499話 因果応報
それから数日……穏やかな性格の魔王だけでダラダラ過ごす事で、勇者排除派(主にロルカナ&ガルガロク)から受けた疲労を癒していた僕達に……
カルマ君のバックアップを担当していたサーシャから、「ミッション完了!」の報告が入った。
「彼の元に邪神から完了のメッセージも届いたらしいし、もうダンジョンコアにヒビを入れられる事はないはずだよ」
「そうか。慣れてきたからと、モンスターである風龍に高圧的に出る事もなかったし、このまま<同盟>に誘う?」
「そうだね。恐縮しきりで、頭をペコペコ下げるお人形みたいになっているそうだから、ある程度落ち着いたら話をふるよう、風龍に伝えておくね〜」
「うん。ヨロシク!」
誠実に生きてきたカルマ君は、邪神の魔の手から逃れられたが、他者を妬んだり魔王掲示板で悪口を書いて、自分の惨めさを慰めていた連中は……
誰の支援も受けられないまま、ミッションの期日が刻一刻とせまり、今頃になって「何でもするから助けてくれ〜」とコメント欄で騒いでいる。
まぁ自分の命と繋がっているダンジョンコアに、逆らいようがない圧倒的上位者から、問答無用でヒビを入れられるんだから、怖くもなるだろう。
どうせ助けたところで、ミッション期間が終わって危機が過ぎれば手のひらを返す連中なので、僕もこの場にいる先輩達も手を貸す気はないが。
僕等がダラダラ生活をしている間に、カルマ君の方も落ち着いたのか……風龍から話が通って、僕の元へ彼からの「同盟加入申請」が届いた。
加入前にスマホを渡して、メールでやり取りする事もできたんだけど、初めてだと使い方を覚えるのに手間取るだろうし、早く会いたいからね。
ムダに時間を使うより、<転移陣>の設置でコッチへ飛んでこられる同盟を結び、快適な環境で今後の話をしたかったのだ。
<−−− ヴゥーーンッ −−−>
「えっ、何この"くつろぎ空間"。えっ? あぁっ、失礼いたしました! メグミ先輩・サーシャ先輩、ご無沙汰しております。私、カルマと申します!」
パパッと同盟加入申請を受理して、<森のダンジョン>に転移陣の設置権を送ってやり、コチラへ来るよう促すと……
カルマ君は数分で飛んできたのだが、まさか"飛んだ先"に「パジャマパーティーをしている先輩魔王」が大勢いる、とは思わなかったのだろう。
露骨に驚きペコペコ人形に戻った後、僕等と一緒にパジャマパーティー中の爺婆が、<農民>同盟の先輩であることを知り石化した。
「カルマ君、久しぶり! ちゃんと話すのは初めてかな? 君と同期のスティーブです。よろしく」
「あっ、スティーブ様……。よろしくお願いします!」
思わず高等学舎時代のヒエラルキーが出て、同期のスティーブを"様付け"で呼んでしまったカルマ君だが、この初々しさはスティーブも通った道。
すぐに笑顔でカルマ君と肩を組み、ダンジョン……という名の洞窟から来て、清潔な風呂とは無縁の生活を送っていた彼を、バスルームへ連れていった。
「むふふふふっ。去年のメグミ君達を思い出すなぁ〜。可愛かったね♪」
「先輩キモイです。でも気持ちは分かる。思わず、お小遣いあげたくなりましたよ」
「俺等の世代が無遠慮に接すると、場合によってはパワハラになるから、とりあえずは様子見だがな。難しいもんだ」
先輩達もカルマ君の小動物感に打ち抜かれ、しっかり「孫を見る爺婆」化しているので、恐れる必要はないと思うが……
それでも怖がっちゃうような大人しい性格だから、魔王ランキングで地を這い続けたんだろうし、いきなり「慣れろ」というのも酷かな。
「あっ、もう魔王掲示板で騒ぎになっている。見てよメグミ君。カルマ君が<小鬼>同盟に入った件が、もうバレちゃった」
「うわぁ〜。相変わらず、他者の状況チェックだけは完璧な連中だな。その労力をダンジョン経営に充てれば、少しは序列も上がるのに」
「ミッションノルマ未達でダンジョンコアにヒビを入れられる恐怖に、怯える日々を過ごす必要もなくなるのにね。困ったもんだよ」
サーシャもため息をついているが、こういうヘドロみたいな連中は、「他者に起こった幸運を発見する能力」が異常に高く……
しかもそれに嫉妬して、その幸運な相手を掲示板で叩きまくるスピードも一流なので、見ている間に次々とカルマ君関連のスレッドが立てられていく。
中には、ありもしないゴシップや誹謗中傷しかないスレッドもあるため、彼には暫くの間「魔王掲示板を覗かない」よう忠告しないとな。
「メグミ君、ちょっといい?」
「はい。モンティート先輩、何でしょう?」
「カルマ君が治める<森のダンジョン>だけど……多少でいいから今すぐ支援を入れて、増強してあげた方がいい。ただの洞窟だと、さすがに安全性が……」
あぁ、そうか。
掲示板で騒がれているかつ、魔王ランキングの最下位常連のダンジョンなんだから、チョッカイをかけようとする上位魔王が現れてもおかしくないよな。
読んでくださり、ありがとうございます!
この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)
モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!
作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)