545話 事実上の2位争い
ルノーブルの予想どおり、彼配下の霊系モンスターが証拠捏造を終え、<瀬戸際のダンジョン>&<土壇場ダンジョン>を立ち去ってすぐ……
ホイッスネルの配下が2つのダンジョンを訪れ、「私財を投げ打って魔王<ガブリ>に票を入れろ」と魔王達に命令した。
しかし、すでにその行動は「ホイッスネル自身に票が入る」形で実行されており、それを知った彼の配下は驚愕。
すぐホイッスネルに知らせが入り、彼は「ガブリに先手を打たれた」と勘違いして憤る。
「あのサイコパス、他人の縄張りに手を出しやがって! この糞ミッションが終わったら、テメェのダンジョンを洞窟に戻すまで搾取してやるからな!!」
怒りのあまりホイッスネルは、魔王掲示板でもスレッドを立ててガブリを糾弾し、その卑怯さについて思いの丈を述べたが……
ホイッスネル自身が普段"搾取側"にいるため、自分がやられた時だけ被害者面をしても説得力がない。
案の定、魔王掲示板でも好意的な反応は得られず、かえってホイッスネル自身へのヘイトが集まってしまい……
冷えた空気感からそれを察した彼も、これ以上の被害拡大を防ぐために、糾弾コメントを消してオフラインでの戦いに切り替えた。
だが怒りのあまり余計な事をして、さらに票が集まるリスクを負ってしまった彼は、それをフォローするために廃課金を余儀なくされる。
「クソッ! 全員クタバレやぁ!!!!」
報復のためにガブリの傘下を襲うよう、近場にいる諜報班を動かしつつ、手持ちの資産を全て「ガブリへの投票券」に換えたホイッスネルは……
序列上位の魔王とは到底思えぬほど、スッカラカンになった私室で、売り払ったベッドの寝心地を思い出しながら、床で不貞寝したのだった。
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時を同じくして、ホイッスネルが自分を生贄にして難を逃れようとしている事に気付いた魔王<ガブリ>も、己の身を守るために動き出した。
普段仲良くしている訳ではない……なんなら騙し騙されの関係ではあるが、今回は利害が一致している中間順位8位のルチルッカに、同盟を打診したのだ。
そして彼から、「モンティートの指示に従い、自分とハラスメントはホイッスネルに票を集めている」と聞き、自分もそれに便乗する形で2位回避を目指す。
「何もやっていないのに掲示板で晒されたときは、"死ね。鼻くそ野郎"と思ったが……かえってラッキーだったな。お陰でアイツにヘイトが集まった」
支配している魔王からの救援要請で、ホイッスネルが自分のテリトリーに手を出してきたと知り、多少憤ったものの……
自分が守りに徹すればホイッスネルを生贄にできると、ほぼ確信したガブリは、要請に応えて眷属と上位モンスターを「襲撃を受けたダンジョン」へ派遣。
ホイッスネル配下を「防御側が圧倒的に有利なダンジョン攻防戦」で蹴散らし、ジワジワと彼の体力を削る。
そして……万が一の場合に備えて、幾許かの資産を投票無効券に換え、ある程度余裕を残しつつ保身に走るのだった。
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「モンティート先輩。後ろを向いて、コソコソ何をしているんですか?」
「ん? 問題ないとは思うけど、念のために……ね」
桁違いの財力があり順位も微妙なモンティートは、「自分が他の候補から集中砲火されて、2位になる可能性は低い」と考えていたが……
万一が起こってから慌てても遅いので、ミッション終了前に、念のため資産の移動を始めた。
まず保有している「予備のダンジョンコア」を、アスタリア・ナーティー・ゴーブル・ルノーブルに譲渡して、0に。
そして邪神からの嫌がらせに備えて、手持ちの現金資産もある程度4人に貸し出し、狙われた時のリスクを下げる。
そこまでは、理性的な彼らしい動きだが……
「(メグミ君、呑気にしているけど君も結構危ないんだよ。僕より若くて未来がある分、嫉妬されちゃうわけだし……。仕方ない、フォローしてあげるか)」
意外と過保護な面もあり、ヘソクリを使って投票無効権を103枚買い、気付かれぬようメグミに反映させた。
ただ、側で様子を見ていたアスタリアとナーティーにはバレており、速攻でゴーブル&ルノーブルにメールでチクられ、密談のネタになっている。
ちなみに……ルノーブルがモンティートを護る為に動いた事は、元巫女であるアスタリアにしか知られておらず、彼女も黙認したため……
当事者であるモンティートがそれを知るのは、ミッション終了後。
聖と闇が織りなす証拠隠蔽術は、魔王界トップの実力を以ってしても、疑ってかからないかぎり破れないのだ。
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このように、三者三様のやり方で、実質2位を回避するべく動いた上位陣。
果たして最終結果は…………。
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)