503話 無自覚なパワハラ
〜メグミside〜
「ダンジョンには、"外部から入ってきた生物"の漏れ出た生命エネルギーを吸い取って、ダンジョンポイントに換える機能が存在するだろう?」
「はい。だから多くの魔王は冒険者を招き入れるし、人間を奴隷として狩り"人間牧場"を作ったりするんですよね?」
「うん。だけど生命エネルギー由来のダンジョンポイントは、同盟関係にない魔王のモンスターや知能を持たない動物の滞在でも貯められる」
「えっ!?」
「実際、風龍が<森のダンジョン>を尋ねて君が同盟に加わるまでの間、風龍から漏れ出た生命エネルギーの一部は君のダンジョンに吸われポイント化された」
「あっ……。(だから不自然にポイントが増えていたんだ! 他にも衝撃的なことが多すぎて、そこまで頭が回らなかったよ)」
「この仕組みを利用して、ほとんど何もしなくても収益を得られるシステムを構築している魔王は多い。例えば、僕の<オアシスフロア>とか」
「そうか。言い方は悪くなりますけど、先輩の<オアシスフロア>もある種の人間牧場ですもんね。住民の快適性は全然違うけど」
「そうそう。そして君のダンジョンにも導入可能な<アリの巣>も、同じ。野生のアリを捕らえてきてダンジョン内で育て、その生命エネルギーを得る」
「なるほど。ダンジョンが吸い取るのは、あくまでも生物から漏れ出たエネルギーだから、盗られた方も生き地獄って訳じゃないし……。いいかも」
ふふっ、納得してくれたようで何より。
ウチと違って、フロア内でも普通に飼育できる<森のダンジョン>なら、導入のハードルさえ越えてしまえば後は容易いよ。
「あと、何気に現在スティーブ君がウハウハしているんだけど……<小鬼>同盟のメンバーじゃない僕等の配下が、ダンジョン内にいるとねぇ〜」
「そうそう。SSランクモンスターが先輩方の護衛として滞在しているから、現在<水城のダンジョン>は滞在ポイントで儲かっているの」
モンティート先輩と僕がそう言ってスティーブを茶化すと、彼は慌てて「でも、接待費がかかりすぎて収支マイナスなので〜」と口を滑らせ……
ウッカリ「接待相手に"接待"と明言してしまった」事実に気付いて固まったが、僕も先輩もイジっているだけなので気にしなくていいよ。
そしてカルマ君……
動くポイントが少ない小規模ダンジョンのうちは、こういう小遣い稼ぎが効いてくるから、余裕があれば先輩方のモンスターを泊めてあげてね。
先輩方の下にいるモンスターはベテランの割合が多く、刺激的な環境で生活できると喜ぶ特性があるから、民泊代わりに空間を貸してあげると喜ばれるの。
「…………!! メグミ君、楽しんでいるところ悪いんだけど……カルマ君を<森のダンジョン>に返さないといけないかも。さっそく、侵入者が……」
「あぁ、魔王掲示板でカルマ君の<小鬼>同盟加入を知って茶々入れにきた、SSランク持ちのクソ魔王ね……。思ったより早く来たな」
でも丁度いい。
カルマ君一人のときに襲撃されるより、僕が<森のダンジョン>の特性を利用した防衛法を伝授しつつ、実戦で敵をボコるほうが安全に学べるし……
襲ってきた魔王Aの部隊には、全滅するまで実験台になってもらおう。
「あっ、あのぉ……。申し訳ないのですが、お暇させていただきたく……」
「えっ? あぁうん、大丈夫だって。僕等も付いていくから」
「うん」「「「「勿論」」」」
スティーブとサーシャを連れて4名で<森のダンジョン>へ向かおうと思ったら、まさかの先輩方も「同行する」と言い出してビックリ。
だけど先輩方の腕は一流で邪魔になる事はないから、7人で仲良くカルマ君のダンジョンへお邪魔することにした。
先輩方の眷属さん達は、ガードが弱すぎる<森のダンジョン>へ先輩方自身が行くなんて危なすぎる、とメチャクチャ反対していたけど……
モンティート先輩を筆頭に、<農民>同盟には自由人気質の魔王が集まっているからね〜。
優等生タイプのアスタリア先輩も、「だったら貴方達が護ればいいでしょう。必要なら、部下を何名か連れて行ってもいいわよ」と……
眷属さん達を「お前等が仕事していれば大丈夫だ」論で一蹴して、そそくさと移動してしまった。
たぶんスーパーのカタログを見せたときに強請られた、カップ甘酒を飲みすぎて、少し気分が高揚しているのだと思う。
「どっ、どうしましょう。僕のダンジョンに、こんな大物が集結なんて……」
「あぁ、ここに"1ヶ月前の僕"がいる。カルマ君も、僕が通った茨の道をくぐるのか……」
ところで……79期2名が「死んだ魚の目」をしているんだけど、気のせいだよね?
僕等が行くことで滞在ポイントGetできるし、ダンジョンの防衛力も上がり今後の為にもなるんだから、大喜びする展開じゃん?
読んでくださり、ありがとうございます!
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)