491話 序列一位のギフト
〜メグミside〜
モンティート先輩の必死の抵抗もむなしく、アスタリア先輩とナーティー先輩の口は滑りまくり、モンティート先輩の武勇伝は余すところなく語られた。
「シクシクシク。もうお婿にいけない」
「心配しなくても、あの世以外先輩に貰い手なんかないから、特に何も変わらないです。安心してください」
「それ、全然安心できないやつじゃん! 鬼!! メグミ君達と連むようになってから、アスタリアの鬼畜度が上がっている気がする」
モンティート先輩は、拗ねて僕等に背中を向け指でイスの背もたれを突いて、いじけちゃったけど……普通にすごいと思うよ。
だって、僕程じゃないにしろ貧乏すぎて転生時に詰みかけた状況を、普通なら名称だけ見てスルーする風変わりなギフトを選ぶことで、乗り越えたんだから。
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〜引きこもりの粘土職人〜
ダンジョン内で生み出した粘土を使って、マナを込めながら市場流通品の贋作を作ると、その贋作が本物と見分けがつかない程優れた作品となる。
鑑定系ギフトで贋作を調べられても、ダンジョン内であればそれがバレることはないが、ダンジョンを一歩出た途端それは元の「粘土作品」に戻る。
なお粘土で食べ物を作った場合、食べることもできるが、排泄が終わっていない段階でダンジョン外へ出ると、体内で粘土に戻るので要注意。
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先輩は、この粘土で武器や防具をつくりゴーレムに持たせることで、初期の資金難を乗り切ったらしい。
さらには、冒険者がダンジョン探索をすると宝箱から貴金属(に化けた粘土)がゴロゴロ出る仕様の、パッと見「稼げそうなダンジョン」をつくって……
欲にまみれて貴金属を集めまくり、金属の重さで動きが鈍った冒険者を狩る手法で、安全に冒険者をポイント化したそうだ。
「もし彼等が外へ出られても、持っていかれたのは金属塊じゃなくて粘土じゃん? だから、リスク少なく稼げたんだよ」
「先輩のエグイところは、ギフトの制限をメリットにしちゃったところですよね〜。一歩外に出れば、お宝も全部土にかえる徒労確定ダンジョンwww」
アスタリア先輩はケラケラ笑っているが、初期の頃のモンティート先輩は、僕と似たような行動をしていた事が分かって、コチラは冷や汗ものだよ。
「自分の考えは特別」なんて思いあがるつもりはないが、メチャクチャ身近なところに上位互換がいた。
「でも、それだと"粘土で騙す悪徳ダンジョン"って噂が広まりません?」
「広まらなかったね。金属塊を手に入れた人間は、ダンジョンの外にでる前にもれなく死んじゃったし。ほら、サーシャちゃんも知っての通り人間は強欲だから」
そりゃあ……取り出せる難易度の場所に、「一生遊んで暮らせるお宝」が眠っているのだから、欲にまみれた人間がお上品に2,3個取って済ますわけない。
きっと全員、マジックバッグの容量を使い果たし、歩けなくなるくらいまで貴金属(を模した粘土)を集めまくって、帰り道で殺されたんだろう。
「だけど、そんな怖〜いダンジョンだと軍に攻められちゃうじゃん? だから何度か軍を壊滅させた段階で、僕も反省して心を入れ替えたんだよ」
「その時には、現在のメグミ君と同じくらい<欲望のダンジョン>の悪名は広まっていて、先輩の改心もむなしく黒歴史は語り継がれた……と」
「アスタリアとナーティーが、嬉々として僕の噂を流したせいじゃん! 改心してからは、ちゃんと粘土で鍬とか肥料を作る農民になったのに〜!!」
「我々は、創成期のイケイケな魔王連中にナメられていましたからね。先輩の噂一つでソイツ等を牽制できたんだから、安いもんです」
「いや、僕のメンタルっていう"対価"を払わされているんだけど。お前達の分まで、強制奢りで」
「先輩、安全ゴチになります!」
相変わらず、アスタリア先輩はモンティート先輩の扱いが上手いな。
そして、若かりし頃とはいえ……自分達の安全度を守るために、先輩の恥部を拡散するとは……さすがっス。
「メグミ君達の<小鬼>同盟も、性格のいい火属性の子が加われば面白くなるわね♪ 80期は早々に壊滅したから、81期もすぐ来るだろうし探してみな」
「えっ? いや、あの……ご縁がありましたら」
たしかに<農民>同盟と違って、3人しかいない<小鬼>同盟は火属性の魔王を欲しているけど、急いで探すとユアンみたいな奴に引っかかるかもじゃん?
あくまでも現メンバーで仲良くやっていく方針で、新規の子はスティーブが加入した時みたいに、何か縁があったらでいいと思う。
読んでくださり、ありがとうございます!
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






