559話 デスマッチの勝者
人間界を巻き込んだ一大ブームを作り出し、休むことなく「視線ポイント」をゲットし続ける、メグミ達はもとより……
ドベ争いから抜けるべく、彼等の行動をパクって同じように邪神像を売り出した、ある程度拡散力のある魔王も、着々とポイントを積み上げていく。
配下のモンスターを都市に送りこむ体力も、邪神像を爆買いする予算もない、お財布スッカラピンの魔王達は……
鑑定されなければバレない人間そっくりの容姿を利用して、自ら行商籠を背負って都市に潜りこみ、路上でコツコツ邪神像の転売をおこなった。
<−−− ブーーーーーーッッ!! −−−>
そして参加者のほとんどが転売益等で儲け、邪神にざまぁ出来てホクホクのイベントが終わりを告げる。
残念ながら、後がないホイッスネルにダンジョンを占拠され、生贄としてミッション期間中ずっと昏倒させられた、哀れな魔王数名は……
ダンジョンコアにヒビを入れられ、「足りない信仰心を補う」という名目で、「"邪神の自書伝"写経の刑」に処されてしまう。
その事実は瞬く間に魔王掲示板で広がり、「そんな悍ましいものを……」と魔王達を卒倒させたが……
勝者は勝者で、邪魔極まりない巨大な置物を貰ってしまい、迷惑していた。
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〜ミッション最終結果〜
1位:メグミ
2位:サーシャ
3位:モンティート
4位:ゴーブル
5位:ナーティー
6位:ルノーブル
7位:アスタリア
8位:スティーブ
9位:カルマ
10位:ルトリッチ
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「最悪! こんな巨大なオリハルコン像、どうやって炉に投げこむんだよ〜」
若さと根性で誰よりも多く購入ボタンをクリックして、1位になってしまったメグミには、高さ10m超えの巨大像が贈られた。
貴金属としての価値は高いが、メグミが所有する炉には入らず、インゴット化するには「最上級の巨大炉」を課金購入しなければならない、嫌なサイズだ。
「メグミ君の白金像は、砂龍に食べさせればいいでしょう。それより、僕の方が問題だよ。同じサイズの黄金像……溶かせないし、見た目も品がなくてキモい」
1位のメグミ・2位のサーシャは、オリハルコン・ミスリルと「使える金属」の像をもらえたが、3位のモンティートにはギラギラ輝く黄金像が贈られた。
こちらも金銭的価値は高いのだが、大きすぎて溶かせないし転売しようにも運ぶのすら一苦労。
おまけに、モンティートに対する嫌がらせで「破壊不可」の属性まで付与されており、邪魔な置物にしかならない状態だ。
「御愁傷様です。たしかマサルが、そういう特殊属性の移し替えみたいな事を、出来ると言っていたので……あとで武器に移し替えてから壊しましょう」
「グスッ。お願い」
本来、喜ばれるはずの「上位への褒賞」は、「邪魔な置物をどう処理するか」の考案大会になってしまい、ブツは適宜処理されて3日で消え去った。
なお……11位〜30位の魔王には、邪神像ではなく「邪神のありがたい教えを記した経典」が贈られており、そちらは売ることも出来ないため……
「呪いの書」として魔王掲示板で晒され、一部魔王達の間で「ダンジョンの入り口のこの経典を置く」嫌がらせが流行ることになる。
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選んだ物がクソすぎるものの、予算自体はしっかりとって報酬を渡した邪神は、久々に潤ったリソースメーターを見てため息をついた。
「たしかに儲かった。次回の上納は、最低ラインの3倍以上払うことができる。それに運営費用も確保できた。だが、何故だ? 大事なモノを失った気がする」
邪神像越しとはいえ、世界中のトイレに設置されて小便をかけられ続け、像の破壊を娯楽扱いされた邪神は、ミッション期間中にナニカを失った。
今まで部下の魔王を駒扱いして、常に「命令する側」にいた彼にとって、この仕打ちは心に消えない傷を負わせたのである。
「褒賞で渡した邪神像すら、速攻で別の物に作り変えられて、"金属の塊"としてしか見られなかったし」
散々理不尽な目に遭わされてきた魔王達がこの発言を聞けば、「そりゃあそうだろう。自業自得」と言うに決まっている。
だが、ついこの間「自分が嫌われている」ことに気づき、まだ現実を受け止めきれていなかった邪神には、効いたのだ。
そして潤った財布とは裏腹に、木枯らしがふく心を慰めたくなった邪神は、一人で温泉に浸かって次のミッションを考え始めた。
次こそは、稼ぎつつ……かつ、以前のミッションのように気持ちよく終えられるものを、魔王達へぶち当てて……
これ以上、ナメられないようにするために。
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)