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533話 バッティング




 切羽詰まって、後の事など考える余裕がなかった下位魔王の中には、メグミ達の真似をして「貸しポイント業」をおこなった上位魔王に……


 別口で借金を申し込み、さらにそのポイントをギャンブル運用して失敗し、返済不能になった(ある種の)猛者もいた。



 当然、メグミ達と同様に彼等にポイントを貸した上位魔王は、債権回収でバッティングする事になり、小競り合いも起きている。


「ほれ、この借用書の日付を見ろ。先に貸しているじゃろう。それに特記事項欄の、"他のどの負債よりも優先して返済する"の文字。回収の権利は儂等にあるのぉ」


「ふんっ、半強制的に結んだ契約書の文言など当てにならん! 全て……とは言わぬが、ココの半分はウチに回収させてもらいたい」



 こういう場合、実際に争ったら勝つ<農民>同盟の債権回収班が有利ではあるが、相手方も成果ナシじゃ帰れない。


 なんせ彼等にも主人たる魔王がおり、「債権回収できず丸損しました」では、メンツが立たないからだ。



「そうじゃのぉ〜。なら、設備をポイント化したうちの半分だけ回収させてやるわい。その代わり、人的資源はコッチのものじゃ」


 なのでメグミ達は、あらかじめ話し合って「こういう場合の妥協点」を用意しており、「モンスターの譲渡」や「魔王のステータス剥がし」を優先。


 代わりに金銭面では多少譲歩し、相手のメンツも立てつつ穏便に事を終わらせた。



 だが……そうは言っても、メグミ達とバッティングした相手は貸付額の半分も回収できていないため……


 貸し損した魔王の中には、逆恨みしてメグミ達に呪いをかけ、モンティートやアスタリアの自衛(という名の倍返し)によって泣きを見た者。


 また、怒りのあまり暴れ狂って自分の管理室をぶっ壊し、二次被害でさらに損した者もいる。






 しかしそういった争いや債務者の悲鳴が、魔王掲示板で他者に共有されることはない。


 損した債権者の上位魔王は、自らの失敗を告知したうえ<農民>同盟にケンカを売る……などという愚行を犯したくないゆえ、当然だろう。


 そして返済できなかった債務者の下位魔王は、もれなくサイコロの中でゲロと共に回っているため、掲示板に書き込む余裕などないのだ。



 なお……下位魔王に対する貸付金など、そこまで大きな金額ではないため、魔王のステータスを剥ぎ取るカタチで回収しているメグミ達は、損していない。


 もちろん"ポイント"という観点で見れば、100%回収できたわけではないのだが、剥ぎ取ったスキル&ギフトスクロールを売ることで、十分補えるのだ。



 メグミ達にとっては、「下位魔王の使い物にならないステータス」でも、人間社会では「金を払ってでも欲しい能力」なので……


 販売元を察知されず捌くのに時間はかかるものの、彼等に貸したポイントは、「身体払い」で全額返済可能なのである。



「ゲロに溺れて窒息死されると、ミッションのボーダーラインが変わって新たな犠牲者が出るから、サイコロの取り扱いには苦労しますけどね〜」


「ゲロどころか、下からも固体を漏らした"軟弱さん"もいるしね。僕等みたいに爺婆って訳でもないのに、根性足りてないよ」



 メグミ達も自称<農民>の爺婆も、「借りたポイントを返さない者」には容赦ない。


 搾り取れるだけ搾り取り、ミッションの期限ギリギリに「ただの洞窟となったダンジョン」に戻して、絶望的な最期を迎えさせている。






<−−− カチッ、カチッ、カチッ……ピーーーー −−−>


「ん。日付が変わった。ミッション終了だね」


「ですね。サイコロタイムでボーダー未満の魔王があまり足掻けなかった結果、最後のデッドヒートはほぼ無し……ですか」



 本来こういうミッションでは、痛烈なペナルティーを嫌がったボーダーライン付近の魔王達が、命懸けの追い込みをかけるものだが……


 今回は、返済不能におちいった債務者が期限ギリギリまでサイコロ内でゲロまみれになっていたため、その手の競争は起こらなかった。



 魔王掲示板には、ボーダーラインをクリアして難を逃れた、「誠実に借金返済した魔王達」の安堵コメントが書き込まれ……


 罵詈雑言を書き込みたいはずのサイコロ班は、吐き気と虚無感が癒える前に、邪神の手によってダンジョンコアにヒビを入れられ滅んでいく。



「邪神も、ご苦労さまだよね〜。ただの洞窟と一般人以下のステータスになった魔王から、リソースを回収するために、"ヒビ入れ"なんて面倒なタスクを……」


「あれ、多分かなりリソース食う操作でしょう。あんな搾りカスからじゃ、どう考えても回収できないのに……。ボス稼業も楽じゃないですね」



 そしてモンティートとメグミは、次々と魔王ランキングから消えていくサイコロ班の名前を見ながら、邪神の"さらなる損"に言及し……


 それを肴に皆で乾杯して、祝勝会を始めるのだった。

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!

作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

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― 新着の感想 ―
[一言] こんなことが続いたら邪神も上司から見切りを付けられそうだな…
[一言] 切羽詰まった邪神は、何をする? 特級カタログギフト、農民の皆さんはそれぞれ2桁、メグミとサーシャはそれぞれ一桁後半はいったかな?
[良い点] やったね邪神ちゃん、無能魔王がたくさん死んだからこれで新しい魔王を増やせるよ(白目) なお、自身の首もかなり怪しい模様。 というか、無能魔王と言ってもわずかながらでもポイント産出するから…
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