518話 邪神<ウグリス・ヴァンヘルム>
<小鬼>同盟の4人が、使い切れないほど大量のスクロールを使って、各々のダンジョンを強化している頃……
報酬の設定をミスったせいで大幅赤字になり、神殿の最奥で一人、頭を掻きむしる子供がいた。
「うあぁぁ〜〜、クソッ! 教会関係者をブチ殺して敵のリソースを削ぎつつ、僕はウハウハするつもりだったのに。全部持っていかれた!」
彼の名は、邪神<ウグリス・ヴァンヘルム>
子供の姿を模っているが、実際はモンティート達よりずっと歳上の神である。
「今回のペナルティーで死んだ無能魔王は一人。枠が一つ空いたのはいいとして、スクロールを渡しすぎたせいで、81期を転生させるだけのリソースがない」
彼は、メグミ達が暮らす<サルトー区・ポルカト界>の闇をつかさどる神で、他にも幾つかの世界を支配し、そこからボスにリソースを上納していた。
出世競争を勝ち抜いてこのポジションを任されただけあって、ウグリスも無能という訳ではないのだが……
管理する世界が複数あって全てに目を配ることはできないので、時々こういうミスをしてしまい、それをモンティート達に利用されている。
自分に逆らったり、不都合な動きをする魔王を、天誅というカタチで消滅させる事もできるのだが、それをやると事が大きくなり……
必然的に"杜撰な管理"がボスにバレて、自分も道連れで出世競争から脱落してしまうので、直接的に報いを受けさせるのも難しい。
「今年のアガリで規定分のリソースを上納したら、財源不足で活動そのものが出来なくなり、間違いなく来年詰んでしまう。かといって、上納拒否は……」
もし彼がボスへの上納を拒否したら、その日のうちに全ての世界の管理権を取り上げられたうえ、己の肉体をリソース化され魂を滅ぼされてしまう。
邪神の世界も、魔王以上に実力主義で下の者には容赦ないので、中間管理職的なポジションにいる彼は大変なのだ。
だからといって、定期的にやる失態の言い訳にはならないし、部下の魔王にメチャクチャな命令を出すのも論外だが。
「こうなったら仕方ない。新たなミッションを出して、強引にリソースを確保しよう! 付いてこれない無能は全員滅びてよし!」
頭皮から血が滲むほど頭を掻きむしったあと、ようやく現実を受け入れて冷静さを取り戻した彼が、とった行動は……
上納や今後の活動に必要なリソースを、魔王に再度集めさせるというもの。
要するに、自分のミスの尻拭いを部下に押し付けたカタチである。
「どんな形でもいいから、期間内にポイントを集めろ! そうすれば、手数料諸々で僕が儲かる!!」
邪神の収入源は、魔王が死んだときに残った財産を奪うのに加えて、金や物をポイント化したときの手数料が主である。
ゆえに、より多くのポイントを獲得したり使ってもらうことで、手数料収入が増えて懐も豊かになるのだ。
「つい先日までやっていたミッションで、40以上の魔王が未達のペナルティーをくらった。つまり、奴等を処分すれば……枠が空き財も奪える!」
リソースの関係で、邪神が一つの世界で維持できる魔王の数は決まっており、落ちこぼれを処分できれば、その分だけ若手を補充することができる。
またダンジョンコアを壊されて死んだ魔王は、戦いで滅びた魔王と違って、財産を残したまま死ぬので、その回収でもウマウマ可能。
つまり……邪神にとって彼等は、「このまま収益を上げることもなく枠を食い潰すくらいなら、財を残してとっとと滅びろ」と思う人材なのだ。
彼等が死んで枠が空けば、新人を補充する際に、彼等の資産をポイント化することで、強制的に手数料をむしり取ることができるため……
たとえ新人が能無しでも、うだつの上がらない下位層よりはマシ……という、オトナの事情もある。
「だが、潰すと諸々不都合ゆえ手は出さぬが……僕がミスる度に、それを嘲笑うかのように利用する、小生意気な魔王共もムカつく! 死ねばいいのに」
つい本音が出てしまったウグリスだが、安定して稼ぎをあげる<農民>同盟を潰すと、収益不足で自分の首がさらに締まるのは理解しているため……
舌打ちしつつも、直接手を出すのは諦めて、別の世界の管理業務へ移る。
だが感情的な状態でミッションを発令したため、今回のミッションにもまた致命的な穴があり……
それをモンティート達に利用されて、後に地団駄踏むハメになるという事を、彼はまだ知らない。
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)