の爺婆は戦闘のコスパを気にするタイプだし、だからこそあそこまで蓄財できた。



 つまり、俺のダンジョンに攻めこむより他の報復をおこなった方が、得と感じさせることができれば、俺の粛正は後回しになるかもしれない。


 もちろん一時的に攻めを緩めるだけの延命治療にしかならないが、時間さえ稼げれば一発逆転の奇策が浮かぶ可能性だってある。



 そこから巻き返して主導権を握り、「俺を見下した全ての奴に報復を〜」的な、主人公ムーブができる確率だってゼロじゃないんだ!


「というか、何もしなければこのまま殺されて終わりなんだ。だったら、僅かでも状況が良くなる可能性に賭けるしかない!」






 覚悟を決めた俺は、手持ちの私財を家具も含めて全て現金化し、水没して窒息しかけているモンスター達も、下取り価格で売り払った。


 そして得た金を注ぎ込んで、成立したら<農民><小鬼>同盟にとって致命的な法案を、次々申請していく。



 申請が通り、10ポイントの応援票がもらえて本投票へ進めたとしても、爺婆とクソガキ共が過半数超えの票を持っている以上、法案成立の見込みはない。


 それどころか20%未満の得票率しか取れず、俺が身を削った供託金も全て没収されるだろう。



 だが大事を成すのに犠牲は付きもの……その結果、<農民>の爺婆に「今攻める必要はない」と思わせて、時間を稼ぎ……


 そこから大逆転へと繋げれば、失った供託金は「成功の決め手となった投資」になる!



 あとは……


「頼む、誰でもいいから俺の出した法案に応援票を入れてくれ! 本投票に進めなきゃ、その時点で逆転の可能性は絶たれるんだ!」



 申請後の議題・法案は、24時間以内に自分以外の誰かから10億ロル相当の応援票を投じられたもののみ、本投票へ進める。


 言うことを聞く部下魔王がいて、潤沢な資金がある場合は、ソイツの魔王アカウントから自腹で応援すればいいだけだけど……



 現在の俺は申請の乱発で資産がほぼないうえ、これまで世話してやった後輩共にも裏切られてしまい、自力で応援票を投げることができない。


 つまり誰かが助けてくれないと、俺の全てを賭けた策は潰え、供託金まで無意味に奪われて本当の意味で終わるのだ。



「ここで助けてくれたら何でもする! だから、応援票……来てくれ!!!!」


<--- ピコン ピコン ピコン ピコン --->


「きっ、来た〜!!!!」



 崖っぷちのところで現れた天からの救いに、つい感情が爆発して大声を出してしまった。


 喉が逝ったが、治療用のポーションなんて売ってしまってないし、そんな事を気にしていられる状況でもないので、作戦に集中しよう。



「さてと……誰が俺の法案に賛成して、票を投じてくれたんだ〜♪ ん? ガブリ?」


 そうか!



 俺と似たような状況に置かれているガブリなら、俺の法案を通す動機もあり、10票分……10億ロル相当の資産なら、まだ持っている。


 つまり真の意味で「利害が一致している」ので、今なら再び手を取り合うことも可能なのだ!






 協定を結んだ際に繋げた連絡ルートは、ライバル関係になり眷属を殺し合わせた時点で、断ち切ってしまった。


 だからといって魔王掲示板でやり取りをすると、我々の没落を嘲笑う野次馬魔王にからかわれて、ガブリが機嫌を損ねるかもしれない。



「だが、我等の置かれた状況はほぼ同じ。言葉を交わさずとも、行動だけで互いの事情を察することができる!」


 さぁガブリ、お前も俺をマネして<農民><小鬼>が困りそうな法案を出してくれ!



 票の持ち分が更新される0時はまたいでいないので、俺も応援に必要な10票は(日付けが変わるまで)持っているが……


 資産の全てをこの作戦に投じたので、もう申請1回分の拠出金すら残っていないんだ!



「来たっ! さすが我が友。俺のダンジョンポイントランキングと止まった法案申請から全てを察して、申請役を代わってくれたんだな」


<--- ピコン ピコン ピコン ピコン --->



 もちろん俺も、お前の期待に応えるぞ!


 出された法案には全て応援票を投じ、本投票へ進んだものにも、日付け更新前に手持ちの全票を注いでやる!



「くっ、くっ、くっ。最初からこうしておけば良かったんだ。協力・裏切り……濃い経験を経て、かつ同じ崖っぷち同士」


 ここまで互いのことを分かり合える関係性が、あるだろうか?


 まさか人生の土壇場で最高の仲間を得て、物語の主人公のように「燃える展開」になるとは!

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!

作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
大切な物はいつも取り返しの付かない時に気付くんだよな…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ