564話 ダンジョンについて学ぼう
〜マサルside〜
さすがに79期チームが可哀想なので、こっそり「パワハラだぞ」と教えてやると、メグミさん……いや、「タメ口で」って言われたんだった。
メグミは目をパチクリさせ、「あぁ、この二人はリアクションをとるのが趣味なだけだから」と、笑顔で言い切った。
「なるほど。<恵のダンジョン>で、数多の人間を恐怖のドン底に突き落としてきただけある。これがナチュラル魔王気質ってやつか」
「いや、何で!?」
俺も81期として加わったら、彼の餌食になると思うと地味に怖いが、隣で微笑んでいるサーシャさんには加害していないっぽいし、諦めよう。
スティーブとカルマも、五体満足でここまで生き残ったことを考えれば、魔王界の価値観では「まだマシ」なのかもしれねぇし。
「ふふっ。二人でコントをしているところ悪いけど、勘違いがあると困るから、魔王界のルールについては僕が教えるよ。<小鬼>の皆も一緒に聞いてくれる?」
「「「「はい!」」」」
「うっス! モンティート先輩、よろしくお願いします!」
「うん。マサル君の体育会系ノリ、いいと思うよ♪」
せっかくだから、基礎が微妙なスティーブ&カルマも一緒に学ぶということで、「<小鬼>同盟4名+俺」で先輩の講義を聴かせてもらった。
「〜〜〜〜〜〜。つまりダンジョンには、必ずコアと繋がるルートを用意しなきゃいけないんだ。そして、そのルートは"人間が通れるサイズ"以上って縛りなの」
「ふむふむ。つまりダンジョンって、最初から"人間を迎え入れる目的"で創られているんですね」
「そうだよ。今代の邪神がこの世界の管理者となり、ダンジョン型の魔王を生み出すまでは、不定期に魔王が生まれ、魔族を率いて人間を襲う構図だった」
「「「「「へぇ〜〜〜」」」」」
その魔王を倒す役割だった勇者の俺が、魔王の歴史を知らないのは情けないけど、勘弁してくれ。
教会では、スキルや魔王の弱点についてしか学ばなかったし、勇者をやっていた頃の俺は調子に乗っていて、「自主学習する」という概念がなかったんだ。
「ダンジョンの創り方についてだけど、最初に"ダンジョンの本体"はコアである事を覚えておいて! そのコアをより安全にするのが、一般的だよ」
「分かりました」
「部屋を増やすときの考え方は、新しいブロックを生み出してくっ付けるのが基本。消したり、複雑な形にもできるけど、別料金がかかるから普通はやらない」
「ふむふむ」
「で、階層毎に設置できるブロックの数が決まっているから、部屋をある程度増築したら、新たな階層を創らないといけない。だけど、この費用はバカ高いの」
「あぁ〜、邪神のボッタクリポイントなんですね」
「そうそう。だから魔王は基本的に、どのフロアも最大限ブロックを使うから、実は"各階のブロック数は同じ"である事が多いんだよ」
マジか、全然意識していなかった。
つまりコレを知っていたら、「ブロック数が足りない」って理由で隠し部屋を看破できたり、罠に気付けたんだ!
どうりで対魔王に特化して戦い抜いた俺より、ベテラン魔王の方が、あっさり他所のダンジョンを潰せたわけだよ。
基盤となる知識に差があるんだから、俺が無知で色々見過ごしている間に奴等はスルスルと進み、最低限の労力でダンジョンコアを見つけられる。
ズルイ!
けど、無知すぎた俺が悪いんで何一つ文句言えねぇ。
「ちなみに、この法則を逆手にとった魔王もいる。例えば僕ね。僕が治める<欲望のダンジョン>は、基本"上限数-1"しか格フロアのブロックを使っていない」
「えっ、そうなんですか!?」
「うん。元々は限界ギリギリまでブロックを創っていたんだけど、階層が増えてその上限数がどんどん伸びていき、ついに余っちゃったの」
「あぁ〜、なるほどです」
最大数までブロックを使わない……これを表面的に捉えると「愚か」だが、実は恐ろしいよな。
任意の階層だけブロック数を1増やして、「コアルームへ繋がる秘密の道」を造り、隠し扉かなんかで隠しておけば、最奥へ辿り着くのは不可能に近い。
必殺のトラップを仕込んで、ライバル魔王や勇者クラスの敵を殺す際も、「もし原則を知られていたところで、かえってその知識が足を引っ張り〜」となる。
そもそも<欲望のダンジョン>は、中盤の攻略マップすら出回っていないトップダンジョンだから、元々高い難易度がヘルモードになっただけだが。
「ちなみに、<恵のダンジョン>は?」
「僕はまだ若手でブロック数に余裕がないから、オーソドックスな構造だよ。正規ルートで糞尿にまみれてもらった方が、敵の士気も挫けるし」
「あっ、うん……なるほど。そうだよな、メグミはそういう奴だよな」
「ん?」
ブロック数に余裕がないからといって、一概に「雑魚ダンジョン」とナメちゃいけない例だ。
"侵入者の心を折る"という指標では、間違いなく<恵のダンジョン>が魔王界トップだもん。
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)