612話 薄っぺらい嘘は要らない
〜メグミside〜
覚悟を決めた僕等は、ちょっと大きめの鼻栓をつけて<汚物変態のダンジョン>へ乗りこむ。
生配信で他の魔王に容姿を見られるから、男としては「デカイ鼻栓で豚鼻になった姿」になんてなりたくないけど……
防臭結界だけだと、心理的な意味でガードが緩くて不安が残るので、仕方ない。
「(うわっ、蝿・ゴキブリ・蛆虫のトリプルコンボとか……。キモッ!)」
視覚的なダメージは防げないので諦めているが、対策できるものくらい、("恥"程度の対価で済むなら)ガードしたいのだ。
『え〜、ですから先輩方。色々と思うところもあるでしょうが、心の底から反省し、二度と過ちを繰り返さないと誓った私に、清き一票をお願いいたします』
<−−− ブブブゥ〜〜〜ッ。ブリブリリッ! −−−>
防御力ゼロのダンジョン内では、ウグリスが「もしかしたら復活できるかも」と希望を抱き、屁と下痢を漏らしながら元気に生配信している。
もちろん「ウグリスの喜び=大多数にとっての不快要因」なので、発言する度にサンドバッグ像経由でリンチされ、ボロ雑巾化するが……
絶望感100%から微かに希望が見えた状態にある、現在のウグリスにとっては、リンチも「後でやり返せるから問題ナシ」と流せるダメージなのだろう。
もちろん、僕等……そして仲間・先輩達のためにも、そんなクソッタレな結末にするつもりはないので、警戒心ゼロの奴を軽くシバいて拘束する。
生物系モンスターに拘束させるのは、奴自身が「汚物デパート」ゆえに気の毒すぎるから、拘束係はマサルが召喚したミスリルゴーレムだ。
そしてウグリスの護衛である雑魚モンスター達も、実践経験のあるマサルが、紙を切るかのように始末してくれた。
一応僕も、襲いかかってきたモンスターは魔法で倒したけど……本物の勇者経験者とは、地力が違うね。
「クソッ! 貴様等、何しに来やがった! よくも神であるこの俺を、ここまで貶めたな!!!!」
そして……僕等と対面した途端、<状態異常:正直者>の効果で本心を隠しきれなくなり、さっきまでの発言が嘘のようにギャーギャー騒ぎ出すウグリス。
今さらコイツに何を言われても、「配信中にボロを出す無能。ざまぁ」としか思わないが、頼むからツバと共に膿栓まで飛ばすのはやめてくれ。
<−−− ピュピュピュピュピュッ! ポロポロポロ…… −−−>
スピードが遅くても、付着するだけで装備の廃棄が決定する「汚物の極み」なんだから、マスクして自分で消化しろよ。
あぁでも、<状態異常:汚臭地獄>がかかった状態で消化しても、さらに臭い糞ができるだけか。
「生放送中に、本心暴露お疲れさま。薄っぺらい嘘の言葉を並べ立てる選挙活動とか、実力主義の魔王業界に相応しくないし、本音でいった方がいいと思ってさ」
「俺とメグミが色々質問してやるから、<状態異常:正直者>パワーで嘘がつけない状態で、アンタの本心をさらけ出しなよ」
それでもなお、ウグリスを邪神に戻して再支配を望むというなら、そうされる前に僕が奴を殺す。
サーシャや親しい人達と離れて、なりたくもない邪神にされちゃうのは嫌だけど、ウグリス支配の元で彼等が酷な思いをするよりはマシだ。
もっとも……僕等はマサルのお陰で、ウグリスの本性をよ〜く知っているけど、他の魔王達は「没落後のコイツ」しか見ていないので……
コイツ自身の言葉で、「魔王達を徹底的に虐げ限界まで搾取する」という本音を聞いたら、目が覚める奴も現われると思う。
「ウグリス君〜、第一問いくよ〜。貴方は、自分をサンドバッグにした魔王達をどう思っていますか?」
「八つ裂きにして殺したいに決まっているだろう! いや、八つ裂きじゃ足りん。臓物を全て引き摺り出して、切望という言葉すら生温いやり方で殺してやる」
はい、本音一丁入りました!
さすがマサル……ターゲット層(この生配信を見ている白票の魔王)の心に突き刺さる質問を、的確に投げてくれる。
「そうだ! 先輩方、申し訳ないんですが暫くサンドバッグは勘弁してやってください。本音を聞き出しづらくなるんで」
僕も、ただ突っ立っているだけじゃ何のために来たか分からないので、尋問をアシストするために、生放送の司会者として振る舞うことにした。
「いや、違うっ……。おぃ貴様等、卑怯だぞ! 俺が理不尽極まりない災いにかかっているのをいい事に、好き放題しやがって!」
そして質問してもいないのに、<状態異常:正直者>が仕事をして、本音バレしてしまった憎しみを僕等へ向けていると、白状してしまうウグリス。
一問一答で本性を炙り出すのもいいけど、こうやって自ら「己の幸せな将来」を摘む姿を晒してあげるのも、先輩としての務めかもしれない。
<−−− ブブブゥブブゥ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ブリリブリリリリブリッ!! −−−>
でも、ムカつくからって爆音屁で抗議するのはやめて。
普通にキモいし、屁と下痢の音は言葉と違って「正確な意図」を伝えてくれないから、ただ皆が不快な思いをするだけ……時間のムダなんだよ。
読んでくださり、ありがとうございます!
この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)