603話 サンドバッグを極める人生
派閥の長にも関わらず、一人ポツン(正確には汚物神もいるが)と取り残されてしまった、<闇神:スティグマ>は……
深くため息を吐いた後、相も変わらずウ○コにまみれている部下に、八つ当たりの雷を100発ほど叩きこみ、黒焦げにしてから思考の渦に沈んだ。
ちなみに……真っ黒になるまで雷に打たれたところで、邪神の肉体から排泄される汚物の量は変わらない。
この程度で災いが解けるなら、彼は「自分で悪足掻きする段階」で自由の身になり、もう少しマシな末路を辿れている。
「そりゃあ、誰だって腐界の管理などしたくないわ。儂だって、タダでもらえると言われても要らん。むしろ、廃棄できるならリソースを支払うだろう」
酷い言われようだが、<サルトー区・ポルカト界>の魔王は邪神の圧政に反発しており、後任の神も「不信感を抱かれた状態」から始めねばならない。
つまり統治に苦労するのが目に見えているうえ、部下のクセに生意気だからとシバけば、邪神の二の前にされかねない状況なのだ。
また邪神は、上納が滞ったレベルでリソースの管理に苦労していた。
そのことを知っている神々は、「あそこの管理権を得たところで赤字になるだけ」と考えており、汚さとか逆パワハラを差し引いても評価はマイナス。
闇神的にも、粗大ゴミと同じ評価ではあるが、造り直しや廃棄にも莫大なリソースを要するため、どうにかして管理者を探して押し付けなければならない。
そうしないと闇神自らが管理するハメになり、赤字と最悪な職場環境を自分がモロぐらいしてしまうからだ。
「仕方ない。ひとまず邪神を下界へ追放して、蠱毒の生贄にして時間を稼いでいる間に、後任の神を定めて諸々全て押し付けよう」
かくして地獄では、「後任者を見つけたい闇神vs派閥追放は嫌だけどヨゴレ仕事もしたくない神々」の醜い戦いが始まった。
さて……そんなこんなで、上司によって神格を剥がれ弱体化させられたうえ、数多の制限をつけられて下界へ追放された邪神は……
一番下っ端である82期として、<汚物変態のダンジョン>を治めることになった。
もちろんダンジョン名は、邪神がマゾヒスト化してつけたわけではなく、闇神が戯れに命名したのだが……
邪神の下界堕ちを伝えるために、魔王達へ送られたメールと併せると、「変態性が極まったゴミ」と見られてもおかしくはない。
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敬愛する先輩魔王の皆様へ
ご無沙汰しております。
私は、つい先日まで邪神としてミッションを発令しておりました、<ウグリス・ヴァンヘルム>と申します。
ご存知の方もいらっしゃると思いますが、その際数多の悪巧みをしていたのがバレまして、昨日付で私は「世界の管理者」の座を解任。
神格も剥がれたうえ、一番下っ端の82期魔王として、生涯この世界で生きていくことになりました。
仮にもミッション発令側だった私が、皆様と生存競争するのは図々しいということで、先輩方全員の承認がおりるまで私だけ違う報酬形態となります。
その詳細について記させていただきましたので、お手数ですがお読みいただき、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。
下僕魔王<ウグリス・ヴァンヘルム>
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ウグリス・ヴァンヘルムの収入制限について
・地脈や侵入者の生命エネルギーによる収入は、全て神界でやらかした賠償金に充てられるためゼロとする。
・全ての魔王に配られた「サンドバッグ像」がボコられた場合、一撃につき1ポイント加算される。ただし、サンドバッグ像が壊れた場合の修理費用はウグリス持ちで、HPから強制徴収される。
・ウグリスはBランク以下のモンスターしか配下にできず、自分・配下共にダンジョン外へ出ることができない。
・魔王掲示板で乞食配信をする権利が与えられ、そこで投げ銭をもらえた場合、90%中抜き(賠償金への補填)され、残りを自分のものにできる。
・ウグリスは回復力のみ邪神時代と同等であり、サンドバッグとしてリンチされても多分死なない。だがもし死んだ場合、トドメを刺した者には「邪神への昇格権」が与えられる。
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このメールを読んだ魔王の反応は、ザックリ2つに分かれた。
理不尽な仕打ちを受けた怒りそのまま、サンドバッグ像をタコ殴りにする者。
そして……伝達事項の"最後の一文"を見て、「邪神を殺したら爆弾を押し付けられる」と理解し、慎重になる者の2パターンである。
メグミ達は後者だ。
彼等は、邪神だけでなく背後にいる神々のことも信用していないので、「一発ビンタしたらウグリスが死んで、その責任を取らされる」リスクを恐れ……
サンドバッグ像に、物理攻撃は加えていない。
ただ翌朝の新聞の一面で、「邪神の魔王堕ち」がデカデカと報じられ、サンドバッグに唾を吐きに来た人々を、ダンジョンに招き入れただけである。
また、ウグリスを赦して「一般待遇にする承認」を出したり、下手くそな配信に投げ銭する者は誰もいなかった。
彼は、非公式とはいえ「魔王界で最も嫌われている者ランキングNo.1」をとったこともある猛者ゆえ、当然といえば当然だが。
読んでくださり、ありがとうございます!
この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)
モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!
作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)