504話 匿名さん(笑)の茶々入れ
〜カルマside〜
風龍様から敵の接近報告を受けたサーシャ様に、<森のダンジョン>へ戻るよう促された僕は、先輩5名&スティーブ君と共に帰還した。
敵はまだダンジョンがあるこの島に上陸しておらず、ウチのモンスター達も誰一人その接近に気付いていなかったんだけど、さすがSSランクモンスター。
風龍様は10km離れた場所の違和感ですら、風の影響下にあるなら気付けるそうだ。
「とりあえず、この島にいる子は全員ダンジョンの中へ! 最奥なら多分安全だから、急いで奥へ逃げて!」
本来なら、己のダンジョンを守って散るのがモンスターの役目だが、ウチのモンスターに戦闘向きの子はほぼいない。
辛うじて、剣術の基礎を習った経験のある僕と大差ないレベルの、剣士オートマタはいるが……
その子は邪神のミッションで島外へ行っており、ギフトの制限にかかって明日まで呼び戻せない……という有様だ。
「本当にスミマセン」
「あ〜うん。さすがに2年目でコレはどうかと思うけど、相手はSSランクモンスターだし、コッチで相手するよ。カルマ君は気楽に見学しておいてね」
「スミマセン。ありがとうございます」
苦笑いしながらも、メグミ先輩はさらに銅貨を<森のダンジョン>に投じてくれ、ダンジョンポイントは10億ロルに膨れあがった。
ダンジョンの育成作業自体はすでに終えたけど、もし敵が<改造阻害>系のギフト持ちだった場合、対応は急を要するので……
その場その場で必要な金額を投入するのではなく、あらかじめ余裕を持ってポイントを準備し、万一の事態に備える必要があるからだ。
それに伴い魔王ランキングの順位が変動したことで、<森のダンジョン>の状況は魔王掲示板を見ている魔王にも共有され……
次から次へと、「金魚のフン」「代理戦争」「後ろ盾だけ立派」と罵倒コメントが書き込まれていく。
「クソッ! コイツ等、絶対に後で目に物見せてやる!」
性格のいいスティーブ君は怒ってくれたけど、僕は正直、自分が罵倒されるだけならなんとも思わない。
だって……相手は僕を罵倒する間、無駄にイライラして仕事も手につかず、良識ある魔王に恥を晒して、勝手に落ちていくんだもの。
「(それだけの資産を持ちながら口が原因で滅んでいくの、残念すぎる。手元にその資産があれば、いくらだってチャレンジできただろうに)」
結果として、何のメリットもない状況で僕を邪神の鬼畜ミッションから救ってくれた<小鬼>同盟の先輩方ですら、彼等のことは見捨てて……
その結果、彼等はダンジョンコアにヒビを入れられる運命になったわけで……己の負の感情を制御できないと、ロクなことにならないよね。
「来たな。この短時間で<森のダンジョン>に来られるんだから、当然奴らの主人は風属性の魔王。マルセラ、マルセラ……え〜っと…………」
「メグミ君、ここ! 92位の、80期魔王だよ」
えっ、まさかの後輩!?
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第92位:献身のダンジョン
属性:風
魔王:マルセラ(80期)
保有ポイント:1,2395,4462
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「あ〜。後ろ盾がなくなったマルセラ嬢を下僕化して、<献身のダンジョン>所属にすることで、匿名で<森のダンジョン>を攻撃しようって魂胆ね」
「相変わらず、卑怯な事をする魔王って匿名率高いよね〜。いっそ全員同じダンジョン名に改名して、誰がやったか常時誤魔化せばいいのに」
あっ、なるほど。
先輩方の口ぶりからして、<森のダンジョン>に攻撃をしかけたのは80期の後輩ではなく、その背後に潜む匿名の上位魔王だと……。
「モンティート先輩。お手数ですが、逆探知をお願いします」
「もうやっているよ〜。うん、OK……調べられた。あのSSランクモンスターは、<風炎のダンジョン>の魔王<ブブカ>の眷属だ」
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第9位:風炎のダンジョン
属性:風
魔王:ブブカ(8期)
保有ポイント:869,3642,7854
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ふむ、掲示板では見ない名前だけど……これだけ上位の魔王なら、80期の子一人くらい下僕化するのは簡単だろうし、SSランクも送りこめる。
それにしてもこの魔王、メグミ先輩達よりランキングの順位高いけど、どんなヤバイ方法で仕掛けてくるんだろう?
戦力となるモンスターを一体も出せない僕には、この場で言葉を発する権限などないので、言われた通り見学に徹するけど……
正直、怖くて手の震えが止まらないよ。
読んでくださり、ありがとうございます!
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)