481話 縁の下の力持ち(過労ver.)
一部、過労で死んだ目をしている者もいるが、ダンジョン崩落に巻き込まれたモンスター達の救援活動は、順調に進んだ。
平凡な魔王がこういう事態に陥ると、漁夫の利を得ようと考えた狡い魔王が救援現場へ奇襲をかけて、さらに被害を拡大するのだが……
今回被災したのは、魔王界のトップとして長年君臨してきたモンティートの配下。
しかも序列2位のナーティーが、救援活動へ数多のモンスターを派遣しており、現場にはSSランクがゴロゴロいる状況ゆえ……
ここに飛び込んで漁夫の利を狙う、蛮勇持ちはさすがにいない。
そして<毒炎のダンジョン>跡地で唯一、メグミやモンティートの不幸を願っている、ガルガロクの霊体もまた予想外の事態に震えていた。
「クソッ! 魔王の勢力のくせに、なぜ聖魔法と浄化能力に長けた連中がこんなにいるのだ! これでは、神が遣わした勇者と変わらないではないか!」
土龍の指示によって張られた結界を壊して、彼等を地中で圧殺しようと試みたガルガロクだが、その企みはあっさりと失敗。
逆に存在を把握されてしまい、正体がバレぬよう核となっている肉片の中に逃げ込むハメに。
また、霊体になったことで上がった探知能力を駆使して、現場の様子を見てみたら、メグミとモンティートの配下同士が仲良く働いており……
自分が得られなかった「打算抜きの人間関係」を、彼等が持っていることに気づいて、さらに凹む。
そのうえメグミの接近を察知して取り憑こうと思ったのも束の間、土龍が遣わした浄化部隊に居場所を察知され、(自分が逃げる側の)鬼ごっこが始まった。
「(クソッ、何故だ……どうして俺の方が逃げている!? 俺は奴等を道連れにして共に地獄へ落ちる為に、自ら肉体を捨てて破滅したんだぞ!)」
いくらガルガロクが現状を嘆いても、(派閥のボスであるが故に)彼をヨイショしてくれた、ロルカナとトキナはもうこの世にいない。
そして……追いかけっこをしているうちに、本体である「生前の肉片」も探し当てられ、それを燃やされたガルガロクは……
正真正銘、「帰る場所のない幽霊」になってしまった。
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〜土龍side〜
「土龍様。怨霊の行動範囲から"核がある"ことが予想できたので、割り出して手当たり次第に燃やした結果、"当たり"を引けました」
「そうか。核アリの怨霊から核を奪えば、其奴は依代を失って急激に弱体化し、やがて溶けて消えてしまう。ガルガロクの怨霊も、惨めな末路をたどるだろう」
「そうですね。こちらも追いかけっこの途中で精霊を数十体穢されたので、無傷とはいきませんでしたが……あの子達は、保養所で休めばまた元気になる」
「そうじゃな。幸いなことに空気孔は地上とつながった訳じゃし、弱った精霊はナーティー様に保護を求めて、主様のダンジョンへ引き返してもらおう」
まさか実体を失ってまで、強者からは逃げ弱者のみ撃つカタチで報復する、卑怯者ムーブをとるとは!
報告にきた部下には「溶けて消える」と言ったが、実際のところ、ガルガロクのせいで不本意な最期を迎えた、彼奴配下のモンスター達の怨念に捕まり……
弱ったところを喰われて、魂ごと消え去る確率の方が高いじゃろう。
「(地上部と結界内の穢れは祓えたが、奴が潜んでいた奥地の浄化はまだじゃからな。亡きモンスター共。儂は邪魔せんゆえ、好きに暴れるがよい)」
こういう現場を見るたび、主人を選べぬモンスターの悲哀を感じると共に、我等を慈しんでくださる主様の素晴らしさを再確認できる。
ガルガロクはともかく……ここで散ったモンスターの怨念まで貶める気などないし、彼等には自分のチカラで落とし前をつけてもらいたい。
「土龍様。地上にいるメグミ様より、酸素ボンベの差し入れが届きました。代わりに、使い切ったボンベを送り返しております」
「うむ。空気孔が繋がったとはいえ、地上と距離がありすぎて換気など碌にできぬからのぉ。メグミ殿に、"あと2〜3日はよろしく頼む"と伝えよ」
「かしこまりました」
酸素もそうじゃが、簡易トイレを送ってくれたのがありがたい。
ダンジョン探索ゆえ、排泄物は「ダンジョンが勝手に回収するもの」と考えており、処理用の道具など一つも持ってこなかったからのぉ。
崩落と酸素の問題が片付き、一息つけると思ったところで、モンスター達が催して悪臭地獄に陥ったときは、心底ガルガロクを恨んだ。
幸いなことにウチには土魔法の使い手が多いゆえ、排泄物を魔法で無理やり腐葉土に変えることで、急場は凌げたが……
もしメグミ殿が、ペット用トイレや水不使用のトイレを、空気孔から差し入れてくれなければ、悪臭が原因で味方のモチベーションが削がれたかもしれない。
読んでくださり、ありがとうございます!
この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)
モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!
作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






