514話 ルールに書かれていないので
〜メグミside〜
「じゃあ、まずはメグミ君からよろしく♪」
「了解!」
サーシャに促されたので、当て馬ポジションで「スクロール掴み取り」をおこない、基準となる成績を出すことに。
掴み取りできるスクロールは、「権利を行使する」ボタンを押したら出てきて、6畳一間分くらいの量が入っていたので……
思いっきり掴んでも、後の人が足らなくなって不公平……みたいな文句は出ないだろう。
「(くくくっ。"掴み取り"のルールに、"片手しか箱に入れちゃダメ"みたいな記載はない! つまり、両手でガッツリと掴みにいって良い! という事だ)」
最初なのに、この画期的なアイデアで大記録を出しちゃうと、後続の3人が真似して記録が並ぶ可能性もあるけど……別に、ただのお遊びだからね。
負けたところで罰ゲームも大したことないし、皆がたくさんスクロールをGETできれば、それに越したことはない!
「という事で、僕が箱の中に入って充分な数のスクロールを掴めたら、このロープを引っ張って体を引き上げてくれ!」
「「「カシコマリマシタ」」」
巨大な滑車を作って自分自身をその先に吊るした僕は、力自慢のオリハルコンゴーレム3体に指示を出した後、緩々と下に降りて巨大な箱の中へ。
掴み取りできるスクロールは、得られるスキル・ランク共にバラバラで……
「とにかく数を掴んで持ち帰る」というよりは、「当たりのスクロールを見つける」方が、重要になりそうだ!
「おぉ、ラッキー! さっそく<アイテムボックスFのスクロール>獲得! この調子で、どんどん"当たりのスクロール"を集めるぞ!!」
殆どのスクロールが最下級のもので、ハズレばかりだけど……逆に「お宝探し」感があって燃えるし、自分自身でこういうチャレンジをするのは楽しい!
魔王は「罠や突破困難な仕掛けを張り巡らせる側」であって、自らこういうアトラクションに挑む機会はほぼないから……
いざ"やる側"になると、つい少年心が疼いちゃうんだよ。
「へへへへっ。お宝、メチャ見つかった〜。あぁ〜幸せ。ゴーレム君、もう引き上げてくれていいよ〜」
「「「カシコマリマシタ」」」
15分後……両腕に抱えられるだけの「当たりスクロール」を探し終えた僕は、幸福感に満たされながら引き上げられ、掴み取り権の行使を終えた。
邪神から発令されたミッションは、大多数がクリアして報酬をもらえるタイプのものだったので、当然「最上級のスクロール」は入っていなかったけど……
それでも<水魔法C>のスクロールを1本発見できたし、若手魔王にとっては、当たりを引ければ超嬉しい"ご褒美"だと思う。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜メグミの記録〜
・火魔法Dのスクロール×3
・水魔法Cのスクロール×1
・水魔法Dのスクロール×4
・土魔法Dのスクロール×5
・風魔法Dのスクロール×4
・身体強化Dのスクロール×2
・剣術Dのスクロール×3
・格闘術Dのスクロール×2
・隠蔽Dのスクロール×1
・鑑定Fのスクロール×5
・アイテムボックスFのスクロール×7
合計:37本
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ドヤッ!」
「さすがメグミ君。ガッポリ取ってきたね〜」
そうでしょ?
サーシャもスティーブもカルマ君も、じゃんじゃん真似していい思いしようぜ!
僕に続いて箱の中に潜ったスティーブとカルマ君も、同じように滑車で吊るされ、大量のスクロールを抱えて帰ってきた。
僕のやり方を踏襲しつつも、ネバネバ付きの服を着たり足を駆使することで、より多くのスクロールを得られるよう動いたので……
当然、記録も僕より上だが、彼等にとってはスクロール一本でも「大事な資産」なので、「順番が〜」みたいな文句をつける気はないよ。
「さてと……カルマ君も終わったし、最後はサーシャの番。服は……えっ、スカートのまま挑むの!?」
サーシャも僕達と同様に、滑車に吊られて自ら箱の中に入り、スクロール漁りをするものだとばかり思っていたのだが……スカートって…………。
僕一人なら、ラッキースケべできてその日一日幸せになれるから大歓迎だけど、他の野郎がいるところで見えるのは看過できない!
「ふふふふっ、大丈夫だよ〜。だって、掴み取りするのは私じゃないし♪」
そう言ってニヤリと笑ったサーシャが手招きしたのは、高知能で人間とは文字どおり「掴める量」が違う、風龍。
「風龍。あの箱の中に入って、目ぼしいスクロールを全て掴み取りしてきて♪ こぼれ落ちそうな分は、風魔法で膜かなんか作って補助すればいいから」
「かしこまりました! あのサイズの箱なら"全取り"できそうなので、一本残らず掻っ攫ってマスターに捧げます!」
あ〜そっか……たしかに、「魔王自身が掴まなきゃいけない」なんてルールないもんね。
さすがサーシャって感じだけど、このチート技ってその気になれば新米魔王でも使えるし、邪神の奴……ご褒美の難易度選定ミスったんじゃないの?
とりあえず、明日のデザートはサーシャに献上しなきゃならないので、今夜のうちにアイスとチョコレートを食い溜めしておこう。
まだチャレンジ前だけど、風龍と人間サイズの魔王じゃ……結果なんて、火を見るよりも明らかだ。
読んでくださり、ありがとうございます!
この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)
モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!
作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)