574話 省エネモード
〜マサルside〜
「(しかし、コイツ等……マジで大物魔王の教育を受けてきたのかよ? 考えを声に出すな。そんなんじゃ、能力を使うまでもなく全部筒抜けだ)」
おそらく、初めての実践で内心不安でしかたなく、緊張を誤魔化すために自然とお喋りが増えちまったんだろうが、"愚か"としか言えねぇ。
勇者時代に対峙した魔王の中にも、アレな奴はいたけど……
それでもコイツ等よりはマシだったし、邪神も一応"選別"していたんだなぁ……と思い知らされた。
「(うわっ、隊列が乱れてドミノ倒しになっている部隊が……。あっちは、もう走り疲れた魔王がモンスターに背負われたし……。酷いな)」
まるで、練習皆無のまま本番を迎えた運動会を見ているようだ。
<−−− ブウゥゥゥゥ…… −−−>
『『『『『『『『『『ギャウンッ!!!?』』』』』』』』』』
「(うん。やっぱりコイツ等に上等な"煽り"は勿体ない。屁とか体臭でバカにしたような煽りをやって、トドメを刺すときだけ物資を使おう)」
現在おこなわれているのは、生き残りが50を切るまで終わらないバトルロイヤルで、俺にはこの後"ダンジョン突撃"の任務もあるのだ。
わざわざこんな連中相手にMPと体力を使って、消耗する必要はない!
「(しかし、効果絶大だなぁ〜オイ。省エネできるから得とはいえ、そんなに汚物扱いされると傷つくよ)」
俺は普段、毎日風呂に入っているし、髪を洗わなかったのだって、鬼畜マスター・モンティート先輩に「武器温存」と言われたからだ。
あと、ゴシップ誌の内容をマジで信じるなって!
たしかに俺は打算で付き合われていた"ATM予備軍"だったけど、性病モンスターだったのは彼女達の方で、俺は100%被害者だ!
思うところはあったものの、奴等の残念すぎる行軍を見ていると、メールでアドバイスをくれる先輩方や武器を提供してくれたメグミ……
こちらが思いつかないような奇抜な策で、ダンジョンの補強を手伝ってくれたサーシャちゃんと、人に恵まれた現在の状況に感謝の念が湧き出てくる。
「(俺だって、一歩間違えれば"ああいう育ち方"をしちまったかもしれねぇし。これまで辛いことも多々あったが、なんやかんや恵まれていた)」
彼等の手厚いサポートに報いるためにも、俺は必ずベストな形で試練を突破して、即戦力の魔王にならなければならない!
決意を新たにしつつも、それを敵に悟られぬよう隠しきり、汚臭攻撃で煽り散らかしつつ、敵を目的地へと誘導した俺は……
現場責任者のオートマタにメールで指示を送り、予定どおり退路と隊列中央を溶岩壁で塞いでもらって、ゴーレムによる一斉攻撃を開始した。
まず火矢を放たせて、真っ暗な洞窟内で目立つソレに目を向けさせ、奴等の意識が"見えるもの"へ向いた隙に、スナイパー部隊を動かす。
ここで重要なのは、力あるモンスターではなく指揮官に集中砲火すること。
わざわざ、高ランクモンスターを倒す必要なんて無いんだ。
守備の意識すらロクにない魔王候補者を殺せば、ソイツのダンジョンに所属しているモンスターも連鎖で死ぬので、コスパ良く敵を狩れる。
またコンスタントに地面を確認して、敵が持ってきた軍事物資を奪い取るのも、大切なお仕事だ。
戦争には金がかかるからなぁ〜。
少しでも敵の物を奪って節約しないと、アッという間に枯渇して、俺が"狩られる側"になっちまう。
俺が、派手な戦いではなく「暗闇での釣り野伏せ」を採用したのには、あと二つ理由がある。
メグミが提供してくれた地球産武器の詳細を、モニターで観戦しているベテラン魔王共に悟らせないため。
そして、息絶えそうな魔王をダンジョンの機能を使ってこっそり回収し……この手で直接、トドメを刺すためだ。
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〜職業:勇者〜
異世界の血を引く「選ばれし者」がなれる職業。
聖職者としてのチカラを得るだけでなく、<才能の器>が拡張される事によりステータスの伸びが良くなる。
またその手で魔王を倒すと、相手のギフトおよびスキルの一部を貰い受ける事ができるため、魔王討伐経験のある勇者は隔絶した強さを持つ。
勇者の子孫が魔人族を倒すことにより、後天的に覚醒する場合アリ。
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候補者であって正式な魔王ではないから、成功するかどうかは賭けだけど……ステータスを強化できる絶好の機会じゃん。
今後、敵対する魔王を殺すことがあったとしても、このチートを使う優先権はメグミに行くだろうし、旨みを独占できるチャンスがあるなら活かしたいんだ。
メグミを押し除けてまでガッつく気はないけど、俺だって強くなりたいもの。
「って事で、バイバイ! (コイツ……最期の思考が"クサイ"なの、哀れだなぁ〜。包茎野郎って連呼されてムカついたし、屁でトドメを刺してやるけど)」
俺は、オートマタが送ってくれた瀕死の魔王候補者に淡々とトドメを刺し、それを悟られないうちに現場へ戻す。
まだギフトは授与されていないため、ステータスの上がり幅は少なかったけど……
幸いなことに奴等も"魔王判定"され、数だけはいるので、俺のステータスを一段階伸ばしてくれた。
読んでくださり、ありがとうございます!
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)