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634話 醜い争い




 組織票とアンチ<農民><小鬼>同盟の票を使って、一時的にウグリスを復権させ、モンティート達を地に落とそうとしたホイッスネルとガブリ。


 しかし彼等の思惑は、ウグリスが自爆生配信を始めたことで泡と消え、焦ってその配信を止めるために派遣したモンスター部隊も……



 元勇者で個として強いマサルの大立ち回りによって、肉と革製品の素材に代わってしまった。


 そして間髪おかずに、<農民>同盟が襲撃の真犯人を特定し報復をおこなったことで、彼等はさらに追い詰められていく。



 自ら聖剣で利き手の指を全て落とし、泣きながら執行したその情けない映像を、ケジメとしてモンティートに納めたルチルッカとハラスメントはまだいい。


 上位魔王として派閥を率い偉ぶることはもうできないけど、一応「住むためのダンジョン」と「命」は残ったし、手打ちも済んだ。



 しかし元々アンチ<農民>同盟で、主犯格のホイッスネルとガブリには手打ちの話すら来ず、ただ静かに報復がおこなわれているのだ。


 運良く組織票の効果が残っていて、ウグリスが邪神に戻りモンティート達を干せば、自分達が生き残れる可能性もあるけれど……


 手元の票数計算表は、何度やり直しても「自治制への移行」が選ばれるという、苦しい結果しか示してはくれないし、そうなったら彼等の命はない。



 ただ殺されるだけでなく、<農民><小鬼>同盟には刃向かい死んでいった魔王のように、徹底的に尊厳を穢され筆舌に尽くし難い最期を迎えるだろう。


「「そうなるくらいなら、いっそウグリスを殺して邪神になり、この魔王界から逃げる方がまだマシかも……そうだ!!!!」」






 ホイッスネルとガブリは、各自のダンジョンでほぼ同時刻に同じ結論に至った。


 ウグリスの惨状と、生配信での愚痴(神界で受けた凄惨なパワハラ)を思えば、同じ立場になど絶対なりたくない。



 しかし魔王界にいたところで、ジワリジワリと締めあげられ嬲り殺される未来しか、残されていないのであれば……


 ワンチャン、邪神の立場で<農民><小鬼>同盟から搾取し尽くし、そのリソースで納税をおこなって闇神の機嫌をとる方が、将来性がある。



 そして、その可能性を掴むために邪神になる手段……ウグリスの殺害は、モンティート達を殺すのに比べれば、はるかに簡単だ。


 あの洞窟に"防御力"などという概念は存在せず、現在ウグリスを護るかたちで戦っているマサルも、投票期間が終えれば自分のダンジョンに帰るだろう。



「「つまり、マサルが帰還したタイミングでウグリスを殺し邪神となり、自治制から逃れて強制統治へ移行するのがベスト! そして、邪神の座は一つ!!」」


 嫌われ者同士、ほぼ同じ思考で結論を導き出したホイッスネルとガブリは、同じタイミングで「相手より先にウグリスを殺して枠を得る」ことが最善だと判断。


 報復を仕掛けてきている<農民>同盟や、現在進行形でドンパチやっているマサルではなく、一番の敵を「数秒前まで協力者だった互い」に設定した。






 そして、その決断はすぐに<汚物変態のダンジョン>でマサルと戦っている部隊にも伝えられ……


 数秒前まで仲間だったはずなのに、(同じ捨て駒魔王に名義借りしているだけで)互いのダンジョンに所属しているモンスターが、殺し合いを始める。



 それを見て、一番驚いたのはマサルだ。


 なんの予兆もなしに、突然「自分と殺し合いをしていた襲撃者達」が同士討ちを始め、彼等から伝わってくるマサルへの殺意も消え失せたからだ。



 それは、協力させられていたものの二人以外のダンジョンで育てられたモンスター達も同じで、いきなり身内で殺し合いを始めた仲間に困惑。


 幻覚等で敵に支配された……とかならともかく、バリバリ自我を保っているSSランクモンスター、火龍と炎龍が大乱闘を始めたのだから当然だろう。



 だが予想外の事態に晒されても、元勇者でありメグミ達に散々メンタルを鍛えられた、マサルの立ち直りは早かった。


『状況が変わった。大至急、先輩方に現場の様子を伝えてくれ! 俺も、メールで簡易な説明を送って指示を仰ぐ』


『了解!』



 精霊&ゴースト部隊のリーダーに、事が起きてから数秒で指示を出したマサルは、使い捨ての結界アイテムを取り出して<汚物変態のダンジョン>を護る。


「(経緯はさっぱり分かんねぇ。だけど奴等が殺気を向ける先……ターゲットが、俺からウグリスへ移ったのだけは把握できた。なら、一旦護って様子見だ)」



 ウグリスの邪神復活を認めたくない闇神が、リアルタイムで状況を見守り、何かあった場合、彼の肉体をチート魔改造するから大丈夫。


 ……とマサルは予想している。



 しかしそれはあくまでも予想であり、実際はそうならず、ウグリスが殺され誰かが邪神になる可能性もゼロではないのだ。


 ゆえに、状況が分からず混乱しているうちは一旦防衛に徹して、「自分が何をするべきか」考えるための時間を稼ぐことにしたのである。

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!

作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

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― 新着の感想 ―
> 元勇者で個として強いマサルの大太刀まわりによって、 「大立ち回り」の誤字かもしれないけど、これはこれで当て字造語として流行ってもいいくらい好みな表現。
え?ガブリも参加していたんだ びっくり!
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