653話 初めての本投票
〜メグミside〜
先輩方&<小鬼>メンバーと、安息の日々を楽しんでいたところ、引きこもり属性のルノーブル先輩から、投票開始のお知らせと説教メールが届いた。
「ウゲッ。もう始まっていたのか!」
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議題:期間限定ミッションをおこないませんか?
邪神による恐怖統治が終わり自治制になった記念に、期間限定ミッションをおこないませんか?
ダンジョン所属のモンスターに、場所を問わずより多くのマナを使わせた魔王を讃え、上位者には報酬として「眷属カード」を与えます。
また若手魔王にもチャンスを与えるため、参加者全員にカタログギフトをプレゼント!
財源は、邪神陥落から現在までで貯まったリソースを使い、マナ放出の残渣を可能な限り回収することで、リソースの枯渇を防ぎます。
また魔王界プールに一定のリソースを寄付することで、クリア報酬をリセットすることができ、この仕組みを利用すると繰り返し報酬がもらえます。
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もう既に本会議に上がっておるぞ!
現在投票している魔王の顔触れを見ろ……何奴も此奴も、しぶといベテラン勢ばかり。
おそらく奴等全員であらかじめ打ち合わせがおこなわれ、その動きを示すためにあえて早期の投票に踏み切っている。
仲良くゴロゴロするのも結構だが、足をすくわれたくなかったら投票システムのチェックくらいしろ!
次見逃したら、ヤキ入れとしてジョッキに注いだ青汁を一気飲みさせるぞ!!
byルノーブル
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ルノーブル先輩が言う「青汁」って、ドラッグストアで売っているフルーティーな青汁じゃなくて、薬草を煮出したガチの「手作りクソマズ汁」だよね?
前、ちょっとした賭けで負けて罰ゲームで飲まされたとき、お猪口一杯でも味覚が壊れて、半日くらい飯の味が分からなかった、あの悍ましい……。
「グスンッ!」
「ちょっ、先輩泣かないでくださいよ〜。まだ飲まされると決まったわけじゃないんですから!」
向こうの縄張り内でウグリスの尋問をおこない、嗅覚と感性が破壊された、この前の仕事に比べれば大したことないけど……
あれをジョッキ飲みなんて「味覚滅びろ」と言われているようなものだし、美味しいものをこよなく愛するモンティート先輩に、泣きが入るのも理解できる。
「ハァ〜。まぁ冷静に考えて、与党メンバーのくせに議題が上がったことに気付かないのはマズイよね。今後は、オートマタに逐一チェックさせよう」
僕も、余剰人員のオートマタに投票システムを監視させるか。
<農民><小鬼>全員が、配下を置いてリアルタイムで情報を追う必要はないけど、<小鬼>同盟のリーダーである僕はやらなきゃマズイ。
「議題と、それに賛成票を投じたメンバーを見る限り……これは、与党側に対する"協調姿勢"を示すものだ」
「ですね。皆平等っぽいミッションだけど、襲撃の報復でホイッスネルとガブリを潰している最中の先輩方が、この内容だと一番得をする」
ミッションによる運営リソース獲得を狙う場合、普通は「マナの残渣を回収できるダンジョン内」のみ有効となる。
外でマナを放出したって魔王界は潤わないし、マナの残渣を吸収して手数料のリソースを納めた方が、優遇されるのは当然だ。
でも今回の提案のように、「場所を問わず〜」というルールなら、敵の縄張り内で魔法を撃ちまくっている先輩達の配下も報われる。
そしてダンジョンの機能を利用した防戦が多く、そこまで魔法による反撃をできていないホイッスネルとガブリは、ルールのせいで冷遇されるのだ。
「そういう内容のミッションを、あえて己の名前を出した状態で提案してきたって事は…………彼等は、与党と協力したい……と?」
「正確に言えば、"時期が来るまでは"協力関係でいたい……だね。覇権を諦めて、緩やかな滅びを選んだわけじゃないと思うよ」
一瞬"強強魔王"らしいキツイ視線をモニターに向け、ゾッとするような圧を発したモンティート先輩。
だがその圧は数秒で収まり、いつものホワホワとした雰囲気に戻って、僕等に「コチラも投票を済ませちゃおう」と告げた。
<−−− ピロリロリーン♪ −−−>
『手持ちの票を全て投じ終えました。新たに投票をおこなう場合は、現金またはダンジョンポイントを貯めて日付変更を待ち、票を増やしてください』
「ふむ。投げる票数は自分で入力できるのか。これなら、たくさん票を持っていても一発で投げられますね」
「投げるときに幻覚や洗脳に侵されていると、不都合な方に投げちゃって詰むけどね。ほら、よく見て……。訂正ボタンがない」
「あっ、たしかにこれはヤバイかも」
魔王の中には、かつて襲ってきた新人狩りババァのような、洗脳ギフト持ちの性悪がいる可能性も大いにあるし……
そういうギフト<魅惑の蝶>を奪って持っている、僕が操られて負の連鎖が起こるパターンも考えられるので、「訂正不可」の縛りは怖い。
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〜魅惑の蝶〜
特定の条件を満たした場合、人間およびモンスターを一時的に魅了する事ができる。
魅了の効果は強く、敵対ダンジョン所属のモンスターが相手でも例外はない。
対象を操れるのは24時間で、ギフトが解けた後3日は魅了できない。
ストックできる数は対象の実力によって変わり、最大100体まで。
条件その1:相手の瞳を50秒間見つめる
条件その2:相手に10分間声を聞かせる
条件その3:相手に口づけをする
*上記3つのうち、1つでも満たせば魅了発動
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読んでくださり、ありがとうございます!
この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)
モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!
作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






