498話 コマンダーの欠点
〜カルマside〜
あまりの迫力に、「僕を食べに来たんだ」と勘違いした相手は、サーシャ先輩が遣わしてくださったSSランクモンスターだった。
にも関わらず風龍さんの目の前で気絶し……しかも汚物を垂れ流した件については、一生モノの黒歴史だが……幸いなことに、"人に"見られたわけじゃない。
ドラゴンにとって僕のリアクションなど、弱い獲物が怯えているのと大差ないだろうし、見慣れていて興味もないはず。
だからサーシャ先輩や、先輩と付き合っているメグミ先輩に報告されて、社会的に抹殺される展開にはならない……と信じさせてくれ!!
「それでね〜。マスターが、"カルマ君のノルマ達成までアシストしてあげて"って言うから、私が来たわけ! ここには来ていないけど、援軍もいるよ」
「ありがとうございます! 情けない話ですが、自力でのノルマ達成は絶望的だったので、先輩方のご温情に縋らせていただきます!」
僕の返事を聞いた風龍様は、「了解! とりあえず、そちらの戦力とか貴方のギフトについて教えて」とおっしゃった。
情報を渡すの自体は全然構わないんだけど……すみません、金欠ゆえマジで「戦力と言えるタイプのモンスター」がいないんです。
「えっ……? 本当に、これだけしかモンスターいない……の?」
「はい……」
うぅっ、風龍さんの沈黙とドン引きした視線が痛い!
そりゃあ彼女の主人である、魔王ランキング上位のサーシャ先輩と比べたら、お遊びレベルの戦力ですもんね……。
「OK、ちょっと待ってね。本格的に援軍を要請するから、マスターの返事が来るまで一旦待機で!」
「スミマセン。お願いいたします」
数分ほど気まずい時間が流れたあと、設定した覚えのないアラームが鳴り、風龍様は手に収まるサイズの何かを取り出した。
そしてピコピコとボタンのようなものを連打した後、こちらを向きピースサインをつくる。
「マスターがお膳立てしてくれるから、貴方は<コマンダー>ギフトで、各現場に配下を一体ずつ派遣して。貴方の名義で、ミッションを達成するために」
「かしこまりました。何から何まで感謝いたします!」
トドメだけは僕の配下が刺さないと、<森のダンジョン>の成果としてカウントされないので……
サーシャ様は、あの機械を通して風龍様にこのような指示を出したのだと思う。
なぜ<コマンダー>ギフト持ちでもないのに、世界各地に手勢がいるのか……そもそも、あの不思議な機械は何なのか……
魔王としての格が違いすぎて、僕じゃサーシャ先輩の厚意を全て汲み取ることはできないが、「良くしてくださった」ことだけは分かる。
ありがたく厚意に甘えて、今後先輩方が困ったとき、僕なりに精一杯恩を返そう!
あまりにも戦力がショボ過ぎるので、物理的な戦いじゃ一切役に立てないけど、魔王掲示板でのゴタゴタとかなら一助にはなるはずだ!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜メグミside〜
「ふふっ、良かった〜。メグミ君。カルマ君が、私達の配下と合同でミッションこなしてくれるって!」
「そうか。サーシャみたいな美人を相手にすると、無意味なプライドが顔を出して断っちゃう男もいるもんだけど……普通に受けてくれてよかったね」
カルマ君が強がったりせず、大人しく"神輿"になってくれて一安心。
彼自身が「指揮をとる」とか言い出すと、ムダに負傷者が出るかもしれないが、静かに担がれていてくれれば数日で全て終わる。
「同期が入ってきて、僕に対するシゴきも半分になると思ったのに……なぜカルマ君には神対応、僕には塩対応なんだろう? 別にいいけど」
なんかスティーブがゴニョゴニョ言っているが、それは単純に、「カルマ君に塩対応すると、成長せずそのまま壊れちゃう」からだよ。
シゴけばシゴく程いい味が出て逞しく成長しそうな、お前と一緒にするな。
もっとも……もし万が一、カルマ君がサーシャと再会して変な気を起こしてしまったときは、教育的指導が入るかもしれないけど。
「ふむふむ。メグミ君、砂龍から報告が届いたよ〜。早速、リストのうち現場班が最も近くにいた1件を、こなしたってさ。やっぱり、<コマンダー>強いね」
「うん。今はまだ、神輿代わりの"トドメ刺し要員"を現地へ送るのが精々だけど、鍛えればメチャクチャ厄介なギフトになる。ですよね、モンティート先輩!」
「そうだね。それに加えて、君がユアン君から奪い取った<遠隔商談>ギフトと組み合わせると、魔王界でもっとも機動力のある部隊の完成だ!」
「たしかに。それなら、鍛えれば先輩方にもスピードで勝てるかも!」
使い方を考えないと、権力者に警戒心を抱かせてしまうかもしれないので、自由自在とまではいかないけど……
いざとなれば、数十分で実働に移れる部隊を現場に配置できるのはウマい。
カルマ君が移動させられるのは、彼の配下だけなので……僕が自販機を持って現場へ出るときは、引き続き「トラウマレベルの移動地獄」になる訳だが。
読んでくださり、ありがとうございます!
この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)
モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!
作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






