571話 動き出す若人達
〜メグミside〜
なぜか激臭をフェロモン扱いして発情してしまったサーシャに、ベッドの中で料理しては食われ、料理しては食われ…………5時間。
その後も、趣向を変えて"十色の据え膳"を食われ、足腰立たない干物になったところで、よくやく彼女が正気に戻り解放された。
「アハハハハ。ゴメンね〜、ついハッチャケちゃった♪ ご馳走様〜!」
「うん、いいよ。(死にそう。だけど幸せ。交わりながら死ぬ動物のオスって、こんな気分で逝くのかな?)」
時間的に、もうマサルの試練は始まってしまったので、支援した魔王の一人として、僕も<水城のダンジョン>に戻り観戦&応援しなければならない。
ならないのだが……この状態で帰ると、その場にいる先輩達に「随分お楽しみで〜」とイジられてしまうから、自力で立てるようになるまでは帰れないよ。
<−−− ガシャッ −−−>
「うわっ!?」
「大丈夫だよ、メグミ君。アスタリア先輩から、メールで"戻ってこい"と業務連絡が来ているし、二人で帰れば平気だって」
「え〜っと、そうだね……。(それは、先輩達が乙女であるサーシャを気遣っているだけだよ。君がトイレで抜けた途端、セクハラの雨が降るんだから!)」
とは言っても、アスタリア先輩のおっしゃる通り、立場上戻らないわけにはいかない。
せめてもの抵抗で、セレクト自販機で買った「男性用香水」をベチャ塗りして、別の意味で「ニオイ人」になり"アレの残り香"を隠そう。
頭から香水をぶっかけて、クラクラする香りをまとった僕が、ゴーレムに背負われて<水城のダンジョン>に帰還すると……
先輩方はモニターに映る魔王候補者達の姿を眺め、メールでマサルに情報を送っていた。
「うわっ、香水臭い。これはこれで目に沁みるわね〜」
水属性のアスタリア先輩に、ノーモーションで水をかけられ強制洗浄された僕のポケットには、お高いスマホが入っていたのだが……
お高いだけあって防水性能もバッチリなので、ヘタることなく生還。
しかし持ち主の僕は気怠さで受け身がとれず、うっかり水を吸い込んでしまって、鼻ツーン地獄で涙目になったよ。
「ヘックショイ! モンティート先輩、今どんな感じです? あと無許可で抜けてすみませんでした」
「ふふふっ。いいよ、いいよ。コソッ(若いんだから、好きな時にハッチャケないとね♪ 人生、楽しいのが一番だ!)」
サーシャが側にいる状態でも、ヒソヒソ話で尊厳破壊砲を撃ってきた〜!
グスンッ、セクハラ反対……だけど無断抜けして迷惑をかけた自覚はあるので、反抗できません……。
「それでマサル君だけど、さっき彼のダンジョンの入り口が試練会場と繋がれて、バトルロイヤルがスタートした。まだ彼は動かず、敵の出方を伺っている」
「了解です! って、うわぁ〜酷い! またボッタクリかよ」
モニターに目を向けると、この試練は"既存の魔王に対して"、すごく嫌らしいシステムになっていることが分かった。
なんだよ、「無料で見られるのは"試練の間"だけ。ダンジョンの内部や戦闘場面を見たい人は、その都度課金してください」って!
しかも課金一発で解放できる範囲が狭い!
これじゃあ、マトモに見ようとしたら白金貨を積むハメになる。
「まぁいいんじゃない? メグミ君、今回はマサル君に色々貸し出していたでしょ? 無料公開されなくて、良かったじゃん!」
「そりゃあそうですけど……。視聴側としては、堪ったもんじゃありませんよ」
モンティート先輩は、意外とケチらず課金しており、すでに100名以上の魔王候補者のダンジョンに、"監視点"を作っていた。
ダンジョン内部の映像を全て解放したわけじゃないけど、出撃前のモンスターが使用する控え室や、奇襲部隊の潜伏先に、カメラを置いた形だ。
「本来なら、マサル君は開始と同時に打って出て暴れる筈だったんだけどね〜。敵が集団で彼を仕留めようとしていたから、一旦ストップをかけたの」
「なるほど。ダンジョンの攻防戦は、基本的に防衛側の方が有利だし、集団で敵が襲ってくるなら、ひとまず防衛にまわって敵戦力を削るのもアリですもんね」
どうせ集団戦を仕掛けてきたのは、ホイッスネルみたいな「派閥作りたい系の上位魔王」が組織した、奴隷魔王候補軍団だろう?
だったら有利な防衛戦で、後ろ盾の魔王が一生懸作りあげた戦力をゴッソリ削り、カウンターで攻め込むのがセオリーだ。
「集団で襲撃しようとしている魔王達の属性と部隊の規模は、課金調査してマサル君に教えた。だけど作戦については口出ししていないんで、あとは彼次第」
「ふむ。マサルの様子を見る感じ、自分も動こうとしていますね。1階層で少数精鋭のチームを組んで待機……か」
「うん。この陣形だと、おそらくアレだろうけど……お手なみ拝見といきましょう! スティーブ君、カルマ君も、よ〜く見ておくんだよ」
「「はい!」」
先輩も僕と同じ予想かな?
少数精鋭で当たっては逃げ当たっては逃げして、敵陣を縦に引き伸ばし、防衛側の有利を使って一気に殲滅するパターン。
実際の戦いでも偶に使われる戦術だし、マサルは「日本で戦国時代の歴史を学んだことがある」と言っていたから、たぶん知っているだろう。
読んでくださり、ありがとうございます!
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)