表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

558/931

558話 誰が一番、邪神をコケにできるか




 メグミ達の動きは素早く、勝っても負けても不快な理不尽ミッションで、初日からランキングを独占した。


 しかし他の魔王達も、ここ最近のミッションの動向から学んでおり、すぐにメグミ達のマネをして、邪神をコケにしたイベントを主催して……


 人間からの視線確保に努め、着実にポイントを伸ばしていく。



 ある者は、巨大邪神像の股の部分に的を設置して、そこに岩を当て強さないと次のフロアへ進めないよう、細工をし……


 またある者は、床に撒かれた毒を避けたい冒険者用に、底に邪神像をくっ付けて高下駄を履かせた、特殊な靴を売りつけたり。



 酷い者になると、邪神像を溶解炉に投げこむストレス解消イベントを開いて、原価300ロルのミニ銅像を1000ロルで転売し、爆儲けするなど……


 モラルをかなぐり捨ててミッションに望んでおり、邪神が望んだ方法で布教している魔王は、誰一人いないといった状況だ。



 しかし……メグミが発案した、邪神像を小便で狙う的にする案は、誰でも簡単に再現可能で快感を享受できることから、人間社会で大ヒットし……


 わざわざ一から邪神像を作る職人が現れるほど、皆がミニ邪神像を買い求めて、供給不足に陥った。



「はい。マスターから送られてきた邪神像です。偽金をつかまされぬ様、慎重に販売してきてください」


「「「「「かしこまりました。(これだけですか? 全然足りないんだけど……)」」」」」



 そのためメグミ達が溜まり場にしている<水城のダンジョン>では、腱鞘炎になりながら購入ボタンを連続タップする、魔王7名の姿があり……


 ボタンの押しすぎで手が熱をもち腫れあがっており、大変痛々しい有り様となっている。






「皆、キツかったら回復魔法をかけるから言ってね。痛てっ」


「ん、大丈夫! こういうのは、狙えるときに全力で狙わないと後から後悔するし、腱鞘炎くらいどーって事ないもん」



 内心、「"買うのは魔王限定"とかいう、しょうもない制限を付けているんじゃねぇよ。というか、1000個一気に買える"まとめ買いボタン"も作れ!」と愚痴りつつ……


 このチャンスを逃すまいと、昨日から徹夜でボタンを押し続け、限界で倒れたメンバーに回復魔法もかけているメグミは、目の下に分厚いクマができている。



 だが元庶民で根性が据わった彼は、目が充血して霞んでも目薬で誤魔化し、「24時間働けます!」を合言葉にして、購入ボタンを押し続けた。


「(大丈夫、深く考える必要はない。このボタンを押せば押すだけ、転売の利鞘で儲かるし、ミッションのポイントも貯まって無双できるんだ!)」



 もちろん彼は、ミッション報酬の邪神像が欲しくてこんなに頑張っている訳ではない。


 ミッションで少しでも良い成績を残して、安全に金策できる時間を稼ぎ、邪神の魔の手から自分および大切な仲間を守ろうと、必死なのだ。



 その熱意は他のメンバーにも伝わり、ただボタンを押して課金し続ける、クソみたいな作業を何十時間もこなすデスマーチは……


 今のところ、誰一人「心が折れてリタイアする者」が現れない状態で、続いている。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




 そして彼等の頑張りは、儲けだけでなく購入者の使用報告で報われ、世界中のトイレに怒涛の早さで「ミニ邪神像」が設置されていった。


 なお、同僚もいる集会で上司神に失態を咎められて後がない邪神も、ミッションの経過は観察しており、魔王達の不敬も重々承知している。



 じゃあ何故、邪神はいつものテンションでお気持ち表明しないのか?


 その理由は大きく分けて二つあり、第一に、不敬じゃない魔王が一人もいないため、吊しあげて晒し者にする叱り方ができないから。


 典型例な「赤信号。皆で渡れば怖くない」理論だが、実際にやられると、咎めるに咎められないのである。



 そして二つ目……これが最大の理由なのだが、不快極まりないものの、現在の状況は邪神の立場から見ても"儲かる"のだ。


 怒涛の早さで世界中 (のトイレ)に普及していく邪神像は、ほぼ全て邪神が利益を乗せた上で独占販売している物で、売れれば売れるほど稼げる。



 また溶解炉に入れてインゴット化した銅を、下取りに出して新たな邪神像の購入資金にする際、下取りの手数料も取れるし……


 人間が邪神像に向ける負の感情は、邪神にとって美味しいリソースの源になるので、次回の上納額を増やしたい邪神にとっては垂涎モノだ。



 ただ……いくら稼げても、気持ち悪いしムカつく事に変わりはない。


 一度、彼の立場に立って考えてみてほしい。



 下等生物と蔑んでいる人間に、日夜小便をかけられ続け、自分の分身である邪神像をゲーム感覚でボコられるのだ。


 まっとうな感性を持った者なら、これがどれだけの苦痛を伴うか、理解できるだろう。



 もっとも……世間からこれ程までに嫌われる言動を、これまでしてきたのは邪神自身であり、自業自得でしかないので……


 "痛み"を理解したうえで邪神像を弄んでいる、メグミ達が「悪」とも言えないのだが。

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!

作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
邪神様、まさかの復活
初感想 やべえ ツボっちまいました 不覚にも大笑いwwww
もうゴーレムに魔王の手を動かせるとかしないときついほどの需要がw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ