482話 メグミに届いた牙
依代である「自らの肉片」を失ったことで、霊として急速にチカラを失い、己の敗北を本能で悟ったガルガロクは……
他の能力と共に数段衰えてしまった思考で、「最後にひと花咲かせたい」と本能むき出しの方針を打ち出し、何も考えず地上へ特攻した。
その先にいるのは、方々から仕事を頼まれてブラック労働を強いられ、フラフラになっているメグミ。
ガルガロクにとって一番憎いのは、自分をこんな惨めな状態に追いやった、モンティートとメグミであり……
その一人がすぐ側にいるのだから、磁石のように吸い寄せられるのも無理はない。
「うわ、キモッ!? 何コレ……」
たとえメグミが滞在しているテントに、ナーティーと精霊達の計らいで多重結界が張られており、「穢れをもつ者」は中に入れなくなっていても……
それを認識する知能は、依代を失った段階で消え失せてしまったため、力任せに結界にぶつかって無謀すぎる攻撃をしてしまうのだ。
「ヒエッ! マジでキモイんだけど……。オークと深海魚を合体させたような顔面に、憎悪と殺意が乗った霊って……!!」
しかしガルガロクの特攻は、(精神的な意味で)メグミにダメージを与えることに成功する。
彼はキャパのほぼ全てを仕事に注いでおり、周囲の警戒は一切していなかったため、「急にオバケを見た状態」になりプチパニックを起こした。
一応「ガルガロクが悪霊になったこと」は把握していたが、生まれて初めて"ここまでブサイクな顔"を見たため、本能が恐怖と嫌悪感を呼び起こしたのだ。
「あっ、やっぱりメグミ様のところへ特攻したか。追いかけるより罠を張るほうが捕まえやすいのは、ゴキブリと一緒だね」
「うわぁ〜。もうゴブリンにすら負けそうなくらい弱体化しているのに、それすら分からずメグミ様に特攻するとか。こうはなりたくないなぁ〜」
「こら、メグミ様が驚いているでしょう。悠長に話なんかせず処分しなさい! 悪霊用の札で縛って、保管しておいたモンスターの穢れの中へ放り込めば……」
「配下だった者たちの怨みに潰されて、自然消滅しますね。これなら、魂も輪廻転生しないでしょう」
「はぁ〜、とりあえず一仕事完了! お疲れさまでした」
「「「「「「「「「「お疲れさまでした!」」」」」」」」」」
仕事に没頭している間に、ガルガロク・ホイホイにされていた事を知ったメグミは、微妙な気分になりつつも……
少し考えれば「この作戦が一番効率的」と理解できてしまうため、ため息を吐いて、腰を抜かしてしまった自分を恥じる。
「(ハァ〜。子供騙しレベルのオバケに驚いて腰を抜かすとか、情けない。幸いにも目撃したモンスター達はスルーしてくれたし、早く立ち上がらないと!)」
彼にとって、「ガルガロクを完全に滅ぼし、地中に埋まったモンスター達を救出する」目的さえ遂げられれば、手段はどうでもよく……
ガルガロク・ホイホイにされた事より、その結果腰を抜かした恥をサーシャに知られるほうが、はるかに堪えるからだ。
だが……
「あの霊、結界アタックついでに屁でもこいていったのかな? なんか臭いんだけど」
ガルガロクの最後っ屁は、予想外すぎて誰も結界で対策しておらず、そのまま素通りしてメグミの元へ届いてしまった。
「嫌だなぁ〜。先輩配下のモンスター達がテントの中に入ってきたら、僕がやったって勘違いされるじゃん! 冤罪の危機! 消臭剤、消臭剤っと……」
そのせいでメグミは、自動販売機で消臭剤を自腹購入するハメになり、財布に銅貨数枚のダメージを負った。
そして……メグミ以外は新たにダメージを負うこともなく、ガルガロクの完全消滅が確認されたため……
現場班の仕事は、「地中に埋まったモンスター達を救出すること」だけになり、作業は超特急で進んだ。
何も考えずトンネルを掘ったり穴を空けると、崩落で不安定な状態の地盤がまた崩れて、二次災害が起きてしまうので……
ナーティー配下のモンスター達は、少し掘るたびに岩で補強し、場所によってはボルトやコンクリートも使って、安全優先で働いている。
それでもメグミの自販機が、ボルトや速乾性コンクリートを無限供給してくれるため、運搬の手間がなくなり作業が前倒しで進むのだ。
工務店の商品をある程度好きに買えるセレクト自販機と、体力のある土魔法師のコラボは、土木作業で革命を起こした。
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〜セレクト自販機(Sランク)〜
以下の店で扱っている物の中から好きな商品を100点選び、ソレ等をいつでも自販機のメニューに並べることができる。
データの書き換えやリセットは、前の商品選択から1日以上経っていないと行えない。
・雑貨屋
・ドラッグストア
・工務店
・スーパー
・武器屋
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結果……
「メグミ様。被災現場と地上をつなぐトンネルが貫通しました! これより、被害にあったモンスター達を地上へ護送します!」
予想より2日以上早く作業は終わり、崩落に巻き込まれたモンスター達は、誰一人として欠けることなく救われる事となった。
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






