501話 パーツ組み立て式ダンジョン
〜カルマside〜
その後、僕はスティーブ様と温泉に浸かって洞窟暮らしで草臥れた身体を癒しつつ、パジャマパーティーしていた先輩方について教えてもらった。
スティーブ様いわく……後輩狩りをするような性根の腐った先輩はおらず、基本的に優しいけど……
たまに育成目的のシゴきが暴走して、絶望の淵に立たされるくらいピンチになるので、そこだけ注意……との事だ。
「本当に無理なときは意地を張らずに泣けば、カルマ君なら即止めてもらえると思う。僕相手だと、限界ギリギリを見極めたデスマーチを仕掛けてくるけど」
そう話すスティーブ様は死んだ魚のような目をしており、相当シゴかれたのが一目で理解できたので、僕がくらったときは泣いて断ろう。
乗り越えて成長できれば過去の苦労もいい思い出になるけど、スティーブ様でこれじゃ、僕がくらったら道半ばで朽ちてしまうもの。
「あと、僕に"様付け"は要らないから。同期なんだし、普通に"スティーブ"と呼び捨ててくれていい。敬語も不要だ」
「でっ、ですが……。いや、分かりました。普通にしゃべるんで、もし癇に障ったら遠慮なく指摘してくれ」
同期とはいえ格違いもいいところなのに、スティーブの器の大きさが身に沁みる。
同盟メンバーは最大5名だから、あと1名入ってくるかもだし……もし後輩が入ってきたときは、僕も彼にしてもらったように優しく接しよう。
スティーブに、<小鬼>同盟での生き方と先輩達の扱い方を教えてもらった僕が、彼と共に先程の部屋へ戻ると……
和気藹々とパジャマパーティーしていた筈の皆様が、真面目な顔で、僕の配下であるオートマタと話をしていた。
「あっ、カルマ君。丁度いいところに戻ってきた! せっかくお風呂に入ったところ悪いんだけど、今日中にある程度ダンジョンの育成を進めちゃおう」
「えっ!?」
言われている意味が分からず石化しかけたところ、それを察したメグミ先輩が怒ることなく魔王掲示板を見せてくれ、僕は事態を把握した。
「もうバレたんだ。早いですね」
「所属同盟は一覧表に載っているし、<小鬼>同盟は色々と悪目立ちしているからね〜。注目度が高すぎて、何かあるとすぐ掲示板が荒れるんだよ」
詳しい内容も見たいところだったが、メグミ先輩に「心ない誹謗中傷であふれているから、しばらく閲覧禁止!」と言われ……
僕は、掲示板で騒ぐだけでなく実際にチョッカイをかけようと現地を訪れるタイプの魔王に対抗するため、<森のダンジョン>の管理パネルを立ち上げた。
もちろん貧乏な僕に、ダンジョンを育成するような資金はないが……そこはメグミ先輩が、無利子・無期限で資金援助してくれるらしい。
代わりに、もし先輩方が必要としたときは僕も協力する契約になっているけど、"モンスターへの従軍命令"じゃなくて"僕のギフトに限定した話"だからOK。
莫大な資金援助の利子代わりになる自信はないけど、僕のダンジョンが落とされると、<転移陣>で繋がっている此処も危険に晒されるので……
それもあっての支援だから、遠慮される方が困る……という事だった。
<−−− ジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラ…… −−−>
「いやぁ〜、ゴメンね! 自動販売機ってどうしても小銭メインになるから、できるだけ銅貨をはけさせたいんだ!」
そう言って苦笑いするメグミ先輩の後ろで、僕のダンジョン口座へお金を注ぐゴーレム達は、底が抜けそうなほど大量の銅貨を抱え……
それを眉一つ動かさず、<森のダンジョン>のポイントに換金してくれている。
ウチでは銅貨一枚すら貴重なので、あの量のお金を持ったら腰を抜かして潰れちゃいそうだし、絶対にジャラジャラ振り込めないよ!
きっと一枚一枚惜しんでムダに時間をかけながら投入し、「もしこのお金があったら〇〇ができた〜」とか妄想して、勝手に落ちこむと思う。
「はい。とりあえず5億ロルの融資完了! さてカルマ君。考える時間を与えてやれず悪いんだけど、早速ダンジョンの育成を始めるよ」
「ありがとうございます! よろしくお願いします!」
「君とスティーブが風呂に入っている間に、こっちで簡単なテンプレートは用意しておいたから、好きな構図を選んではめていってくれる?」
「えっ? うわぁ〜、全部凄い……」
メグミ先輩が「簡単なテンプレート」とおっしゃったのは、全て「攻略が難しそうなダンジョンの設計図」だった。
これの何処が"簡単"なのかは分からないけど、きっと先輩方のぶっ飛んだ判断基準からすると、「秒で攻略できる」という意味なのだろう。
「で、どれにする?」
「はい。このタイプのダンジョンに、4,8,32のオプションを加えていただきたいです!」
「了解。じゃあ、早速実装に移ろう」
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)