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589話 闇医者<サーシャ>


〜サーシャside〜




 軸となる方針が決まったところで、コソッとアスタリア先輩が「儲かるシノギ」を伝授してくれたので、派遣業と共にそれも開業。


「まさか私が闇医者をやる事になるなんて、学生時代は思いもしなかったなぁ〜」


 そう……私が開業したのは、素材や臓器を安全に換金する闇医者稼業だ。



 大抵のケガはポーションで治せるこの世界じゃ、一般人の臓器に大した価値はないけど、素材として換金可能な亜人や高知能モンスターは違う。


 身体の一部を自主的に削いで販売し、欠損した部位をポーションで治せば、痛みと引き換えに大金を入手できる。



 しかし現実は厳しいというか……どの地域でも亜人や知能あるモンスターは"獣"扱いされており、人間の領域に奴隷待遇以外で立ち入ることができない。


 もちろん商人との取引もできる訳がなく、ただ一方的に狩られ搾取される関係にあった。



 だけど、もし彼等でも利用可能な「素材納品サービス」ができて、彼等が正当な価格でブツを下取りしてもらえるようになったら……


 当然だけど、口コミで噂が広まり<集金箱のダンジョン>にはそういうお客様が集まるだろう。



「ウチには、メグミ君の自販機とか<農民>同盟の先輩方が作った野菜の直売所もあるから、得たお金を物に変える手段もあるしね」


 問題は、亜人達と仲良くなることで人間からさらに毛嫌いされる事だが、元々<集金箱のダンジョン>はタチの悪さで有名だし……


 害しか与えない人間なんてお呼びじゃないから、彼等のご機嫌取りなどしなくていいと思う。






 実はこのビジネス……かつて同盟でも、ルノーブル先輩が似たような試みをした事があり、失敗した……という経緯があるらしい。


 その失敗理由は、ずばり「亜人達が幽霊に怯えてしまい、お客様が集まらなかったから」なんだとか。


 そりゃあ彼等も、オバケに関しては人間と似たような感性を持っているので、ガイコツや幽霊がウヨウヨいる場所で、身売りするのは嫌がるだろう。



 失敗した理由が明白すぎるが、モンティート先輩・アスタリア先輩・ナーティー先輩は人間と仲がいいし、ゴーブル先輩も地理的要因で厳しいので……


 <農民>同盟でルノーブル先輩のアイデアを引き継ぎ、自分のダンジョンで再現する方が現れなかったのも無理はない。



 結果としてこのプロジェクトは流れ、私がパクるまで塩漬けになったそうだが、アイデア自体は素晴らしいので成功させてルノーブル先輩に報いるつもりだ。


 もし成功した暁には、アスタリア先輩とルノーブル先輩にもお礼はさせてもらうので、先輩方……是非ともご指導ご鞭撻よろしくお願いいたします!!



<−−− ジリリリリリリッ −−−>


「あっ、さっそくお客様が来た! 噂を流した甲斐があったわね〜」



 プロジェクト始動からわずか3日……ウチ所属のモンスターを方々に派遣して、闇医者開業の宣伝活動をしてもらった事もあり……


 早速、最初のお客様……エルフの美青年がやってきた。



 大切なお客様を、侵入者と同じ"ウ○コまみれ"にしないためにも、闇医者用の出入り口は別にあり、そのルートを使えば無傷で入ってこれる。


 もちろん、このルートをこちらの意図と違う目的で利用しようとする悪者には、きつい裁きが下るシステムも組み込んであるけど。






『初めまして。今日は、どんな取り引きをお望みですか』


『髪と爪を売りたいです』



『かしこまりました。こちらでカット致しましょうか? それとも、ご持参いただいた分で?』


『持参いたしました』



『左様でございますか。では、品物を拝見させていただきます。ふむ……品質は"良"。換金レートはこんな感じになっておりますが、いかがでしょう?』


『はい。それでお願いいたします。あと、食材や他素材の購入もできると伺ったのですが』



『可能でございますよ。ダンジョン内で購入することもできますし、お申し付けくだされば、代金と引き換えにコチラへお持ちすることもできます』


『持ってきていただけますか? いただいたお金を全て、ミスリルの鏃に換えて欲しいです』


『かしこまりました。少々お待ちください』



 ふむふむ……受付嬢オートマタとエルフさんのやり取りを見た感じ、あの人は"お試し"でココを訪れたっぽいな。


 エルフの髪は、上質なカツラの材料になるので権力者に人気だし、爪も「寿命が伸びる妙薬」として高値で売れるから、コチラとしてはありがたい取り引きだ。



 エルフさんとしても、採掘とか金属の加工が苦手な彼等にとって、魔法を乗せられる「ミスリルの鏃」は喉から手が出るほど欲しい代物なので……


 自然に生えてくるものと引き換えにソレが得られるなら、ココを訪れる甲斐があるという事だろう。



 闇医者稼業というと物騒だが、私は無理やりお客様をバラバラにして臓器を取り出し、高値で売っぱらうヤクザな商売をしたいわけではない。


 蟻や蚕の養殖以外でも、こういうやり方で副業収入を得て、稼ぎの地盤を安定させたいだけだから、こういう取引でも十分満足だ!

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!

作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

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― 新着の感想 ―
エルフ達が、人間に待ち伏せされる危険があるな その辺りの対策が必要そう
相変わらず発想が面白いなぁw
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