650話 三猿マスク
〜メグミside〜
最後の最後で油断して、賢者タイマーのカウントがリセットされるなんて展開になったら、マサルに滅茶苦茶イジられてしまうので……
僕は余裕をもって禊期間が過ぎた後も5時間働き、完全に清らかな身体になってから、皆が待っている<水城のダンジョン>に戻った。
ちなみに……<農民><小鬼>同盟の社交的なメンバーは、<水城のダンジョン>を溜まり場にして、毎日のようにゴロゴロしているが……
決して、魔王としての仕事を放棄しているわけではない。
<農民>同盟の先輩方と僕・サーシャは、すでにダンジョンの収益システムが完成しているので、強敵が来たとき以外はオートマタに管理を任せられる。
またカルマも、ダンジョンの所在地が僻地すぎて誰も来ず、収益源である<コマンダー>ギフトを介した商売は、人脈あってものもゆえ……
僕等と友好関係を築いて、新たな儲け話が出たとき参加するのが、一番大事な仕事になっているのだ。
マサルは、ムカつくけど要領のいい奴だから勝手に上手いことやるんでOK。
ぶっちゃけ一番鈍臭く、伸び代が少ないスティーブだけは、ダンジョンに篭って魔王として職務に励む必要があるが……
そのダンジョンこそ、僕等が溜まり場にしている<水城のダンジョン>なので、アイツは先輩にアドバイスを受けつつ部屋で一人努力している。
そして……良くも悪くも、チームとしておおよその形ができた僕等だったが、魔王界の全てが「ポイント投票による自治制」に変わってしまったため……
これまでの個人戦からチーム戦に流行りが移り、それに合わせた立ち回りを余儀なくされることとなった。
「メグミ君、お帰りなさ〜い。お仕事は全部終わった?」
「まだ少し残っているけど、大体片付いたよ〜。会いにこられなくてゴメンね。差し入れのお菓子、美味しかったよ。ありがとう!」
<水城のダンジョン>内にある溜まり場に戻り、定位置のベッドに寝転んだ僕を見て、ネグリジェ姿のサーシャが抱きついてくる。
3日間もご無沙汰なので、エロセンサーが反応してベッドから出られない状態になってしまったが、もう禊は済んでいるので大丈夫!
サーシャの据え膳攻撃に耐えながら、先輩方と過ごすのはいつもの事だし、マサル・スティーブ・カルマが笑おうものなら、先輩特権で吊るすから。
魔王の鼻の穴って案外丈夫で、50kgの体重を数時間支えても千切れないし、落下時の着地地点にスマホを置いておくと、破壊を恐れて暴れなくなる。
ウグリスみたいに常時汚物を垂れ流されると、処刑側の負担も大きくなるからウザいけど、部屋の端でプラプラしている分には何の問題もない。
「いや、メグミ。お前……気配が邪悪すぎるぞ。絶対、碌でもねぇこと考えていただろう!」
「ん? ソンナコトナイヨ〜」
友達の下半身事情をからかって吊られた事がある、豚鼻太郎君……もといマサルが鼻を押さえながらブーブー吠えているけど、気のせいだから大丈夫!
「筋肉質だから重いんだ!」って言われても、その分粗チンで他者より軽いし、釣り合いはとれているから死なないもん♪
<−−− ビシッ! ビシッ! ビシッ! −−−>
「痛っ! 勇者デコピン痛い! 暴力反対〜!!」
「どの口が言うか!!」
なぜか心の声が漏れていたらしく、マサルにデコピン三段盛りをくらってしまったものの、無事撃退に成功し……
彼女持ちバリアでガードしたうえで、<農民>同盟のモンティート先輩・アスタリア先輩・ナーティー先輩による、方針決め会議に持ちこめた。
<−−− フシュ〜ッ! フシュ〜ッ! −−−>
マサルは「非モテ地雷」の上でタップダンスを踊りすぎて疲れたのか、マムシのように「フシュ〜ッ! フシュ〜ッ!」と唸っているが……
僕は、日本の名物「見ざる・聞かざる・言わざる」の可愛い猿が刺繍されたマスクをつけ、行動で「三猿ムーブ」を示していため大丈夫。
<−−− フシュ〜ッ! フシュ〜ッ! フシュ〜ッ! −−−>
「(メグミ……絶対煽り返して、サーシャちゃんの前で恥をかかせてやるからな。誰が粗チン勇者だ! とりあえず、挨拶がわりの鼻毛飛ばしでもくらえ!)」
マサルが、世間話のついでに日本文化を沢山教えてくれたから、僕も(煽りに使える諸々に)メチャ詳しくなっちゃったよ。
「あははははっ。じゃあ、メグミ君がマサル君にシバかれる前に方針決めだけしちゃおうか〜。<小鬼>の皆も、それでいいよね?」
「「「「「はい!」」」」」
なぜ"シバかれる前に"なのかは分からないが、チーム戦になった現在、政党のようなものを作って優位に立ち回る必要があるし……
そのトップであるモンティート先輩のお話は、大歓迎だ!
数百名の議員による投票でルールを決めていた、マサルのいた国<日本>を参考にすると、<農民><小鬼>同盟が連立与党。
そして他の徒党を組み始めた魔王達が、野党って感じ……なのかな?
読んでくださり、ありがとうございます!
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興味がある方はぜひ読んでくださいm(_ _)m
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