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577話 高額課金の果てに




 マサルの悪魔的なダンジョン攻略に怒ったのは、現場の魔王候補者達だけではない。


 確実に強敵となる元勇者の弱点を探るべく、何億ロルも課金したにも関わらず、見られたのは彼の排泄行為だけという……


 気の毒すぎる目に遭った上位魔王もまた、沸々とヘイトを溜め、彼が屁をこくたびに苛立ちで机やモニターを殴ってしまい、二次被害に遭っていた。



『あっ、そういえばここ数日……歯を磨き忘れていたな。ダンジョン攻略をすると、生活リズムが不規則になって忘れちゃうんだよ』


<−−− ゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシ……ガラガラガラガラ…………ペッ! −−−>



 それでも「元勇者の手札を見られるかもしれないチャンス」を諦めきれず、唇を噛み締めながら課金を続けた、哀れな上位魔王が見たのは……


 元勇者が歯磨き後の汚水を近場にペッと吐き、聖魔法が混ぜ込まれたその汚水によって、付近が浄化されてしまう"幾度となく見た現象"。


 それに加えて、今回はトドメの汚物攻撃も披露された。



『あれ? なんか喉に引っかかっているな。あぁ〜、扁桃の"膿栓"が育っちまったのね。ついでにお掃除しておくか。こういう時、水魔法って便利だよな〜』


 不吉な言葉の後にマサルがおこなったのは、一般人でさえ嫌悪する膿栓……別名"臭い玉"を、水魔法で扁桃から全てかき出し……


 それをペッと吐き捨てたうえ、靴の裏で地面にすり付ける鬼畜行為だった。






 当然ソレは現場を浄化してしまうので、被害にあった魔王候補者を泣かせ、マサルが立ち去ったあと掃除をしようとした者達も……


 ベットリと地面に付いた汚臭に耐えることができず、遂には心折れてしまい、たかが掃除に半日を要した。



 しかも半日で掃除が終わった訳ではなく、主力モンスターが掃除に勤しんでいる間にダンジョン攻略を進めたマサルが、半日でそこのコアを壊しただけ。


 ダンジョン消滅により、(ある意味)掃除する必要がなくなった結果……"臭い玉ペースト"は、跡地の洞窟にこびり付いたまま放置されることになったのだ。



『うわっ。そういえば、歯間ブラシをかけるのも忘れていた! ハァ〜、忘れっぽいなぁ……俺』


 加えて、セレクト自販機でメグミに買ってもらった「高品質な歯間ブラシ」で、肉とニンニクを沢山食べた歯を磨き……


 おぞましいニオイの食べカスをかき取ったうえで、その歯間ブラシを、敵候補者のエースモンスターの鼻に突っこむマサル。



 Sランクながらも、ダンジョン内で一番強いからとマサルの相手をさせられ、歯間ブラシの激臭で失神して、その間に生きたまま素材を剥がれるという……


 哀れすぎる最期を迎えたギガントワイバーンには、この世の全てを恨む資格がある。






「くそっ。どうして手間かけて育てた下僕候補が、臭い玉や汚水で死ななきゃならねぇんだよ! しかも、これだけ課金してもマサルの手の内が一つも見えん」


 課金詐欺に遭った上位魔王の中でも、トップクラスに課金しており、今回の試練に多くの手下を送り込んだホイッスネルは……


 一番多く"マサルの有料屁"を聞かされた事もあり、ストレスで頭皮がダメージを受けるほど真っ赤になっていた。



「俺が知りたいのは、今後"命懸けで戦うかもしれない敵"の弱点なんだ! 屁の拡散方法じゃの、"臭い玉"で汚染拡大するコツじゃの……どうでもいいわ!」


 正確に言うと……ホイッスネルは、「元勇者<マサル>は周囲が卒倒するほど臭く、排泄物全てが生物兵器になる」という情報だけは入手できた。



 しかし、そんなクソみたいな情報に数億ロル払う価値があったか?


 ある訳ない。


 わざわざ廃課金しなくても、魔王掲示板でメグミ達がネタにして騒いでおり、それを見ればタダで手に入る情報である。



「マサルが創った<誠のダンジョン>も、火属性のくせに薄暗くて何も見えねぇし。あぁ〜、くそっ! やはり諜報部隊を何名か送りこむんだったぜ」


 邪神が定めたルールによって……魔王が候補者にモンスターを貸し出すことはできず、候補者は自らの配下のみで戦わねばならない……とされている。



 だがこのルールには抜け道があり、正式に譲渡して名義も変えたモンスターなら、(Sランク以下に限り)試練に参戦できたのだ。


 それゆえマサルは、<農民><小鬼>同盟が保持していた育成済みのモンスターを数百体もらって、戦力にしていたし……


 似たような手段で足りないモンスターを補い、その代償として「後ろ盾となってくれた魔王のスパイ」を側に置く、打算的な候補者もいる。



 だがホイッスネルは、数多の下僕候補を育てたせいで個々に割けるリソースが僅かしかなく、そんな上等な配下を譲り渡す余裕などなかったのだ。


 結果……数だけは多い下僕候補を次々とマサルに食われ、詳しい情報は「排泄音についてだけ」という、惨状になってしまったわけだが。

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!

作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

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― 新着の感想 ―
笑いが止まらん 疲れも一瞬ふっとぶ 魔王掲示板も、みたい 魔王たち「こんなやつをよくダイションの、しかもオアシスフロアに住まわせてたな?」
面白いです。本話で膿栓という言葉知りました。タメニナリマス。マサル、すごい。
候補者送り込めば送り込むほど不利になるクソゲー(意味深)が始まってる!
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