560話 後輩探しミッション
経緯の是非はともかく、次回上納分のリソースを確保し終えた邪神にとって、次にやらなければならないのは、81期魔王の補充。
なにせ自然淘汰で80期の数が激減したうえ、彼がミッションのペナルティーでダンジョンコアを傷つけすぎて、滅んだ魔王が多すぎたからだ。
邪神にとって、拝するべき己の像を小便の的にした魔王達は、今すぐ拷問死させて魂ごと滅ぼしたいほど不快な相手だが……
上納&生活用のリソースを稼いでくれる駒でもあるため、欲望のままに減らしすぎると、彼自身の首を締めるハメになり困る。
ゆえに鞭で緊張感を与えつつも、適度に補充して、自分がリソース不足で詰まぬよう立ち回らなければならない。
「だが、81期の転生リソースを払うのは……ちと財布が心許ないな。邪神像に向けられるゴミ共の邪悪な思念が、リソースとして上がってきたとはいえ……」
彼にとって、己の尊厳と引き換えに稼ぐ現在のあり方は、望むものじゃないので、いずれ方向転換する気満々であり、その財源頼みで動くつもりもない。
よって81期の転生リソースは、どうにか自分の財布が傷まない方法で新たに確保し、結果だけ貰い受けホクホク……という都合がいい事を考えているのだ。
実は他所の世界でも、似たような試みは過去に行われており、その結果「魔王の不満が溜まってクーデター→担当神失脚」という惨事になったのだが……
感覚派で、他者の失敗談など全スルーの邪神はその事を知らず、3日間真剣に考えた末、新たな鬼畜ミッションを発動した。
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期間限定ミッション:81期の魔王をスカウトせよ
魔王界の弛みによって、また新たな魔王の補充が必要になってしまったが、前回の補充からそこまで日が経っていないゆえ、候補者を見繕えていない。
よって其方達に、新たに転生する魔王を選ぶ権利を与えてやる。
本来なら、神である我の一存で決めるところを、譲歩してやるのだ……感謝しろ!
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〜ルール〜
その1:見込みのある人間または知能をもつモンスターを、魔王候補者としてスカウトし、己のポイントで強化せよ。
何人育成してもよいが、試練を乗り越えた者しか正式な魔王にはなれないため、質も意識するように。
その2:魔王候補者は、1ヶ月後におこなわれる試練でふるいにかけられ、最大50名が正式な魔王として登録される。
その3:登録された者には、褒美として特性に合ったギフトを一つ与えてやる。
育成した魔王にも口出しする権利はあるが、最終判断はそのルーキーがおこなうゆえ、嫌われたくなければ私物化するな。
その4:試練を突破した魔王を育成した者には、その功績に応じて豪華報酬が与えられる。
ただし、一人も試練を突破させる事が出来なかった者には、次回ミッションまで額に「無能」の文字が浮かぶ、屈辱的なペナルティーを課す!
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そして、このミッションを見たメグミ達の反応はというと……
「いや邪神。それ、お前が81期の転生費用を払いたくなくて、負担を現場に押し付けただけじゃん。お前こそ、額に"ケチ"って文字を彫れよ!」
と、散々だった。
自分の生き残りだけでも必死な魔王が多いなか、「右も左も分からないルーキーをスカウトして自腹で育て、かつ1ヶ月で使えるようにしろ」なんて……
現場のことを何も分かっていない、ボンクラ上司そのものなので、不満が出るのも当然だ。
魔王掲示板では、はやくも下位魔王達による「100人くらいでチームを組んで1人のルーキーを育成しないか?」という談合がおこなわれ……
実力で試練を突破するのではなく、ルーキーの人数が採用上限に満たず、試練を甘々にせざるを得ないよう誘導する方向で、話が進んでいく。
しかし中には、人望の無さで痛い目に遭ったホイッスネルのように、「駒がないなら作ればいい」の精神で、ルーキーを量産しようと考える者も。
金欠で悲鳴をあげている下位層はともかく、邪神像ミッションで稼いで財政を立て直した上位層にとっては、ルーキーの量産くらいわけないのだ。
そうして各自が「財布事情と将来への投資」を天秤にかけ、己の最適解へ向けて動き出すなか、メグミ達はまだ悩んでいた。
「無能」ペナルティーはどうでもいいが、候補すら育てないのも何か負けた気がする。
しかし、一般的な上位魔王と違ってルーキーを奴隷化する気のない彼等にとって、育成は「コストがかかって見返りのない損な仕事」であり……
また誰をスカウトすればいいかも分からず、議論が暗礁に乗り上げたのだ。
「困ったなぁ。ルーキーが僕達と連んでいたら、邪神との戦いに巻き込まれて詰むじゃん。かと言って、試練後に放流するのもダメですよね?」
「そりゃあダメだよ。即、他の魔王に下僕化されて、僕等の育成ノウハウごと奪われちゃうし。育てるなら、ちゃんと一人前になるまで面倒を見てあげないと」
仲間思いな性格が、ミッション達成を阻む壁になるなんて……皮肉な話である。
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)