497話 新たな同盟メンバー?
〜サーシャside〜
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マスター!
命令どおり<森のダンジョン>に行ったんだけど、洞窟の中に入ったらすぐ魔王にでくわして、しかも卒倒されちゃった〜。
私、お助けマンとして来ただけなのに、白目&失禁状態で気絶するとかあんまりだと思うの( ; ; )
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「あらら。カルマ君は、ドラゴンを見たことがなかったのかしら? 驚いちゃったみたいね」
「そうだね。(風龍。そういう時は空気を読んで、ただ"気絶している"とだけ報告してくれればいいんだよ。カルマ君の黒歴史になっちゃうじゃないか)」
メグミ君も予想外の事態に苦笑いだが、現地に送ったのは不安定な気流を安全に越えられる風龍だけなので、彼女に対応してもらうしかない。
「(それにしても、なぜ魔王が入ってすぐの所にいたのかしら? 普通は安全のために、最奥のコアルームに隠れているはずだけど)」
ラヴィレンス高等学園には中等部も併設されており、カルマ君は在学時期も被っていた後輩にあたるんだけど、正直まったく記憶にない。
同期のスティーブ君が支援に反対しなかったので、性格面は問題ない子だと思うけど、どんな子なのか少し気になる。
「ねぇスティーブ君。カルマ君って、どんな子だったの?」
「そうですね。ぶっちゃけ、関わりがなかったので分かりません。彼は相当な苦学生で、始業前・放課後ともにバイトしていたので。一応、貴族だったのですが」
「あっ、なるほど。(偶にいるわよね、没落した"名前だけ貴族"。スティーブ君も家の仕事があっただろうし、階層が違い過ぎて関わる機会がなかったのか)」
僕はロミオット達に目をつけられイジメられていたから、上の身分の奴とも(悪い意味で)関わりがあったけど、普通は階層が違えば喋ることすらない。
というか……寮のクオリティーやよく通うレストラン、その他何もかもが違って、目を合わせる機会すら殆どないのだ。
もちろん高等学舎の教員達も、ヒエラルキー上位の生徒を贔屓して、チームを組むときは彼等だけで組ませるから……
たとえ同じ高校に通っていようと、イジメの対象としてオモチャにされていないヒエラルキー下位は、「そこら辺に転がっている石」扱いである。
「でも、悪い噂は聞きませんでしたよ」
「そうか。僕もユアンの調査をしたとき、"素行が悪かった生徒の情報"も併せて入手したんだけど、そこに彼の名前はなかった。たぶん問題ないと思う」
スティーブ君とメグミ君の話を聞く限り、普通の「苦労人」って感じね。
<小鬼>同盟のメンバーは、良くも悪くも庶民派が多いから、直接話せたら仲良くなれるかもしれない。
幸いなことに、風龍を見て気絶したカルマ君はショック死した訳じゃなかったので、数時間で目覚めて人化した風龍と言葉を交わした。
情報提供を申し出たところ、予想以上に貧乏だった彼は「報酬を払えないんで」と断ってきたが、風龍が笑顔で黙らせてコチラの善意を受け入れさせたそうだ。
「しかし……まさか、雨宿り用の洞窟みたいなダンジョンで、1年暮らせる元貴族がいたとは。もしかすると、僕よりタフかもしれない」
カルマ君はダンジョンの入り口付近にいたのではなく、ダンジョンそのものの規模が小さかった事が判明。
私も、ダンジョンという名の「風車小屋」で暮らしていた時期がある元貴族だから、なんとも言えないけど……
無人島でそれだと、ダンジョン運営じゃなくてもはやサバイバルなので、カルマ君はものすごく大変だったと思う。
「とはいえ……現時点では吹けば飛ぶレベルの魔王だけど、カルマ君のギフトはすごい。もし、一旦軌道に乗ったら一気に上位へ駆け上がるはずだ」
「そうだね。安全地帯から、一瞬で任意の場所へ配下を飛ばして、好き放題できる能力。青田買いするなら、絶好の人材じゃないかな」
私がそう言うと、メグミ君も同じことを思っていたのか、ニヤリと笑ってコチラを向いた。
「うん。だからサーシャとスティーブさえよければ、数日様子を見て人格面のチェックをした後、カルマ君を<小鬼>同盟に誘おうと考えている。どうかな?」
「賛成!」
「僕も、良い案だと思います!」
ベッドの上でグータラしながら、優しい目で私達の様子を眺めている<農民>同盟の先輩3名も、手でグーサインを作って賛同の意を示してくれた。
やっぱり先輩達から見ても、カルマ君の<コマンダー>ギフトは輝いて見えますよね?
「贅沢するタイプじゃなさそうだし、数億ロル貸し付けて養殖ビジネスのやり方を教えてやれば、勝手に伸びていくだろう」
「うん。魔王掲示板で私の援護をしてくれたときも、何かの恩返しって言っていたから、たぶん義理堅い性格だろうし……恩を売っておきたい相手だね」
打算アリの支援だが、大人の世界に"善意"なんてものは基本存在しないし、親しき仲にも利益は必要。
同盟メンバーとして長く付き合っていくなら、何かしらの貢献をしてくれないと、いずれ摩擦が生じて仲互いの原因になるので……
ある程度、こういう打算的な考えも必要なんだよ。
もっとも……メグミ君は私が風車小屋で貧乏生活していたとき、特に見返りを求めず助けてくれたし……
本当に優しい人は、私みたいな人間とは考え方が違うのかもだけど。
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






