488話 彼女の役目
〜サーシャside〜
勇者排除派との戦いを制したメグミ君から、モンティート先輩&スティーブ君を連れてウチのダンジョンに来ると、連絡があったので……
急いで手料理を用意して、いつもより清楚な服を着て彼等の到着を待った。
本音を言えば、久しぶりにメグミ君を堪能できる機会だし、デレッデレに甘えて数日遊びたい気分だけど、男性は「序列の生き物」だからね。
自分より目上の先輩と、ライバルにもなりうる年頃の後輩を連れてくる時点で、意識的ではないにしろ、私も彼等から「評価される対象」になる訳だし……
よりメグミ君の評価が高まる、「清楚でしっかりとした優しい彼女」を演じた方が、後々のためだ。
「あっ、そうだ。メグミ君、ブランドものの紅茶が切れちゃったんだけど、セレクト自販機で高級なやつ出してくれない?」
「えっ? あぁいいよ。先輩方をお出迎えするのに、安い紅茶だと申し訳ないしね」
「そうそう。うわぁ〜、香り高くてホッとする。ありがとう♪」
「こちらこそ。美味しそうな匂いで、今日のご飯が何か今から楽しみだよ!」
立ち居振る舞いに気を配ると同時に、さり気なくメグミ君を頼り、その都度お礼を言ったり立てるのも忘れない。
自分のパートナーが外でどう見られるかにも関わるのだ……いくら普段親しくしている2人の来客でも、彼女としてそこは徹底する!
「ふふふっ。相変わらず仲良さそうだね〜。そうだ! サーシャちゃん。はいコレ、お土産の"フルーツの種セット"ね。品種改良された高級品の種だよ」
「わぁっ、先輩ありがとうございます! ちょうど園芸してみたいと思っていたところなので、ありがたく育てさせていただきます!」
モンティート先輩は上品なお爺さんなので、土属性かつメグミ君とも被らない<欲望のダンジョン>の特性を活かして、素敵な種をプレゼントしてくれた。
こういうのは、上手く育てて株を増やすと数年後には金になるし、好みの問題がある服やアクセサリーと違って、魔王なら手軽に使えるからありがたい!
「メグミ君。砂漠で育てられるフルーツもあるかもしれないし、今度試しに栽培してみない?」
「いいね〜。戦争が終わってモンスター達の手もあくから、少ない水でも育ちそうなものを栽培してみるよ」
そして、ただプレゼントをもらって喜ぶだけでなく、メグミ君と二人で今後の糧にする姿勢を見せるのも大事!
実際に育つかは、やってみないと分からないけど……挑戦する気すらないよりは、チャレンジ精神旺盛な方が先輩好みだろう。
「サーシャちゃんって、本当にしっかりしているよね〜。ほら、スティーブ君もお土産渡しなさい。用意していたでしょ?」
「あっハイ! 今後ともよろしくお願いします!!」
笑顔ながらも、しっかりと私……そして私を彼女として選んだメグミ君を評価している、モンティート先輩と違って……
スティーブ君はイマイチ女性耐性がないのか、真っ赤になってカクカクしながらお土産を渡してくれた。
「ありがとう。そんなに良いものはお返しできないけど、パウンドケーキを焼いたから持って帰って! 先輩用のもあるので、モンスター達と食べてください」
「あっ、アリガトウゴザイマス!!」「ありがとー♪」
正直、私は男好きする体つきなので、こういう感じになっちゃう男子も多々見てきたのだが……
欲望をコチラへ向けて、メグミ君の存在を忘れサルにならないだけ、ちゃんとしていると思う。
「スティーブ。分かっていると思うけど、サーシャは"僕の"彼女だから」
「はい。もちろん承知しております! (分かっているけど、学園のマドンナと呼ばれたサーシャ先輩をこんな至近距離で見たら、緊張するんですよ!!)」
もちろん、もうお年を召されたモンティート先輩からは、そういう感情は1ミリも感じない。
アスタリア先輩に太鼓判を押されていたとはいえ、直接会ってこのリアクションなら、今後も安心してお付き合いできる。
「本日のお食事は、メグミ君が"勝ったら食べたい"と言っていた、カレーハンバーグにしました! 美味しい和牛を贅沢に使ったので、超ジューシーですよ〜」
さすがに初対面で「焼肉食べ放題」というのは、パンチがあり過ぎるし焼く手間がかかって申し訳ないので……
とりあえず皆が大好きなカレーとハンバーグを組み合わせて、適度にお腹が膨れる料理を用意した。
ふわふわのオムレツも人数分用意してあるので、希望があればトッピング可能である。
「メグミ君。次集まる時はガッツリ焼肉にするから、後でお肉も買いたいな〜。セレクト自販機で買えるブランド肉、ちょっと在庫不足で」
「了解! 先輩は脂の少ないフィレ肉がいいだろうし、食後お腹が落ち着いたタイミングで、各々好きな肉を調達しよう!」
「分かった♪」
こういう時も、私のポジションは「何を選ぶか」が難しいのよね〜。
モンティート先輩よりワンランク落ちる肉で、メグミ君・スティーブ君より脂少なめ、上品に見える量……ってところかしら?
でも正直、私もニンニクがガツンと効いた脂っこいお肉を、メグミ君と一緒に食べたいなぁ〜。
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






