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581話 口は災いの元




 魔王にとっても格上の存在である邪神……そんな相手に一撃くらわせたことを知り、これまで好き放題マサルを罵倒していた者達も、口を噤んだ。


 誰だって、自分にとって都合の悪い相手を「悪」と断じて殴るのは好きだが、カウンターパンチはくらいたくない。



 またサーシャとアスタリアは、邪神に災いが降りかかった件について公表したものの……


 マサルがどういう手段を用いてその結果へ導いたのか、については秘匿したため、魔王達は「どうすれば保身できるか」正解が分からない状況なのだ



 その結果、魔王掲示板でのマサルに対する誹謗中傷はピタリと止み、書き込まれる内容は「邪神への罵倒」一色になった。


 マサルに文句を言うと、邪神みたいにカウンターパンチをくらって傷付くかもしれないけど、今のところ邪神を誹謗中傷しても名指しで叩かれはしない。



 マサルは元より、邪神だって魔王にとっては十分怖い相手なのだが、すぐお気持ち表現してしまう心の弱い者は……


 いつだって「殴っても殴り返されなさそうな相手」に群がり、集団でマウントをとって気持ち良くなることで、己の満たされなさを慰めてしまうのである。



 だが、魔王掲示板での誹謗中傷はピタリと止み、過去のコメントも次々と削除されているものの、未だマサルの<嫌悪貯金>は大活躍。


 鼻がもげそうな体臭と引き換えに、モンティートよりも高い時給を稼ぎ出している。



 それは何故か?


 皆、表で言わなくなっただけで裏では罵詈雑言を吐いているうえ、抑圧されたことで更にマサルへのヘイトが強まったからだ。






〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


〜嫌悪貯金〜


嫌悪感を向けられると自然に「嫌われポイント」が貯まり、一定額に達すると換金できる。


ただしこの能力を使用している間は、体臭が通常時の10倍になり、屁で人を卒倒させられる殺人兵器と化す。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 これまでは魔王掲示板でマサルを罵倒できたため、同格の魔王に共感を求めたい者達が連んで誹謗中傷をしていた訳だが……


 それが抑圧され表でお気持ち表現できなくなった事で、彼等は執事モンスターを始めとする、「逆らえない部下」相手にマサルの悪口を垂れ流した。


 結果、「主人の言うことは絶対」なモンスター達までマサルに嫌悪感を抱いてしまい、<嫌悪貯金>の稼ぎが更に上がったのだ。



 だが自分よりも惨めな存在(=邪神)ができたことで、完全に開き直ったマサルは、その儲けを見ても舌舐めずりをして喜ぶばかり。


 彼にとって、自分を嫌悪する相手は「ポイ活を支えてくれるオジ」にしか見えておらず……


 対面したら手を振って「ご馳走様です!」と礼を言いたいくらいには、ボーナスキャラ扱いしているから。



「メグミ達は、"臭い"とリアクションしつつも面白がってくれたし。アイツ等に嫌われないなら、他の連中がどう思おうが気にしねぇよ」


 もっとも……そんなマサルでも、嫌悪感むき出しのライバル候補を狩った後、その候補がカンパしていたポイントをもらえなくなると、一時的に凹む。



 殺す前に、<職業:勇者>のチート能力でステータスを奪い、ダンジョンコアも破壊して大儲けしてもなお、安定した基礎収入が減るのは辛い。


「ハァ〜。狩り終えた奴等が地獄で俺を呪っても、ポイントが入るようになればいいのに。<スキル図鑑>は、その辺の応用が効かねぇんだよなぁ〜」



 メグミ達からもチート扱いされている<スキル図鑑>だが、コピーさせてもらった"オリジナル"の練度を逸脱できないという、隠れた弱点がある。


 ゆえに器用貧乏になり易く、いずれは<職業:勇者>で奪った能力にその座を奪われ、"保険"扱いされる運命なのだ。






 でも現在はまだ、<職業:勇者>の恩恵で得た能力よりも、<スキル図鑑>に収載されているモノの方が便利なので……


 (ポイ活オジを一人始末してしまった事で、)僅かに減ったポイントの増加ペースを見てため息をついたマサルは、数秒で気持ちを切り替えた。



「(ポジティブにいかねぇとな。"先輩達が邪神像でまた一儲けしている"と書いてあったし、利確したポイントをそれに回して俺も一口噛ませてもらう!)」


 減った分は、利食いしたポイントの運用で賄えばいい。


 そう割り切ったマサルは、すぐメールでその旨をメグミに頼み、新たなライバル候補を狩るために、次なるダンジョンへ足を踏み入れた。



 試練開始から17日が経ち、生き残っている候補者の数も100名を切った。


 マサルは既に「コアの破壊数」で圧倒的1位になっているため、このまま期限を迎えて、コアを多く破壊した順で採用されるか……


 ルール通り、生存者が50名になるまで生き残れば魔王昇格。



 なお……その際にプレゼントされる転生特典のギフトを、マサルは受け取り拒否するつもりでいる。


 当初は、「タダで貰えるならありがたく」と思っていたが、<口は災いの元>ギフトによる情報提供で、邪神の不穏な企みを知ったからだ。



「タダでも楔は要らねぇよ。俺、汚臭魔神の首輪でときめくマゾヒストじゃねぇし」


 本当に、"口は災いの元"である。

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!

作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

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― 新着の感想 ―
なるほど、どんなスキルでも図鑑登録できるけど、登録時のオリジナルよりも成長できる拡張性は無いわけか。 それでも便利なもんだけど。
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