570話 副作用を武器に変えて
〜マサルside〜
邪神から81期候補生に届いた指令は、実に単純なものだった。
「元から強かった者、より多くの支援やアドバイスを受けた者が勝つ。世知辛いが、俺にとっては好都合だぜ」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
これより10時間後に、其方等のダンジョンの入り口を試練会場と繋げる。
そこで生存者が50名になるまでバトルロイヤルをおこない、勝者を魔王として認定する。
武器や資金の持ち込みに制限はない。
ただしモンスターに関しては、後ろ盾の魔王から借り受けることを禁じ、己の支配下にいる者に限定する。
誰とも戦わず、ライバルが死に試練が終わるまで引きこもるのも自由だが、敵のコアを一つも壊せなかった落ちこぼれには、転生特典のギフトを付与しないので、そのつもりで動け。
また勝負が長引きすぎてもいけないので、30日経っても決着がつかない場合、壊したコアの数が多い者から順番に魔王として採用し……
あぶれた者は、全員そこで餓死するまで放置する。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
俺のメインコアは、俺自身の魂に取り込まれているため、普通にダンジョンを攻略してもそこにゴールはない。
基本的に、ダンジョン外へコアを出すのは御法度だが、魔王や眷属の体内は"ダンジョン扱い"になるので、俺はコアを自由に持ち出せるのだ。
だけどライバルの魔王候補者達はそれを知らないから、俺のコアがある……と思い込んで、<誠のダンジョン>を攻めるわけ。
そして、鬼畜な先輩方が考えたエゲツない仕掛けに引っかかり、このバトルロイヤルから脱落するハメになるだろう。
それに加えて、俺は元々ギフトを持っておりリソースの枠も埋まっているため、邪神の脅しが通用しない。
勇者としてこの世界にやってきたとき、俺には勇者スキルセットに加えて、メモリをほぼ全て食い潰す<スキル図鑑>というチート能力が与えられたからだ。
そこまで難しくない条件を満たせば、際限なく他者の能力をコピーできるとか……チートもいいところだもんなぁ。
その代償として、すでに俺自身の魂のメモリはほぼ残っておらず、たとえ「ギフトを選ぶ権利」を得たとしても、ショボイ代物しか取得できないだろう。
裏を返せば、最初からソコには期待しなくてもいいから、それを「抜くぞ!」と脅されたところで、なんとも思わないってわけ。
もちろん簡易なギフトでも、無いよりはあった方が便利なので、貰えるならありがたく頂くが。
あと……
「マサル君。10時間後に始まる試練だけど、"当然"<嫌悪貯金>を発動させたままで行くよね?」
「はい、モンティート先輩。ソウサセテイタダキマス。(グスッ。たしかに無双できるけど、臭TUEEEEってなんか違う気がする)」
俺と融合しているコアの安全性だけど、存在自体が汚物と化した俺に触れたい奴……いるか?
ライバルの魔王候補者はもとより、モンスターだって人間より遥かに嗅覚が鋭いわけで……。
ゴーレムとかアンデッド系の奴以外、良いコンディションで俺と戦える敵はいないだろう。
そしてゴーレム程度じゃ俺は殺せないし、アンデッドなんて元勇者の俺にとっちゃ、"飯のタネ"でしかない。
軽く聖魔法を当てて浄化するだけで、肉体が勝手に消えて素材をドロップする"財布モンスター"だし、来るなら諸手を挙げて歓迎するよ。
「マサル様。メグミ様から、支援物資を預かって参りました。銃器はあくまでも"貸し出す"だけだそうですが、全て壊れても気にしない……とのことです」
「分かった。これは……あぁ、なるほど。使い方は分かるから、後はコッチで上手くやるよ。メグミに礼を言っておいてくれ」
「かしこまりました」
ただでさえチートな状況に、メグミが更なるチート物資を提供してくれた。
そう……ライフル・手榴弾といった、俺が元いた世界で使われていた、MPやポイントを消費せずぶっ放せる武器だ。
"貸し出し"って事は、終わったら耳を揃えて返さなきゃいけないので、バトル中に敵に取られると困るわけだけど、それ以外ならどーなっても自由。
つまり「トップの俺が"攻め"にまわることで、ダンジョン内に司令塔がおらず守りが薄くなってしまうウチの欠点を、これでカバーしろ」という意図だろう。
「ちなみに、メグミはどうしている? 無事か?」
「はい。ですが……サーシャ様とのひと時を楽しまれておりますので、申し訳ないのですが、試練が始まるまでに帰還するのは難しいかと」
なるほど。
"ニオイ"を"フェロモン"扱いされて、ベッドの中で大運動会をしている最中なのね……聞いた俺がバカだったよ。
とりあえず、提供してもらった物資は余すことなく全て使おう!
あのモテ男の奢りだ、遠慮することはない!
そして大差ないニオイなのに、ゴーレムとオートマタしか近寄ってきてくれない俺は……試練で周りを巻きこんで、ボロ儲け&ストレス発散するんだ!
読んでくださり、ありがとうございます!
この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)
モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!
作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)