515話 邪神の財布に木枯らしヒュルル
〜モンティートside〜
ある程度チカラのある魔王なら誰だって再現できる方法で、巨大な箱の中に入ったスクロールを全部掻っ攫いにいく、サーシャちゃんを見て……
同じようにミッション達成したものの、まだ掴み取りの権利を行使していなかった僕等は、すぐに察した。
「「「(あっ、コレ……絶対、邪神が難易度ミスったパターンだ)」」」
そうとなれば、ゆっくりしていられない。
僕は、アスタリア&ナーティーと目配せして、急いでサーシャちゃんのやり方を踏襲し、掴み取りの権利を行使!
邪神が己のミスに気づいて、スクロールが入った箱のサイズを小さくする前に、奴から財を奪い取りにかかった。
<農民>同盟のメンバーは5人なので、もちろん引きこもりチームにも電話で連絡して、即行動させる。
ゴーブルもルノーブルも趣味の真っ最中で、「後にしろよ」と言いたげな態度だったが……
「邪神の財布から合法的に財を奪えるぞ」と伝えると、5秒で了承の意を示した。
「(う〜ん、絶景絶景♪ せっかく鬼畜ミッションを発令してまで集めたリソースが、自分のミスで掠め取られていくとか……ざまぁ〜! 飯ウマ過ぎwww)」
奴には長年振り回されてきたので、時々こうやってミスをする度にそれを突いてオイシイ思いをし、鬱憤を晴らしてきたのだ。
奪ったスクロールは、ランクが低くて僕等には不用なものばかりなので、<小鬼>同盟に取引を持ちかけて譲ればいいだけだし……
サーシャちゃん、マジでお手柄だよ!
「勝ち〜! メグミ君のデザートGET! おまけに、スクロールも絶対に使いきれない数GETできた〜♪」
狙いどおり箱に入った全てのスクロールを奪い取り、"掴み取り権"の効力を存分に発揮したサーシャちゃんは、メグミ君にグーサインで成果を自慢中。
メグミ君も「負けた〜」と言いつつデレデレで、二人の空間から甘〜い砂糖が溢れ出しているし、端的に言うと「バカップルのデート」状態だ。
「モンティート先輩、こちらも無事"全部"取れました!」
「俺も、箱の中身を空っぽにしてやったわい。うむ。ゴーブルとルノーブルも、上手くやったようだな」
「そうみたいだね。僕も成功したから、大当たりのスクロールだけ抜いて、他のものは<小鬼>同盟へ譲っちゃおう。対価は"お気持ち"でいいよね?」
「「もちろん! (邪神の財を奪えたことが大事なのであって、この報酬自体は魅力的じゃない。低ランクのスクロールは、有り余っているから要らないもの)」」
そう言うと思ったよ。
スクロール争奪戦では、サーシャちゃんに一泡吹かされたメグミ君も、その辺りは認識できているようで……
彼女とのイチャラブが一段落した後、やや恥ずかしそうにしつつも、僕の元へ交渉にきた。
「モンティート先輩。要らないスクロールを、僕達に売ってください! できれば、身内価格か物々交換で!」
「ん。いいよ〜」
<セレクト自販機>のスーパー・食料品カタログには、数百種類のチーズが載っていて、一度それを全部食べ比べしたいと思っていたんだよ。
だから、チーズ全種類と交換……ってカタチにしようかな。
メグミ君に希望を伝えて了承をもらい、<セレクト自販機>をチーズ一色にして、大人買いしていたところ……
アンデッドネットワークを使って、親交のある魔王に順次連絡をとり、"掴み取り"をさせていたルノーブルから、ボーナスタイム終了の知らせが届いた。
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箱のサイズが、「人間が抱えられる程度」まで小さくなったそうだ。
邪神に気付かれた、と思うべきだろう。
一応3名の魔王に"貸し"を作れたし、「今回はここら辺が潮時」ってことで引くぜ。
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了解!
要らないスクロールは、「チーズ食べ比べ」と引き換えに<小鬼>同盟へ譲るから、欲しいのだけ避けてコッチへ送ってくれ。
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分かった!
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僕等は、ベテランゆえモンスターも充分育っており要らないけど、これだけのスクロールがあれば、メグミ君達の戦力は大きく伸びる。
自力で大量獲得できた訳じゃないスティーブ君とカルマ君は、"借り"がダルマ式に膨らんで返済地獄に陥るかもだけど……
敵には容赦ないメグミ君も、仲間にはそこまで"容赦ない取り立て"とかしない筈だし、若手同士、納得できるラインで上手く調整すると思う。
「それにしても……この青カビチーズ、本当に食べられるのかな? 匂いは美味しそうなんだけど、ゲテモノ飯って感じでドキドキする」
「前に一度挑戦した記憶では、普通に美味しかったですよ。ただ……僕はモッツァレラ派なので、ブルーチーズはそれっきり買っていませんが」
「あぁ。レンジでチンすると、ビヨ〜ンと伸びて美味しいやつね。僕もアレ大好き!」
「ですです。あと、山羊のミルクで作ったチーズもオススメで〜〜〜〜〜〜〜」
「ふむふむ。なら、これを50個くらい〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
読んでくださり、ありがとうございます!
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






