548話 影の英雄になりたくて
〜メグミside〜
仲間の助けがなかったら、自分が実質2位となり「死亡リーチの刑」をくらっていたと知り、さらに凹んで涙目になったモンティート先輩は無視して……
僕等は、ルノーブル先輩の武勇伝と、それに途中で気づいてサポートしたアスタリア先輩の話を聴かせてもらった。
「そこの爺は悠長に寝ていたけど、あれだけホイッスネルの魔王ランキングが落ちていたら、廃課金したのくらい想像がつくでしょう。だから動いたのよ」
抜け目なく気づいて対策した、アスタリア先輩も流石だが……
陰でコッソリ「2位争いをしていた連中」を罠に嵌めて、相対的にモンティート先輩を有利にした、ルノーブル先輩のカッコ良さよ。
つい先日読んだ小説に出てきた、忍者みたい。
味方にも悟られることなく裏で静かに動き、スマートに成果を出す様は、そういうのに向かず糞便攻撃ばかりになる、僕の厨二心をうずかせる。
「そのルノーブルがね〜、また魂だけ逃げ出したブブカの後始末もつけてくれたから、それの報告を送ってきたの。あと、協力者への供養要請ね」
「供養っスか?」
詳しく聞いてみたところ……カルマ君のダンジョンを襲うときに、素性を隠すために傀儡にされ、いつの間にか散った80期のマルセラ嬢。
その双子の妹が、今回ブブカに報復するために先輩方と協力して、「肉体を乗っ取ろうとしてきたブブカ」を道連れに死んだらしい。
姉のマルセラは、ガルガロク・ロルカナ・トキナチームの元傘下で、後ろ盾がなくなりブブカに潰されただけだから、特に同情しないけど……
姉の落とし前をつけるために自ら命を捨てたマジェカは、素直に立派だと思う。
正直言って……苦肉の策で先輩方と手を組んだだけで、本当は姉の死に関わった僕等にも思うところあるだろうし、死後に僕が称えたところで迷惑なだけ。
それは理解しているけど、筋を通して逝った相手に対する敬意は抱いてしまうし、彼女が最期に望んだことならある程度は叶えてあげたい。
「ふふふっ。メグミ君がそう思うなら、マジェカの配下だったモンスターを一部もらってあげて。さすがに、ルノーブルの配下じゃ……ねぇ」
「え〜っと、まぁ……ソウデスネ」
なるほど。
マジェカの最期の願いは、「自分の配下の存命と安全の保証」だったのか。
僕も死の間際に一つだけ願いが叶うなら、僕に好意をもってくれた相手の存命と幸せを望むだろうし、気持ちは痛いほど理解できる。
「サーシャ、いいか?」
「もちろん! アスタリア先輩。ウチは彼女と同じ風属性ダンジョンで相性もいいし、メグミ君より多く受け入れます!」
「そうか。承知した」
サーシャも僕と同じように感銘を受けたようで、自らアスタリア先輩に申し出て、ルノーブル先輩の所にいるマジェカ配下を回してもらうよう約束した。
あの先輩のダンジョンは、アンデッドが支配する空間ゆえどうしても空気が澱み、風属性モンスターの生存には適さないので……
マジェカが残した子達を預かりたくても、多くは預かれないし、モンスター達にとっても辛いはず。
それなら直接の契約者ではないが、比較的心地よい環境を提供できる僕等のダンジョンで引き受けるのが、双方にとって良いだろう。
「あ……あのさぁ、アスタリアぁ……。もう長話は終わったよね? 脚が痺れて壊れちゃいそうだから、そろそろ解放して欲しいんだけど」
「あぁ、まだ余裕があるんですね。失礼。先輩の頑丈さを見誤っていました」
「うげっ!?」
長時間の正座で限界を迎えて、掠れるような声をあげたモンティート先輩に対して、膝に「反省中」と書かれたコンクリートブロックを乗せた……
鬼畜<アスタリア先輩>を見ていると、感傷に浸っていた心が一発で干上がってしまったので、もう少し何というか……見えない所で処して欲しかったが。
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モンティートが、アスタリアの手によって「コンクリートブロック何個積めるかチャレンジ」に強制参加させられ、絶叫している頃……
邪神もまた、彼の上司の神殿に呼び出されて皆の前で叱責され、肉体を石に変えられてハンマーでかち割られていた。
<−−− バキイィィィィッ!!!! バラバラバラバラ…… −−−>
「ぐうぅぅぅっっ!!」
「おぉ〜、右手の指が4本飛んだわね〜。貴方、なかなか力があるじゃないの。この石男がまた醜態をさらしたら、貴方とポジションチェンジしましょうか」
「…………!! 闇神様、是非お願いいたします!」
邪神とて神ゆえ、多少四肢を削られた程度ならすぐ再生するし、死ぬこともないのだが……
後輩の神もいるなかで晒し者になり、逆らえない状況で殴られて苦悶の表情を見られるのは、尊厳破壊以外のなにものでもない。
どうして、このような事態になったのか?
それは邪神の上納したリソースが、闇神派閥の中で最も少なく、その詰問のために呼び出されたところで、ここ最近の失態を知られてしまったからだ。
彼等は、「魔王が可哀想だから〜」みたいな心優しい理由で、邪神を責めているわけではない。
ただ単に、己のヘマで思うようにポイントを得られなかったばかりか、格下の魔王に好き勝手やられて逆に損をした、愚行の責任を問うているのだ。
「四肢だけじゃ足らんだろう。真ん中についている粗末なのも、100回ほどかち割るか。こんな愚者では使い道もないしのぉ。やれ」
<−−− バキイィィィィッ!!!! バラバラバラバラ…… −−−>
「ぬおぉぉぉぉぉ〜〜〜〜〜〜〜っっ!!!?」
意外と体育会系な神界隈のシバきを受けつつ、邪神はひたすら「自分をこんな目に遭わせた魔王達」を恨み、呪詛を垂れ流すのだった。
読んでくださり、ありがとうございます!
この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)