590話 若葉の成長
〜モンティートside〜
邪神の鬼畜ミッションが止まり、己のダンジョンに向き合う余裕が出来たことで、<小鬼>同盟の5人はさらに一回り大きくなった。
「何より、四大属性全ての魔王が揃ったのが素晴らしい! どれか一属性でも欠けていると、どうしても補強にかかる費用が嵩んで弱点になっちゃうからね」
僕達がフォローすれば致命傷にはならずに済むけど、彼等自身の力で成長しないと、年寄りの僕等が脱落したとき彼等も道連れになってしまう。
メグミ君達と連むようになってからの日々は楽しいし、僕等も「まだ生きたい」と思えるようになったけど、そういう意味の一連托生は望んでいないので……
彼等には、<小鬼>5人の力だけで独り立ちしたうえで、僕等とも仲良くしてもらいたいのだ。
「メグミ君は……うんうん、安定しているな。ルーキー時代ほどの勢いはないけど、ゴリゴリ稼いで着実に地盤を広げていっている」
彼のメインギフトである<自販機作製>は、珍しい異世界の商品を安く無限に供給できるチート能力なので、それを活かして日々ボロ儲け。
さらには邪神像の転売、壊れた武器の下取りといった工数がかかる仕事も、面倒くさがらずにコツコツこなし……
ギフトに頼らない収入源も増やして、稼ぎを安定化させている。
サーシャちゃんは、ここ最近色々と悩んでいたみたいだけど、アスタリアが相談に乗って以降、調子をとり戻して再び成長し始めた。
闇医者……とうか素材ブローカー業は、<小鬼>同盟の中でも彼女とスティーブ君しかできない事業だから、うまく軌道に乗せて稼いでほしい。
スティーブ君はピュア過ぎて、そういう「生きたまま素材を剥ぎ取る商売」はできないと、諦めちゃったけど……
ダンジョン上部にアトラクションを作って人を呼び込み、その下にはダンジョン村を設けて労働者も確保した。
彼は水属性の魔王だから、地主業との相性がすごくいいし、人好きされる性格なので、近隣諸国との戦争さえ回避できれば良い領主魔王になるだろう。
実直な性格だからこそ、僕達やメグミ君に借金している現状を気にして、一刻も早く返済しようと無利している節もあるけど……
投資なんて年単位でするものだし、じっくり育てて芽吹いた後で回収する方が、何方にとっても好都合なんだから、そんなに慌てなくても大丈夫だよ。
メグミ君も、この件を"イジるネタ"として使ったりはするけど、鬼取り立てをする気はないみたいだし、まずは自分のダンジョンを大きくする事に注力しな。
同じく僕等から融資を受けたカルマ君は、良い意味でスティーブ君よりポワポワしていて、まずは借金返済より己の地盤を築こうと全力投球している。
その結果、さらに多くの融資を受けて負債も膨らんじゃったけど……このグループに鬼はいないし、育った後なら十分返済できる額だから……
安心して、儲けの拡大に勤しんでくれ。
そしてマサル君。
彼は、さすが元勇者というか……1教えたら10理解するし、すでに僕等の助けが要らないほど何でもこなせて、ダンジョン経営も軌道に乗せた。
メグミ君と戦ったときは、精神的に脆い印象が強かったけど、この短期間でどうしてあそこまで鋼メンタルになれたのだろう?
本人に聞いても「メグミに感化された」というばかりで、イマイチ具体的な理由が分からないんだけど、図太くて困ることはないし……まぁいいか。
鋼メンタルになっても、義理と礼節を重んじて弱者に寄り添う性根は変わっていないので、闇堕ちすることはないと思う。
「彼等の成長を見ていると、もう少し時間に余裕があれば……と思うけど、邪神だってそこまで放置はしてくれないよね?」
アイツが、神界の上役から課せられている上納のペースを考えると、来月には新たな搾取ミッションがくるはずだ。
「先日、マサル君がアイツに災いを降らせたのは祝杯モノだけど、その反動で次のミッションは彼がターゲットにされるかもしれない」
僕やメグミ君も、邪神の恨みを買いまくっているから大概だけど、実害を及ぼしたマサル君に対して、奴は熾烈な怒りを抱いているだろう。
「だけど、邪神が新たなミッションを発動すると同時に、罰ゲームをくらって"邪神崇拝者"にされちゃった魔王達も正気に戻る。ここが仕掛けどきだ!」
ミッションの内容にもよるけど、その魔王達のヘイトを邪神に向けつつ、奴に「神界のルール」を破らせる。
または終始大幅赤字になるよう誘導して、目に見える形の問題を生じさせ、邪神の上役に「この世界でトラブルが起きていること」を伝えねばならない。
その結果、上役の神に「死ぬまで搾り取れば良いじゃん」と言われたら詰みだけど、多分そういう方針ならもうとっくの昔に僕等は搾り尽くされているはず。
つまり魔王界に、「破ったら厳罰必至のダンジョン運営規約」があるのと同じく、神回のルールも破るとシャレにならないペナルティーが課せられる……
と考えていいだろう。
どのくらいルールを破らせれば、アイツを左遷コースへ導けるか……この見極めは、奴と長年関わってきたベテラン魔王である僕等の仕事だ。
メグミ君達が、道連れで詰まないように適切なラインを見極めて、アイツ以外誰も涙を流さぬよう、(味方の)犠牲者ナシで事を為さなければならない!
読んでくださり、ありがとうございます!
この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)