530話 排出率を渋くすると
メグミ達が制度の穴をついて、少ない手数料でカタログギフトガチャを回しまくり、皆でヒャッハーしていた頃……
彼等の動きに気づいた他の上位魔王も、ポイントを貸し付けたり回しまくって抽選券を獲得し、邪神の損失を広げ始めた。
しかし、安直に「ミッションで、命懸けの魔王共が足掻いて手数料が入れば、自分は働かずに丸儲け」と思っていた邪神は……
今なお、<十色の泉>より一段階上のアイテムである<百色の泉>で、<蠱毒の泉>を使ってジャグジーバスを作り、己の邪力に磨きをかけている。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜蠱毒の泉〜
百種の虫を集めて最後の一匹になるまで器の中で互いを喰らわせ、生き残った一匹を煮殺した湯が、冷えて流れてくる泉。
虫の怨念が水に沁みこみ、浸かるものを道連れにしようと噛みつく幻覚を見せるが、闇属性持ちにとっては皮肉にもそれが滋養強壮になってしまう。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ふぅ〜、気持ちいい。湯に沁みわたった負の感情が、我が心と肌を若々しく保ってくれる。一時はどうなるかと思ったが、ストレスの元も消えたし……」
<−−− ゴンゴンゴンゴンゴンッッッ!!!! −−−>
「邪神様。お忙しいところ失礼いたします! なぜか昨日から、リソースの収支が悪化し始め……現在、輪をかけて酷くなっているのですが……」
「なにっ!?」
だが根本からやらかした邪神に、「ゆっくり温泉に浸かって心身を癒すゆとり」などある訳がなく、速攻で部下の悪魔がデータを持って風呂場に襲来した。
自滅以外の何物でもないので、決して「<蠱毒の泉>の怨念効果」ではないのだが、幻影となった哀れな虫は、影の姿でダンスを踊り邪神の不幸を祝福中。
この湯には、浸かっている最中に入用者が不幸な目に遭うと、幻影が活き活きしたダンスを踊り出して入浴者を煽るという、無料オプションが付いている。
「クソッ! 湯の効能でアッチの方も元気になったら、悪魔娘を捕まえてフィーバーしようと思っていたのに! 誰だ、邪魔した奴。空気ぐらい読めよ!」
そう言って、微妙に消化不良のまま生まれたままの姿で執務室に戻った邪神は、ため息をつきながらモニターを確認し、己のミスと事態の深刻さに気付く。
「しまった。こんなに手数料が低くて使いまわせる"送金"が、他のタスクと組み合わせ可能なカタチで置いてあるなんて! あぁ〜、またやられた!!」
計算して期待値を出すまでもなく、リソース量の著しい減少を見て邪神は「期待値がマイナスになっている」ことを悟り、苛立ちで頭を掻きむしる。
ガリガリと頭を掻いてフケを飛ばしている間も、メグミ達はカタログギフトフィーバーでウマウマしているので、一刻も早く対策した方がいいのだが……
<蠱毒の泉>に浸かった事でムダに身体に栄養がまわり、感情の起伏によるリアクションも激しくなってしまい、噴き出す衝動を抑えきれなかったのだ。
「とりあえず、カタログギフトの排出率をいじろう。少しでも損を回収せにゃならんし、公表は……しなくていいか」
ひとしきり暴れた後、邪神はカタログギフトの"当たり"を減らす事で、支出を削減する対策をほどこし、とりあえず収支の期待値をプラスに乗せた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜排出率(変更前)〜
特級カタログギフト:0.01%
上級カタログギフト:0.99%
中級カタログギフト:3%
下級カタログギフト:26%
初心者用カタログギフト:70%
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜排出率(変更後)〜
特級カタログギフト:0.0001%
上級カタログギフト:0.0099%
中級カタログギフト:0.99%
下級カタログギフト:9%
初心者用カタログギフト:90%
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
これで「強欲にカタログギフトを取りまくり、自分からリソースを奪ったクソ魔王共」が、期待値マイナスのガチャを回して損するはず……
と邪神は思い、ミッションカウントされる手数料付きタスクを一部制限する方へ舵を切ったが、そう上手くいくわけがない。
「ん? なぜ魔王共は急に動かなくなった? はやくタスクをこなして手数料を支払い、外れガチャを引きまくるのだ!」
もしこの場にメグミ達がいたら、「プレーヤー側の気持ちを考えましょう」と、冷静なツッコミを入れたことだろう。
元々排出率の低いレアカタログの確率をいじるだけなら、発覚は遅れるが……ポンポン出る初心者用の確率まで弄ってしまっては、すぐにバレる。
そして「いずれ邪神が気付き対策してくる」ことを念頭に置いて、それまでの期間限定で楽しんでいた参加者が、排出率悪化後もプレイする訳ないのだ。
結果、邪神の元には……莫大な赤字と、本当に切羽詰まっているボーダーラインの魔王以外、誰もやらないミッション。
そして参加を辞めた勢が、それによって不利益を被る可能性などないほど、格差が開いたミッションランキング表だけが残った。
読んでくださり、ありがとうございます!
この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)
モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!
作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)