553話 鬼畜をよく知る者
〜カルマside〜
いつも通りのほのぼの感を出しつつも、背後にダークなオーラを纏わせて、同じ部屋でメール会議をしていた先輩方は……
何が決まったのか分からないが、突然「お金を稼ぐぞ」と言い始め、飢饉で苦しむピピラッカ地方の領主と裏取引して、幾つもの鉱山の採掘権を得た。
その対価として、<農民>同盟が貯めこんでいだ穀物を渡すことになったみたいだけど、ウチの戦力で採掘をおこなうんだぞ!?
絶対、全ての鉱山が廃坑になるまで掘り尽くされて、その土地の領主は後で悲鳴をあげると思う。
穀物の交換レート自体は安いのに、インゴットじゃなくて「採掘権を期間限定で借り受ける」という一文があるせいで、マフィアっぽさ増し増しだよ。
「(そして、ブツのやり取りは僕の担当か〜)」
当然のことだが、権利だけ借り受けても採掘作業をしなければ金は稼げない。
また対価の穀物を受け渡すのも、嵩高すぎて運搬が大変なので、僕の<コマンダー>ギフトとマジックバッグの掛け合わせで、ある程度ゴリ押しするのだ。
ゆえに僕は、ギフトの発動条件である地点登録をおこなうために、<不死のダンジョン>から現場へ向かったのだが……
<−−− ドドドドドドドドドドド〜〜〜ッッ!! −−−>
「(あぁ、下半身よ。サヨウナラ……)」
ボーンドラゴンが動くたびに硬い骨が突き刺さり、青痣を超えて神経も骨も逝ってしまった、僕の下半身は……
優秀なスライム達が、足首をボーンドラゴンの背骨と接着したせいで、未だ転げ落ちることもできず、ボーンドラゴンと繋がり破壊され続けている。
「安心シロ。オ前ガ仕事シテ人材ガ揃ッタラ、メグミ君モ自販機ヲ設置シニ来テクレル。一人ジャナイ」
「そっ、そうですか……。それは心強いなぁ〜。(つまりメグミ先輩も、この下半身破壊拷問をくらう訳ですね。ご愁傷様です)」
しかし鬼畜ミッション発令中でもないのに、なぜ先輩達は急に「金を稼げ」なんて命じたのだろう?
軽い口調とは裏腹に目が全然笑ってなかったし、メール会議に参加していなかったサーシャ先輩も、質問一つせず指示に従っていたから……
きっと僕等じゃ解決できないレベルの問題があって、とり急ぎ資金を集めないと本格的にヤバイんだろうけど。
「着イタゾ」
「ありがとうございます! (運んでくれたのは助かるけど、下半身だけじゃなくて、衝撃を逃せなくなった背骨も逝きました。動けません! 助けて!)」
いつまでもボーンドラゴンの背中から降りない僕を見て、ルノーブル先輩配下のレイスが、スッと体内に入ってきて僕の肉体を乗っ取り……
動かない骨を強制的に動かして、落とす形でボーンドラゴンから降ろし、<コマンダー>の地点登録が必要な場所まで運んでくれた。
でもさぁ〜……なんか骨がバキバキいっていて、自分の身体ながら怖いんだけど、これ……ちゃんと治るんだよね?
この前「下半身死んだ」と言っていたメグミ先輩も、ちゃんと生還していたし、ちょっと先輩方の鬼畜が過ぎるだけだよね!?
<−−− ヴーーーーンッ −−−>
「OK。設置完了! あとは、穀物入りマジックバッグを持った個体をコチラへ呼んで……これで、言われたミッションは達成だ!」
幸いなことに、現場指揮官を任されていたルノーブル先輩の眷属様が、生きながらにしてアンデッドになりかけた、僕を見つけて一報入れてくれ……
僕は治療と言う名の「力尽くで、ズレた骨を元の場所に戻す拷問」と、高級ポーションで歩ける状態まで回復し、役目を終えることができた。
ただ、その過程で聞いたんだけど……先輩方も似たような移動手段を用いているのに、なぜお前だけこんなに壊れるのか不思議……だってさ。
すみません。
貴方達の主人と僕じゃスペックが違いすぎて、もはや同じ種族とは思えないほど頑丈さに差があるんです。
あと……メグミ先輩も僕程じゃないにしろ壊れるので、僕等の強度が一般的なんですよ!?
だから「帰りも同じ運搬方法で大丈夫? 他に、何も用意していないの」とか聞かないで、泣いちゃうから!
そんな僕の抵抗も虚しく、現場での仕事が終わりホッとしたタイミングで、同じように白目をむいたメグミ先輩がボーンドラゴンに運ばれてきて……
そのボーンドラゴンから、「俺ガ、帰リノオ前ヲ運ブ。頑丈ダカラ安心シロ」という、ありがたくて涙が出るお言葉をいただいた。
「メグミ先輩。放心タイム中に申し訳ないんですけど、一つだけ確認させてください。ウチの先輩方って、他の魔王に比べると優しい……んですよね?」
「…………」
あぁ、ヨダレを垂らした状態で気絶してしまった。
回復魔法の使い手ゆえ、下半身が「骨ガン見え状態」になっていないのは流石だが、メンタルの回復には暫くかかりそうだ。
「ん? アスタリア先輩からメールだ。なになに……。メグミ君が死んじゃったら、サーシャちゃんのグラビア写真をおでこに貼って、癒してあげてね……か」
そういえば、メグミ先輩専用の「回復札」なるものを渡されていたな。
僕が見たら鉄拳制裁で頭が弾けそうだし、裏向きに貼って写真とチューできる状態にしておき、エロス効果に期待しよう。
読んでくださり、ありがとうございます!
この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)