496話 ボンビー魔王<カルマ>
メグミ達が団欒を再開した頃……遠く離れた孤島にある<森のダンジョン>では、魔王<カルマ>がため息をついていた。
「ヤバイ。ミッションを達成しないと命のコアを傷付けられる! なのに、倒せそうな教会関係者が一人もいない!」
正確には、ただ純粋に神を信じている農民はそこら中にいるのだが、カルマの中でその人達は「手出ししちゃいけない部類の人間」であり……
殺しても心が傷まない教会関係者を探した結果、調査費用だけが嵩み成果ゼロという、悲しい状況に陥っていた。
「マスター。あの……傷心中に申し訳ないのですが、明日の宿の滞在費をいただきたく……。結果も出せていない状況なのにスミマセン」
「えっ? あぁうん、了解。え〜っと……これで足りそう? もし足りなかったら、島に群生している薬草を採って現地で売ってくれる?」
「かしこまりました。少々不足が出るので、コチラで調達いたします」
カルマが貧乏魔王として定着してしまったのには、大きく分けて3つの理由がある。
1つ目は立地。
ラヴィレンス高等学園の生徒だった頃から、実家は借金まみれで貴族とは思えないお財布事情だったカルマは……
魔王転生時に、ポイントが足らなくてマトモな土地を選べず、手持ちの僅かなポイントをギフトに全振りした結果、誰も来ない孤島に一人……となったのだ。
当然だが、ダンジョンの代表的な収入源である「侵入者の生命エネルギー」を食うこともできず、魔王転生後も不労所得とは無縁の生活。
ギフトを活かして稼ぐことで辛うじて収入は確保しているが、空いた時間に自分で内職をするくらいには、ひもじい懐事情である。
2つ目、モンスターの管理コストが高すぎる問題。
カルマは、殺されにくい代わりに僻地すぎる無人島でも暮らしていけるよう、転生前にほぼ全てのポイントを投じて良いギフトを獲得した。
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〜コマンダー〜
自分の配下を、開拓済みのポイントへ転送できる。
また彼等と思考を共有することで、離れた場所にいながらリアルタイムで指示を伝えることも可能。
特定の配下を"代理"として立てることで、自分の代わりに配下の指揮を任せ、自分は休むこともできる。
一日に転送できる配下の上限は、ランクによって異なる。
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資金力豊富な上位魔王がこのギフトを持てば、好きな場所にSSランクモンスターを飛ばして大暴れさせる、TUEEEモードもできただろう。
しかしカルマの場合、遠隔地へ送ってもある程度自分で判断して行動できる、高知能モンスターを買うのにも一苦労。
やっと派遣できるモンスターチームを揃えても、出先でかかる食費・宿代・関所代と、毎日のように請求が飛んでくるのだ。
当然、強いモンスターなど揃える余裕はなく、ダンジョンの育成も「外の害虫が入ってこない最低ライン」で止めており……
攻撃・防御ともに、全魔王中ぶっちぎりの最下位を独走している。
そして3つ目……これだけ貧乏生活を強いられても一般人には手を出さないくらい、カルマの性格はいい。
だが性格が良過ぎて損ばかりしており、魔王としての成長にデバフしかかからないのだ。
魔王転生時に与えられたポイントから、自分が新米魔王の中で一番貧乏だと理解して、身を守るために立ち回れる……くらい賢いカルマだが……
潔癖さと性格の良さが成り上がるチャンスを潰してしまい、転移した僻地で、転生前以上の貧乏暮らしをするハメになった。
だが今回に限っては、その「性格の良さ」がプラスにはたらき、ミッション達成など絶望的な状況の彼を助けることになる。
<−−− ファアーーーーン!!!! −−−>
「えっ、なに!? 侵入者!? 嘘でしょ、こんな孤島にそんな人……って、ええぇっっっっ!!!? ドラゴン〜〜〜〜〜〜〜!!!!」
だが自分でドラゴンを買うだけの財力がなく、ダンジョンの所在地も「最も脅威となる生物はムカデ」というレベルの、無人島で暮らしていたカルマは……
当然SSランクモンスターを見る機会などなく、荒れ狂う気流をアッサリ潜り抜け島に入った風龍を見て、卒倒した。
風龍はカルマを助けに来たのであって、食おうとしている訳ではないのだが……
涙を流して白目をむきコアルームで気絶してしまった彼が、その事実を知るのは、数時間後のことである。
なお……「ダンジョン」というより「洞窟」と表現した方が伝わりやすい<森のダンジョン>は、風龍に10秒で突破された。
コアルームにムカデを入れない為の「虫除けトラップ」しかなく、ドラゴンどころか人間の侵入者に対する備えもしていなかったのだから、当然である。
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






