598話 邪神、魔王になる
〜マサルside〜
さすがに遅すぎる……2アウト目が決まったうえ、俺をイジメる絶好の機会でテンション爆上げの邪神なら、すぐに3アウトをくらい……
<口は災いの元>ギフトの餌食になって、悪臭&欠損のコンボ地獄に陥ると思っていたのに。
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〜口は災いの元〜
この能力を保持している者が定めたターゲットが、その人を害する宣言を3回したとき、災いが自動で降りかかる。
災いの強さは、ターゲットが宣言した言葉の強さに応じて代わり、格上に対しても平等に効果を発揮するが……
3アウトで災いが発現しない限り、ターゲットを変えることも能力を解除することもできず、ひらすら保険料としてHPを徴収され続けるという、ハイリスクな副作用もある。
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「もしかして悟られたか? うん、あり得る。これだけ待っても罠にかからないって事は、その可能性が高い」
だとするとマズイな……このギフトは、強烈な災いを相手に与えられる反面、きちんと決まらない限り俺がHPを吸われ続けるという、諸刃の剣だ。
つまり邪神が対策をこうじて、トラップを防いでしまったとしても、俺は設定を解除して白紙に戻すことはできず、生涯HPを奪われてしまう。
幸い"元勇者"という職業柄、俺のHPは多いので多少吸われても命には響かないが、それでもハンデを背負うことに変わりはない。
それに加えて、このギフトは完遂しないとターゲット変更もできない仕様なので、邪神に防がれている間は新たなトラップを敷けなくなる。
そうなると切り札が一つ減ってしまうので、俺は多少無茶をしてでも邪神から3アウト目をもぎ取り、HPと手札を取り戻さなければならない!
「マサル様。邪神が"欠損カード持ち"を特定するような情報を開示してしまい、コチラの状況が一気に悪くなりました。早く解除しないと起爆しかねません」
「そうか。先輩方は?」
「現在、メグミ様が説得に向かわれたので時期に動きだすかと。マサル様も、お早く対策するように……との事でございます」
「了解。(あの人達が動くほどって、邪神の嫌がらせエグいな。どれだけ腐っているんだよ)」
時間がない、こうなったらリスクを重ねてでも<口は災いの元>発動確率を上げ、邪神に一泡吹かせてやる!
「血で魔法陣を描いて、俺が決められる範囲で"対価"を差し出し、ギフトを<拡張>する。今回は規模がデカいから、相当持っていかれるが……」
今後10年、人間の女性と<ピー>をしない……って対価なら……
うん、いける!
一時的に<口は災いの元>のアウト判定範囲を、「口に出しかけて、その後は脳内で鮮明にイメージ」くらいまで拡張可能だ!
「これなら獲れる! ギフト対策で己の発言を縛っているとして、思考まで縛るほど真面目な奴じゃないはず。絶対、脳内では俺を罵倒している」
実際……<嫌悪貯金>を使っているとき、邪神には絶えず嫌悪の情を向けられて、メチャクチャ儲かったし。
つまり、何らかのシステムで己の発言を縛っても、それがカウントされてしまう……くらいまでアウト判定範囲を広げれば、邪神が罠にかかる可能性は高い。
「うっ、もう対価の徴収が始まったか。"股に呪印が入った男"とか、厨二病を拗らせている感じがして、なんか恥ずかしいな」
<拡張>ギフトの対価として、「人間の女性と<ピー>する権利10年分」を捧げた以上、こうなるのは理解していたが……
メグミ達と風呂で遭遇したとき、内心「ダサッ!」と蔑みながら見られると思うと、憂鬱になってくるぜ。
とはいえ、<拡張>ギフトの発動条件は満たせた。
あとは邪神が罠にかかるのが先か、起爆されて俺の<ピー>が逝くのが先か……地獄のチキンレースをするだけだ!
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〜拡張〜
己が持つ財産や権利を供物として捧げることで、一定時間、スキルおよびギフトの効果を増すことが可能。
供物は、本人の価値観ではなく「世間一般で価値が高い物=より価値がある」とされ、価値ある供物を捧げるほど能力の拡張度合いも大きくなる。
また供物は、複数捧げたり未来の事象に対する債券の提供……という形でも構わない。
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<−−− ピロリロリーン♪ ターゲットが3アウト判定を受け、ギフトの発動条件を満たしました。ターゲットに災いが降りかかります −−−>
「マジか。まだ拡張後30分だぞ? どれだけ脳内で俺のことを害していたんだよ」
で、邪神がくらった災いは……
「ブフォッ! こりゃ良いや。マジでウケるwwwww」
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〜状態異常:魔王化〜
神でありながら、支配下にある魔王と同じ制約を受ける存在となる。
己が発動したミッションを達成できなければ、魔王と同じようにペナルティーを受けるし、それがコア破壊なら<邪神のコア>を破壊される。
この状態異常を解除するには、己が侵した罪を悔い改めて心から謝罪し、被害者<マサル>の老廃物で煎じた茶のみを100日飲まなければならない。
なお逆上して被害者を殺すと、被害者の残存リソースが"死者の念"となり、より深刻な状態異常にかかるハメになる。
また解除にも相応の労力を要するようになるので、短絡的な行動で被害者を苦しめるのは逆効果だ。
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つまりアイツは現在、欠損カードを押し付けられて起爆されたら、そのペナルティーをモロ喰らいする状況にある。
そして邪神へ欠損カードを押し付ける手段は、実力行使以外に「お布施を払って他所のダンジョンへ移す」際、邪神を経由するというルールを利用。
アイツが欠損カードを他所へ回す前に、4桁のコードを入力して起爆させるという、鬼畜なパターンもあるのだ。
「喜べ、邪神様。待ち望んだ高額お布施だぞ! 俺は、まだ新米魔王で保有ポイントこそ少ないが……資産はそれなりに持っているからな」
要らない聖職者用の装備をポイント化すれば、お布施一回分の費用くらい余裕で賄えるぜ!
読んでくださり、ありがとうございます!
この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)
モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!
作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






