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534話 分かれた明暗




 粛々と債務者からポイントを回収し、返済できなかった場合は、魔王のスキル&ギフトとダンジョン内の設備を、丸ごと剥ぎ取るという……


 闇金も引くレベルの取り立てをおこない、無事回収率100%overを達成したメグミ達。


 正確に言うと、ポイントの回収率は4割程度だが……文字通り"身体払い"させた利益が大きいため、トータルするとプラスが出たのだ。



 スキル&ギフトに加えて、下位50名に入り死ぬことがほぼ確定している魔王に対しては、拠点に返す前に「カラダの中身」も死なない程度に抜き……


 腎臓・肝臓・眼球・四肢etc.……(下取り価格とはいえ)十分な売却益が即金で得られたのも、回収成功の要因である。



「今回、債務者から回収した能力のスクロールだけど、全部売却からの利益分配って形でいいよね? 正直、大した能力じゃなかったし」


「はい。欲しいと思うモノはなかったので、全部金に換えてくれると助かります」



 祝勝会で、果汁100%ジュースと高級抹茶を味わいながら、処理の方針について話すモンティートとメグミは、今日も無自覚鬼畜を爆発中。


 だが彼等にツッコミを入れる者は誰もおらず、無理やり引っぺがされた魔王の能力は、大金と引き換えに人間サイドへ流れることが決まった。






 メグミ達は、ミッション序盤でルールの穴に気付いてカタログギフトを鬼取りし、終盤の債権回収もキッチリ終えた。


 また彼等を真似た魔王達も、乗り遅れや回収失敗があるとはいえ、己の利益を最大化させるために各々奮闘したため……


 総合的に見て損した上位は、殆どいない。



 ボーダーラインに怯えながら金策に走った下位勢は、軒並み資産を失いさらに没落したが、元々の規模が小さいので影響は微小。


 つまり上位の得を埋めるほどの手数料を、邪神に貢ぐことは出来ておらず、ミッション期間中の邪神のポイント収支は……


 序盤のルール設定ミスによる損失が響いて、大赤字となった。



 それでも、ペナルティーでダンジョンコアにヒビを入れられ、3アウトで滅んだ魔王の資産を丸ごと回収すれば、多少なりとも補填はきくはずだったが……


 縋るような思いで滅んだ魔王の遺産を回収した、邪神の手元に来たのは、お小遣いと言っても差し支えない程度のポイントだった。



「なにっ!? どういう事だ?」


 邪神は、不思議がって原因を探り始めたが……こうなるのは当然である。



 なんせ、リソースを大量に回収できるはずのダンジョンは、メグミ達の債権回収で"ただの洞窟"にされてしまい、邪神の取り分など1ミリも残っていない。


 またダンジョン内の備品や魔王の個人資産も、全て差し押さえされて魔王達の手で処理されたため、同じくカスッカス状態。



 唯一、取ったら即死してしまうタイプの臓器だけ残った魔王本体から、リソースは回収できたが……


 全てのスキル&ギフトを奪われ、瀕死状態でピクピクしている廃人の肉体だ。


 そんな所から搾れるリソースもたかが知れており、回収に要する手間と時間を考えると、無視したくなるレベルの儲けである。






「あぁ〜! クソッ。また奴等の仕業か! 私が接収する予定だった"敗者の遺産"を奪い取り、散々儲けたポイント貸しの元本まで回収するとは!!」


 そして下界で何が起こったか理解し、ストレスで頭を掻きむしるが、搾る余地すらない"敗者の遺産"を水増すことはできないし、メグミ達を責めるのも不可。


 結局のところ……邪神にできるのは、他責思考で「自分を損させた魔王」を罵倒し、神殿の一角を壊して、修理費でさらに困窮することだけだった。



 そして、予想外の大赤字で視野が狭くなっている邪神の元へ、容赦なく「今月の上納額決定通知書」が届く。


「ケチりたい。こんな量のリソースを納めたら、ウチの経営は成り立たなくなって、数ヶ月で詰んでしまう。だが、ケチると目をつけられて降格……」



 幾度考えたところで、「何とかリソースを捻出して納める」以外の選択肢はなく、今から新ミッションを開催して儲ける時間も残されていなかったため……


 観念した邪神は、歯軋りしながら自分の私財をリソースに戻して、上納分を確保した。



「チクショウ! 次のミッションでは、絶対に"私腹を肥やしまくった上位陣"から、何もかも奪い取ってやるからな!」


 悪態をつくものの、そんな事をすれば敵(=人間勢力)の抑えがきかなくなり、己の勢力が滅んでしまうので……


 実行する事はできないと、邪神も頭では理解している。



 だがそれでも、彼が上納のために失った私物(お気に入りの服と杖)の存在は大きく、湯に浸かって気持ちを切り替えようとしても立ち直れない。


 それも、仕方ないことだろう。


 なんせ邪神は、今まで身を切る程の損を被ったことがなかったのだから。



「チクショウ……チクショウ…………」


 なぜ自分がそういう状況まで追い込まれたのか、反省して次に活かすでもなく、ただ凹み続けた邪神は、三日三晩メグミ達への呪詛を吐き続けたのだった。

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!

作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

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― 新着の感想 ―
[一言] ノルマ未達成の差額を自腹でまかなかったかぁ。 今までは意外と儲かってた? もしくは邪神界とメグミ達の世界とじゃ通貨格差が大きいのかな? 先進国の物価と発展途上国の物価じゃ雲泥の差があるみたい…
[一言] 主催者が暗側になってるの草
[気になる点] 人ならざる者、しかも魔王の臓器、移植者しなね?
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