487話 振られた仕事をどう処理するか
<−−− ブゥーーン −−−>
「「こんにちわ〜。お邪魔しま〜す!」」
嫌な予感をおぼえつつ、スティーブが治める<水城のダンジョン>へ向かうと、アイツは目をピキらせながらモニターと向き合っていた。
「あぁ、先輩方……お疲れさまです。すみません。まだまだ働き足りないので、休憩は僕抜きでとっていただけると助かります」
うわぁ〜、コレ明らかに洗脳されているよね?
もしくは、怖い先輩にパワハラを通り越して調教され、人格ごと変えられた!?
ピキっている目は血走っており、肉体的な限界はとっくに超えていると、一目で分かるが……
そういう趣味嗜好に目覚めてしまったのなら、僕が多少いさめても状況は変わらないし、他人事じゃないのでダッシュで逃げないといけない。
「う〜ん。死蔵していたレアアイテムを使って、睡眠時間は確保したはずなんだけどなぁ〜。どうして、スティーブ君がイっちゃったんだろう?」
よかった、モンティート先輩も意図的にやった訳じゃないみたい。
とりあえずコイツは、ゲンコツで落として強制入眠させるとして……一体どういう手段で、こんなブラックワールドを作り出したんですか!?
「えっ? あぁ……昔、何かのミッションの優勝賞品でもらった、"睡眠を代行させられる"アイテムを、スティーブ君に貸し出したんだよ」
「…………!!」
「そのうえで、メグミ君にもらった本に載っていた"カフェインをぶち込む方法"で、意識を覚醒させてあげれば……」
なるほど、そりゃあ「意識がパキッて目がギンギンになった、ワーカホリック野郎」が爆誕しますね。
「まだ2日目だけど、体内の水分量調整とか食事も水精霊が調整できるから、その気になれば10日くらいは健康に働けると思う!」
「先輩。とりあえず、スティーブに"ごめんなさい"しましょうか。机上の空論を後輩で試すのはやめてください! まずは、敵の捕虜で試さないとダメ!!」
ゲンコツ一発で落ちたスティーブをベッドへ運ぼうとしたところ、老廃物の管理や洗濯代行も精霊がおこなっていて、一切臭わず驚いたが……
肝心の本体がカフェイン中毒でパキッているんじゃ、意味がない。
先輩自身は、元のスペックが高すぎて、同じ条件でも軽々徹夜三昧できちゃうから、勘違いしたんだろうけど……
凡人に何リットルもブラックコーヒーを与えたところで、生まれるのは胃荒れと眼光のギラつきだけなので、自重していただかないと!
予想外のカタチで時間をとられたが、横になり精霊達に癒してもらったスティーブは、数時間である程度回復したので……
彼も正装に着替えさせて、3人で<恵のダンジョン>へ向かった。
スティーブの認識では、「どれだけ仕事をしても疲れないボーナスタイム」だったらしいけど、疲れはしっかり溜まっているから!
認識できないだけで、裏で積もりに積もって最後に爆発するだけなんで、過労チャレンジは程々にしてほしい。
<−−− ブゥーーン −−−>
「あっ。メグミ君、お帰りなさい! 今日も<恵のダンジョン>は穏やかだから、基礎管理だけで済ませたよ〜」
「サーシャ、いつもありがとう。しばらく全任せしちゃったから、明日にでも本格的にメスを入れるよ。ダンジョンポイントも貯まっているしね」
「うん! ところで、後ろにいるのがモンティート先輩とスティーブ君? 初めまして。<集金箱のダンジョン>を治める魔王、サーシャです!」
自分のダンジョンの管理に加えて、僕の魔王業務代行やモンスターへの指示だし等、実はスティーブより多くの仕事を抱えているサーシャだが……
彼女は<ゴーレムマスター>のギフト持ちで、常日頃からギフトを鍛えているから、配下のオートマタがすこぶる優秀で仕事を振ると全部やってくれる。
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〜ゴーレムマスター〜
ゴーレムを愛し、ゴーレムと共に生きる者へ与えられるギフト。使役するゴーレムの攻撃力・防御力が2倍となる。
また日頃から側に置くことで、目をかけたゴーレムの成長速度が早くなり、自然にレベルアップする場合もある。
ゴーレムの成長率には劣るものの、側に置いたオートマタの能力も上がる。
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結果として、サーシャ自身は指示出しと状況把握が主な仕事となり、実務が少ないため仕事量の割に疲れないのだ。
一応僕も、<ゴーレムマスター>ギフトは持っているんだけど、サーシャとは練度が違うし……
そもそも、この前の救出プロジェクトでは近場に直轄のゴーレムがおらず、ギフトの出番もなかったからね。
先程までのスティーブと同じく、自分一人で全てを抱えこみ根性で働き、痛い目を見たんだよ。
もっとも……まだ記憶が飛び飛びで、経緯も又聞きしただけだから、実際には他の要因も絡んでいたのかもしれないけど。
読んでくださり、ありがとうございます!
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






