512話 O・KU・RI・MO・NO
〜魔王<ブブカ>side〜
弱小魔王のくせに、新進気鋭の<小鬼>同盟に拾われていい思いをしている、カルマというゴミがいたので……
現実を教えてやろうと、ダブル・フェニックスに飛行系モンスターを率いさせて乗り込ませたところ、奴等のパーソナルデータが管理画面から消えた。
「チッ、殺られたか。Sランクまで苦しむような予兆もあったし、たぶん今頃"クソ共の素材"にされている。ベテランのくせに、ドベに加担するんじゃねぇよ」
いくら<小鬼>同盟の二人が、若手魔王にしては優秀でも、我々ベテランとは積み重ねてきた歴史が違う。
ゆえに奴等だけじゃ、ここまで手際よくウチの部隊を潰すのは不可能であり、<森のダンジョン>の後ろ盾に<農民>同盟も加わった可能性が高い。
「せめて情報だけでも、正確なモノが得られれば良かったんだが……あのダメ鳥め。自分のプライドを優先して、肝心な情報を省きやがった!」
戻ってきたら、奴の命が尽きるまで「鳥の串焼き」を作り食うものを……素材丸ごと向こうに献上されたんじゃ、私は「ただただ損した男」になってしまう。
「カルマの魔王ランキングが劇的に上がっている。数日前から、ダンジョンにメグミが融資を入れたのか、金回りが良くなっていたが、これは異様だ」
明らかにダンジョン内でウチの部隊を滅ぼした証拠であり、間接的に「私がカルマに身銭を切ってカンパした」事を示している。
「SSランク1体・Sランク15体……手痛い出費だ。だがあの爺婆がバックについたと、この程度の消耗で分かったのだ。まだマシかもしれない」
とりあえず今やるべき事は、失ったモンスターの補充と、報復に備えた戦力拡充だな。
カルマ一人なら、雑魚すぎて報復など夢のまた夢だろうが……背後に爺婆がいるとなると、話は変わってくる。
<−−− ドタドタドタドタ……ガチャッ!! −−−>
「ブブカ様、一大事でございます!」
「クソッ! もう報復が来たのか!?」
「えっ? いえ、それが……なぜか、このダンジョンの上空に雨雲が集まっておりまして……」
「はぁ?」
ウチのダンジョンがある渓谷は、人間界で「干からびた大地」と呼ばれるくらい、乾いた地域に位置するんだぞ!
当然、雨など滅多に降らないのに……雨雲が集まるだと?
だが外へ出てみると、執事の言うとおり上空に雨雲が集まっており、叩きつけるような雨で身を打たれた。
「いくらあの爺婆でも、天候を操ったりはできない……よな? つまり、これはただの不運? いや、しかし……雲の形が不自然すぎる」
嫌な予感がしたので、風魔法を得意とする連中に「雲をダンジョンからずらせ」と指示を出したところ、案の定、雨雲はその場からテコでも動かなかった。
おそらく私が「軽く手を出した」程度なので、アチラも派兵せず「雨雲だけ派遣した」程度の報復に留めたのだろうが、これを喰らうと地味に辛い。
なんたってウチのダンジョンは、<風>と<火>に特化しているのだ!
そこにジメジメとした空気と大量の雨など生成されたら、ダンジョンの環境に影響が出て、維持費やモンスターの購入費が上がってしまう!
「詫びを入れるのは? いや、ダメだな。私は、80期のデブス魔王を傀儡にして配下を送りこみ、素性を隠した。なのに本名で詫びを入れるのは、悪手だ!」
たとえ即バレするような隠蔽だろうと、ワンクッションはさんで魔王名を隠した以上、何か言われても「しらばっくれる」という選択肢が残る。
だがここで謝れば、正面から責められてしまううえ、「隠蔽工作する奴」というレッテルまで貼られてしまうからな。
「おぃ。あの雨雲は、どれくらいで晴れる? 結構なサイズだし、半日はかかるか?」
「分かりません。しかし方々から雨雲が集まっている状態なので、数日〜数週間は続くと見た方がいいかと」
「チッ!」
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〜モンティートside〜
「先輩。さっきから鼻歌のテンションが上がっていますけど、何か悪巧みでもしたんですか?」
「悪巧みじゃないよ〜。次、何かされないための"お返し"! 楽しいイベントをくれたブブカには、コッチも"贈り物"をしないとね〜」
「贈り物?」
そうそう。
水と風の精霊に頼んで、奴のダンジョンが水没するくらいの雨をプレゼントしたの♪
カルマ君のギフトが成長して、「自分以外の配下」でも転送できるようになったから、昔懐いちゃって眷属契約した上級精霊をチョチョイと派遣して……ね。
「まぁいいや。先輩、そんな事よりアイス食べません? パキッて割るやつ!」
「食べる食べる〜。そのアイス、パキッてするの何か楽しいし!」
そういえば、何日間嫌がらせするか指示し忘れちゃったけど……まぁいいか、そのうち精霊達も飽きて止めるだろう。
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)